第7話「電撃ザウラージェット」


概要

ギーグの能力は、「故障した機械を機械化獣に改造する」というものである。しかし故障した機械に機械化獣の素材が限定されてしまうという欠点は、前回指摘した通りだ。
そもそも、地球の機械は人間が使うものであり、いずれ故障する時を迎えるものでもある。だからこそギーグは、街中で機械化獣の素材を探索している訳だが、人間が日頃利用する機械は、基本的にその生活を便利にするために造られたものでしかない。故に、街中で発見される機械は、機械化獣の素材としては物足りない部分があるのかもしれないが、しかしその種類が豊富なことを考えれば、ギーグの素材探しのやり方は、決して間違ってばかりでもないと言えよう。
さて、この度、ギーグが機械化獣の素材としたのは、故障したため、海岸で立ち往生していたヘリコプター。人間が日常生活で利用する機械は多種多様だが、今回のヘリコプターを改造して誕生させた機械化獣ヘルジャイガーは、バスを改造した機械化獣バッドバーストに続く、乗り物が素材の機械化獣である。乗り物は、人間が普段利用する機械の中でも特殊性が強いため、それを素材とした機械化獣には高い能力が期待される。
バッドバーストの時は戦略上のミスで敗れたが、今回のヘルジャイガーでは打倒ゴウザウラーを成し遂げたいところである。

実行

ヘルジャイガーは行動を開始すると、ヘリコプター素材の「プロペラで空を飛ぶ」という特性を最大限に活かし、ギーグの指揮のもと、強化前ながら街を順調に破壊する成果を上げていた。
ヘルジャイガーを一目見た歯車王も、この空中飛行能力に魅力を感じ、巨大改造によるパワーアップを完了させると、まずは最優先事項の地球の機械化を果たさんとする。
が、そこにザウラージェットが飛来してきたため、戦闘態勢に入ったヘルジャイガーは、腕のプロペラを投擲して先制攻撃を仕掛けると、分離したザウラーロボ3体の攻撃をものともせず、逆に一方的に攻撃を加えていく。
そして、ついにはゴウザウラーとの戦闘に突入。街に被害を及ぼさないように、ヘルジャイガーの得手戦法である空中戦をゴウザウラーが挑んできたこともあり、ヘルジャイガーはそのスピードとパワーでゴウザウラーを圧倒。
その上、ヘルジャイガーは、ゴウザウラーの武器の中でも攻撃力が上位にあるザウラーボンバーを、腕のプロペラを回転させることで、完全にガードして打ち破るのだった。
優勢を誇る歯車王は、ヘルジャイガーの腕のプロペラを飛ばすと、それをもってゴウザウラーを攻撃しつつ翻弄。同時に、近接戦闘でもゴウザウラーを攻め立てるヘルジャイガーは、飛ばしたプロペラが腕に戻ってくるや、その回転が生み出す威力を上乗せしたパンチをゴウザウラーに叩き込む。
その後も、高速飛行の体当たり攻撃を間断なく行うなどして、ヘルジャイガーは、かつてないほどのダメージをゴウザウラーに与えていった。
機械化獣の強力な攻撃を一方的に受け続け、司令室に電撃が走ったことから、パニックに陥るザウラーズ。
更に、ザウラーズのブレーンである教授でさえも、ゴウザウラーとヘルジャイガーの性能差を前にしては、有効な打開策を見出すことができなかった。
やがて、ダメージの蓄積から、ゴウザウラーの内部には警報アラームの音が鳴り出す。
しかし、そんな中にあっても、ひとり冷静に状況判断をしていた五郎は、パニックに陥っている仲間を一喝して、その正気を取り戻させると、同時に叱咤激励する。
そして五郎は、自らが打ち出した「マッハ6の機械化獣を上回る、マッハ7のザウラージェットに変形して戦えば勝ち目はある」という対抗策を皆に伝え、そのアイディアに乗ったザウラーズは、ゴウザウラーをザウラージェットに変形させると、ヘルジャイガーに対して本格的な空中戦を挑んでいくのだった。
ゴウザウラーがザウラージェットに変形しようとも、自分の優位は崩れない。
そう信じる歯車王は、ザウラージェットに対しても、ヘルジャイガー腕部のプロペラを飛ばして攻撃するが、それをジェットキャノンで簡単に破られる。
それどころか、高速飛行から繰り出すパンチもザウラージェットには全く当てることができず、全攻撃能力を回避されたヘルジャイガーは、ザウラージェットに距離を取られると、その必殺技・ザウラージェットアタックの発動を許してしまう。
猛スピードで突撃してくる敵に対し、腕のプロペラによるカウンターパンチを繰り出すことで応戦するヘルジャイガー。
だが、ザウラージェットアタックの威力は凄まじく、腕のプロペラはおろか、そのボディまでも破壊されてしまったヘルジャイガーは、空中で機能停止後に大爆発を遂げる。
斯くして、ヘルジャイガーを倒された歯車王は、またも黒星を重ねてしまったのだった。

分析

ゴウザウラーに6連敗を喫していた歯車王だったが、それまでの敗戦は、戦闘能力がゴウザウラーより劣っている機械化獣が多かったことも一因ではあった。それだけに、ギーグの機械化獣製作の条件から、基本性能でゴウザウラーを上回る機械化獣ヘルジャイガーを手に入れられたことは、奇跡的なことだったと言っても決して過言ではないだろう。
加えて、ヘルジャイガーがその能力を十分に発揮できる空中戦を展開できたことと、策を弄さない真っ向勝負でゴウザウラーを圧倒した事実から、今回のヘルジャイガーを活用しての敗北が、単なる一敗ではないことが分かる。
"太陽系機械化計画"の実行責任者である歯車王は、地球攻略を開始して以来、ゴウザウラーによって敗北という辛酸を何度も嘗めさせられてきた。そのため、今回のヘルジャイガーというゴウザウラーを凌駕する機械化獣を得られたことは、歯車王にとっては、これまでの鬱憤を晴らすまたとない機会であったハズで、その戦闘能力に酔い痴れてしまっても無理はない。しかし、その個人的な復讐心が敗北に繋がったとなれば、歯車王の指揮官としての判断能力には疑問を抱かざるを得なくなる。
何と言っても、ザウラーズのブレーンである教授でさえ、機体の性能の差はどうにもならないと白旗を揚げていたのである。そんな窮地のザウラーズを勝利に導いたのは、ヘルジャイガーにザウラージェットでなら対抗できるという判断を下せた五郎の冷静さであった。
ピンチに陥りながらも冷静だった五郎と、優位に立ったことで冷静さを欠いた歯車王。的確な判断をすることが出来た方が勝利を掴んだ今回は、指揮官は如何なる時も、常に冷静でなければならないということを、勝敗という結果で教えてくれている。
更に、性能的にゴウザウラーを上回る能力を備えた機械化獣であっても敗れる可能性があること、絶対の勝利は約束されないことも同時に知ることができる此度の戦いは、歯車王の地球攻略指揮官としてのターニングポイントでもあったことが、この後の歯車王の戦績を見ても分かろう。

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