虎太郎とゴクアーク


『元気爆発ガンバルガー』では、人間界を大魔界に変えることを目的とするヤミノリウスと、それを阻止せんとするガンバーチームの戦いが、ほぼ毎回描かれています。
そうした戦いの中には、当然のように比較対象があり、孤軍奮闘するヤミノリウスと、チームワークで立ち向かっていくガンバーチームという図式が、最も分かりやすいかと思います。
そこで、本題となるのが、ガンバーチームのイエローガンバーこと霧隠虎太郎と、大魔界の暗黒魔王ゴクアークの比較です。
この両者のどこが似ていて、どこが違うのか、以下に記していきたいと思います。



ガンバーチームの「ヒーローとしてのリーダー」はレッドガンバーの力哉かもしれませんが、「牽引車となるムードメーカー」は、イエローガンバーの虎太郎で間違いないでしょう。

ムードメーカーとしてガンバーチームの中心にいる虎太郎と、大魔界の支配者であるゴクアーク。この両者には、ある共通点が存在します。
それは、「他者を顧みない」という点です。
虎太郎は悪戯好きで、自分が楽しければそれでいいという面がありますし、ゴクアークは人間界を支配したいという野望を抱いており、その結果、人間がどうなっても構いません。

一方で、こうした共通点を持っている両者が決定的に違うのは、周囲の者への接し方と言えます。
虎太郎は周囲の人間、特に同じガンバーチームの力哉や鷹介に迷惑をかけることは多いものの、大切な「友達」や「仲間」として接しています。
それに対して、ゴクアークは、忠臣のヤミノリウスはおろか、同志であるサイアークやレツアークのことも「使える道具」程度にしか見ていない部分があります。

第46話で三大魔王が揃いながらも敗れた後、ゴクアークは巨大な左手の姿に変貌しますが、この時にサイアーク、レツアークの意志は見られません。
ということは、ゴクアークは自分が生き延びるために、他の二大魔王を、自らのエネルギーとして吸収したと考えられます。

また、最初の本格的な復活時(第21話)まで、ゴクアークはヤミノリウスに対して、細やかなサポートを行っていましたが、それには「あの時点で使える駒がヤミノリウスしかいなかった」という、ゴクアーク側の事情があります。
三大魔王が揃った際に、ゴクアークは、自分が一度は復活しながらも敗北した責任を問う形で、ヤミノリウスを処断しますが、そこには「より使える二大魔王という道具を得た」ということも、理由としてあったのではないでしょうか。



以上のような「他者への接し方」が、共通点を持つ虎太郎とゴクアークの大きな相違点であると、個人的には思うのです。

コメディ色の強い『ガンバルガー』ですが、ゴクアークが自分勝手な支配者であることで、虎太郎を含めたガンバーチームの「ヒーロー」としての正当性が揺るがないものとなっています。
その結果、「友情」対「独善」の図式が出来上がり、これが「ヒーローもの」としての側面を持つ『ガンバルガー』という作品の完成度を高めていることは間違いありません。

ここでは、「主人公側と敵役側の中心人物の比較」を取り上げましたが、『ガンバルガー』は着眼点次第で、まだまだ楽しめるポテンシャルを秘めている作品だと思う次第です。


「作品研究」トップへ戻る

「Eldran Series Data Base」へ戻る