第8話「炎の海を乗り越えろ!」


概要

前戦でゴウザウラーの性能を上回る機械化獣ヘルジャイガーを入手できたにもかかわらず、敗北を喫してしまったことは確かに痛かった。しかし如何なる機械化獣を従えても、その機械化獣の能力を最大限活かせる作戦を展開することが大事なのであり、その判断を指揮官の歯車王が、瞬時に下せるか否かが、地球攻略の重要なファクターの1つだと分かっただけでも、前回の敗戦には意味がある。
今回、ギーグは新たな機械化獣の素材を春風デパートの電気製品売り場に求めた。デパートの電気製品売り場には新品の機械しか置いていないため、本来なら徒労に終わるところだったが、幸運にもこのデパートで3日前に購入したばかりのアイロンが故障したと、客の1人が該当のアイロンを持ってクレームを付けに来ていた。
ギーグは、このアイロンをすぐさま機械化獣ブラッドアイアンに改造。ブラッドアイアンは高速で走行し店外へと出ていくと同時に、店内の走行跡を炎上させてデパート内に火事を引き起こした。
更に都合よく、このデパートには春風小学校6年3組担任の、弥生先生が買い物に来ており、その弥生先生に対して恋心を抱いたザウラーズのメンバー・洋二も同じく店内にいたのだ。
この機械化帝国側にとって好条件が揃う中、今回の作戦はスタートした。

実行

春風デパートから街へと飛び出したブラッドアイアンは、走行跡を機械化する能力をもって、地球の機械化を順調に行っていた。そんなブラッドアイアンを指揮するギーグのもとへと、月の機械化城から歯車王が飛来。今日こそ地球の機械化を果たすと、強い決意を露にする歯車王だったが、デパート内にいた洋二の連絡を受けたザウラージェットが、機械化活動の妨害にやってきたため、歯車王はブラッドアイアンに巨大改造を施しパワーアップさせる。
ブラッドアイアンは、ザウラージェットから分離したザウラーメカのうち、ランドステゴ・サンダーブラキオの2体と対戦。シールドを併用した高い防御力とアイロン型ミサイルで優勢な戦闘を展開していたが、そこに春風デパートまで洋二を迎えに行っていたマッハプテラが合流すると、ブラッドアイアンに対抗するべく、3体のザウラーメカはゴウザウラーへと合体する。
そんなゴウザウラーを前にしても、なお自信に溢れる歯車王は、ブラッドアイアンのパワーを活かした突進攻撃でゴウザウラーに対抗。更にブラッドアイアンの頑丈なボディはゴウザウラーのザウラーキャノンすら受け付けなかったため、その優位は揺るがない状態が続いていた。
ところが、劣勢のゴウザウラーは突如戦闘を放棄すると、ブラッドアイアンが引き起こした火事で炎上する春風デパートへと向かう。店内に弥生先生が逃げ遅れて取り残されていることを、ザウラーズの洋二が訴え、その救出を優先させたためであった。
炎に包まれる店内に、洋二が弥生先生の救出に向かう間、身動きが取れないゴウザウラーに対し、ブラッドアイアンは光線を放ち、確実にダメージを与えていく。そしてゴウザウラーにとどめを刺さんと突進攻撃を行うが、寸前に弥生先生の救出を成功させたゴウザウラーはその攻撃を空中に回避する。
そこで、空中のゴウザウラーに向けて四つ首からの光線を見舞うブラッドアイアンだったが、それをザウラーシールドで防がれてしまうと、逆にシールドビームによって光線を放つ四つ首を全て潰されるという痛手を被ってしまう。
追い打ちをかけるように、ザウラーボンバーを打ち込まれたブラッドアイアンは、間髪いれずに発動したザウラーマグマフィニッシュによって破壊され、歯車王とギーグは機械化城まで遁走するのだった。

分析

今回の作戦発動時、ブラッドアイアンの誕生地点にはザウラーズの洋二がいたため、その連絡によってザウラーズが出動してきたが、これまでのデータからいって、遅かれ早かれゴウザウラーが妨害行動に出てくることは間違いなかった。しかし、ザウラーズのメンバー全員が揃わなければ、真価を発揮できないゴウザウラーにとって、洋二の不在は戦力ダウンに繋がる訳で、その点からすれば、洋二がデパート内にいたこと自体は、今回の作戦における問題点とは言えない。では、何が問題だったかと言えば、歯車王のブラッドアイアンの運用方法が、少々間違った方向に向いてしまった点である。
機械化帝国の地球攻略における最重要事項は、「地球の機械化」である。これを成し遂げるためには、邪魔者のゴウザウラーを倒さねばならないというのが歯車王の考えであるのだが、例えゴウザウラーの打倒が果たせずとも、地球を少しずつでも機械化した方が、目的達成には効率的ではなかったかと、思われてならないのだ。
今回の作戦では、防御力と機動力に長けた機械化獣ブラッドアイアンを使用した訳だが、巨大改造した時点で、その機械化獣の能力を歯車王は全て把握し、ブラッドアイアンの長所も短所も全てが分かっていた筈で、ゴウザウラーを倒せるかどうかも、判断が可能だったと思われる。加えて、ゴウザウラーが弥生先生の救助のためとは言え、戦闘を一時的にではあるが放棄したのだから、この時点のブラッドアイアンは2つの行動パターンを選択することができたのである。
選択できた行動パターンのうち、Aパターンはゴウザウラーがブラッドアイアンの相手をしない間、少しでも地球の機械化を推進させておくこと。そしてBパターンは、弥生先生救助のため、身動きがとれないゴウザウラーに攻撃を加え、破壊してしまうことである。
歯車王が選んだのは、このうちのBパターンだった訳だが、機械化帝国の本来の目的を考えれば、Aパターンの方こそ選択して然るべきではなかったか。この時期なら防衛隊も、後に機械化帝国の脅威となる物質復元装置の開発には至っておらず、機械化に対する有効な手立てを地球人は持ってはいなかったのだから、尚更である。
いつしか地球の機械化にはゴウザウラーの打倒が必要という固定概念を抱くようになってしまった歯車王のこうした作戦展開上のミスの積み重ねが、この後の失脚に繋がってしまったのは残念の一言である。しかしながら、そんな部下に対して冷静なアドバイスを全く送らなかった機械神の姿勢にも、当分析データでは疑問を投げかけるものとする。

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