放課後の春風小学校体育館。この日はここでザウラーズの拳一、チョビ、ボンの3人が、サッカーボールとバスケットボールのゴールを使用した「バスケットサッカー」に興じていた。 最初は拳一とチョビによる1対1の勝負だったが、サッカーが得意なチョビはあっさりと先制点を決めるや、拳一とボンの2人をまとめて相手にしようかと挑発めいた発言をする。 果たして、この言葉に乗った拳一とボンが、タッグでチョビにかかるというふうにプレーはエスカレート。その結果、体育館に飾られている「真実一路」と書かれた掛け軸が破損してしまう。 校長先生が大切にしている掛け軸だけに、何とか修理して元通りにせんと考えた3人は、ボンの家で修復作業を行うことを決めると、人目を避けて掛け軸を運び出すのだった。 その頃、月の機械化城には、自分が敗れ続けるゴウザウラーには何故あれほどの力があるのか、疑問を抱く歯車王の姿があった。 そんな歯車王の前に三たび姿を現した機械神は、なかなか進展を見せない地球の機械化の催促と、それが完了できない場合の歯車王の処刑を言い残して姿を消した。 そして次の日の朝。ザウラーズ側は拳一が寝坊したため、朝礼が行われていた体育館に修理した掛け軸を戻せず、とりあえず掛け軸を6年2組の教室に隠す処置を取り、機械化帝国側は地球に派遣されていたギーグが、故障した電動ヒゲ剃りから機械化獣シャドーシェーバーを造り出し、町で暴れさせていた。 こうして、メインパイロットの拳一、レーダー担当のチョビ、右動力室担当のボンが問題を抱えた状態で機械化獣と戦うという、機械化帝国側にとって思わぬ好機の中、今回の地球攻略作戦は実行された。 |
町で破壊活動を行うシャドーシェーバーに、まずは防衛隊の戦車が攻撃をしかけてくるが、これを腕のカミソリで簡単に切断したシャドーシェーバーは、そのまま破壊行為を続行せんとしていた。 しかし、そんなシャドーシェーバーの前に、防衛隊から連絡を受けたザウラーズがザウラージェットで急行。 当然、ギーグはこの展開を良く思わなかったが、そこに必勝を期する歯車王が月から飛来。巨大改造を行ってシャドーシェーバーをパワーアップさせるや、地球を機械化するのだった。 このシャドーシェーバーを、ザウラージェットから分離した3体のザウラーロボが攻撃するが、大したダメージを与えられなかったため、敵はゴウザウラーに合体して攻撃力を高める戦法を選択。 これに対しシャドーシェーバーは、自らが機械化した建物を、ボディに備える回転刃で削ることで周囲に鉄粉を散き、相手の視界を奪うと同時にレーダー網をも麻痺させる。 斯くして、完全にその姿を消すことに成功したシャドーシェーバーは、ギーグの助力でゴウザウラーの位置を知り、遠方からミサイルを撃ち込む攻撃を展開していったのだった。 こうした事態にザウラーズの教授は、熱源反応でシャドーシェーバーの位置を特定する方法を提案。これによって、シャドーシェーバーが攻撃を仕掛けてくる方向は、ザウラーズに知られることとなってしまう。 ほどなくして、強力なパンチを繰り出した腕をゴウザウラーに掴まれ、捕捉されてしまうシャドーシェーバー。 だが、メインパイロットの拳一が、6年2組の教室が変化した司令室にある掛け軸を気にした隙に、シャドーシェーバーはゴウザウラーを払い除け、危機を脱することに成功したのだった。 その後も拳一は、ゴウザウラーが動き回ることによって掛け軸が壊れてしまうことを危惧。 結果としてゴウザウラーは、シャドーシェーバーのミサイル攻撃をザウラーシールドでガードするという防戦一方となってしまう。 こうした中、やはり掛け軸が気になるレーダー担当のチョビ、動力担当のボンも持ち場を離れたため、ゴウザウラーの戦力は著しく低下。 更に、メインパイロットの拳一も司令室に様子を見に行ったため、サブパイロットのしのぶやひろみが一時的に代行操縦する形をとっていたゴウザウラーは、シャドーシェーバーが発射するミサイルの的も同然だった。 しかし、こうしたシャドーシェーバーの度重なる攻撃が、今回のザウラーズにとって最大の問題だった掛け軸を修復不能としてしまう。 この事態に拳一、チョビ、ボンの3人は、機械化獣を倒し、一刻も早く校長先生に謝ることを決意。 こうして、「悪戯トリオ」3人の迷いが吹っ切れた結果、シャドーシェーバーはチョビの正確な熱源探知で居場所を読まれ、ゴウザウラーに連続パンチを浴びせられた挙句、ボンの機転で右腕にパワーを集めたフルパワーパンチを顔面に叩き込まれてしまう。 強力なダメージを被ったシャドーシェーバーは、ゴウザウラー必殺のザウラーマグマフィニッシュで爆散し、またもや歯車王は一敗地にまみれてしまうのだった。 |
歯車王がシャドーシェーバーに巨大改造を施して、最初に行った地球の機械化。それを利用した鉄粉散布戦法自体は、ゴウザウラーのレーダー網を麻痺させていることから、一定の効果があったと評価することができるだろう。 この戦法によってザウラーズは、熱源反応でシャドーシェーバーが攻撃してくる方向を読むしか手立てがなくなってしまったのだから。 加えて、今回のザウラーズ内部では、メインパイロットの拳一、レーダー担当のチョビ、右動力室担当のボンの3人が、司令室にある掛け軸を気にするあまり、自分の仕事を一時的に放棄する形となっていた。 あまつさえ、そんな彼ら3人の行動は、他のザウラーズメンバーの仕事の邪魔や、負担の増加にも繋がっていたのだ。 言わばゴウザウラーは、戦闘力が全体的にダウンしていた訳で、歯車王が何もせずとも、ゴウザウラーは勝手に弱体化していたのである。 だが、これだけ有利な状況を得ていた歯車王にとっての最大の不運は、自分の知らないうちにゴウザウラーの弱体化が始まり、終わっていたことであろう。 シャドーシェーバーは、絶大なパンチ力を最大の武器とした、近接戦闘型の機械化獣である。もし歯車王が、ゴウザウラー弱体化の事実を知っていたなら、その間に積極的な接近戦を挑んでいっただろうし、ゴウザウラーの戦闘力が回復したことが分かっていれば、不用意に接近するようなことはしなかったハズである。 しかしながら、ゴウザウラーのレーダー網を麻痺させるなど、その視覚面に強く意識が向いていた歯車王が、熱源反応の可能性まで考えていなかった点については、甚だ疑問が残る。 これに関しては推測になるが、以前、機械化獣ラジオデンジャーの妨害電波発生装置が、ザウラーズの通信網を麻痺させて、各ロボットの連携を乱すのに絶大な効果を発揮したという成功体験が、その背景にあったのではないだろうか。 だが、もし仮にそうであったとしても、やはり熱源反応にまで考えが及ばなかったというのは、歯車王のミス以外の何物でもなかったと言えよう。 そして、こうした「ミス」に絡めて注目しておきたいのは、歯車王の「守り」に対する意識の変化である。 ヘルジャイガーやブラッドアイアンの時は、ゴウザウラーの攻撃をガードしていた歯車王が、機械神からの二度目の言葉を受けて以降は、サタンドリラーの一撃離脱戦法、バイクレイザーの駿足力による攻撃回避、シャドーシェーバーの鉄粉散布による隠れ蓑と、明らかに「防御」よりも「回避」の方に重きを置くようになっているのだ。 この傾向は、次なる機械化獣ゴーストビジョンの分身攻撃にも見ることができるが、この辺りを憶測すると、機械神から"太陽系機械化計画"遅滞の責任を問われた歯車王の焦りが、機械化獣の能力にも「逃げ」の形で表れているのだと思われる。 ポイントは、以上にあげた歯車王の「ミス」と「守りに対する意識」が、ともに機械神が姿を現したことと無関係ではない点である。 機械神は「結果が全て」という考えの持ち主である。そのため、地球攻略を開始して以来、結果を出せていない歯車王にとって、機械神が頻繁に姿を現すことは、過度なプレッシャー以外の何物でもなかったハズだ。 そのプレッシャーが、歯車王に気合いを入れ直させていたことは間違いないが、同時に焦りを生じさせていたこともほぼ間違いなく、こうした「気合い」や「焦り」は、場合によっては冷静さを奪ってしまうものでもある。 だからこそ、歯車王が自分の価値を示さんと思えば思うほど「ミス」が生まれたし、歯車王本人も気付かないうちに、戦いの中に「逃げ」の姿勢が出てしまっていたのだと考えられる。 このように、歯車王の戦闘内容や機械化獣の能力をつぶさに見てみると、ゴウザウラーに連戦連敗している歯車王が、機械化帝国という組織の中で徐々に追い詰められ、その流れで、負のスパイラルに陥ってしまっていることが窺える。 しかし、そんな悪循環の渦中にいる歯車王は今回、非常に重要な発言をしている。それは、歯車王が月の機械化城で放った「何故ゴウザウラーにあれほどの力が」という疑問の一言である。 ゴウザウラーの力は、それを操縦するザウラーズの心が生み出す力なのだが、心は機械化帝国では禁断の力として扱われてきたものであるため、当然、歯車王にとっても未知の力であったハズだ。 ゴウザウラーが持っている、機械化帝国構成員にとっての未知なる力。その力の存在には、二代目指揮官の電気王が死の間際に気付き、三代目指揮官のエンジン王が解答に辿り着くことになるのだが、しかしその力の秘密を知ることは、機械化帝国にとっての最大のタブーを破ることに他ならない。 それだけに、ゴウザウラーの強さに疑問を抱きながらも、機械化帝国の掟を遵守した歯車王が、その強さの秘密を理解した上で勝利を掴むことは、残念ながら難しかったと言わざるを得ない実情が察せられよう。 以上、今回の戦闘データも考慮に入れながら、歯車王を中心に、この時期の機械化帝国を俯瞰してみた。 こうしてみると、歯車王が指揮官を務めていた頃の機械化帝国は、機械神の存在が歯車王の戦闘内容に影響を与え、その勝敗結果をも左右していたことが、「機械化帝国の現実」として顕在化する。 これはつまり、この時期が一番、機械神の意向を現場に反映させやすかったことを意味しており、仮に機械神自らが歯車王に指示を出して、少しずつでも地球の機械化を推進させていたら、機械化帝国の目的は達成できていたかもしれない。 侵攻を開始した時が、組織に最も勢いのある時だというのは、間違いのない事実だし、機械神の指示通りに動いた歯車王が失策したとしても、機械神が責任を問われることなど、絶対にあり得なかったのだから。 「鉄は熱いうちに打て」。これが勝利の鍵だったと言えよう。 |