第16話「壮絶!歯車王の最期!!」


概要

機械神から与えられた「最後のチャンス」を活かすことができなかった歯車王は、処刑を免れられぬ身となってしまった。しかし歯車王は、自分を王位から落としたゴウザウラーを最低でも道連れにしようと、命を懸けた最終決戦を行うことを決意する。
そのため歯車王は、まず自分の体から機械の心臓を取り出し、本体と心臓を分けることによって不死身を獲得。更には、自分の機械の心臓を機械化城の動力部に埋め込むと、これを隕石にカムフラージュして地球に落下させた。
この隕石は、強力なエネルギーを放射するため、地球人が近付けないようになっており、この仕組みが歯車王の機械の心臓の安全を約束する。
また、機械化城の動力部に機械の心臓を埋め込んだ歯車王は、自らのエネルギー量を遥かに増幅。これによって歯車王は、従来では不可能だった、複数の機械化獣の能力を持つことが可能となった。
しかし、多数の機械化獣を新たに造り出すような、時間的な余裕はない。そこで歯車王は、過去にゴウザウラーに倒された機械化獣の残骸と合体することで、自らが地球で率いた14体の機械化獣の能力を全て獲得する方法を採択する。
そして、自分自身が街で暴れることで、ゴウザウラーの誘き出しを図り、ゴウザウラーが出現するか、もしくは3体のザウラーロボが全て揃ったタイミングで、複数の機械化獣の能力を備えた不死身の決戦形態・キングギアへと変貌し、自らの手で打倒ゴウザウラーの宿願を果たそうというのが、歯車王が最後に選択した行動である。
一方、機械人の従者ギーグも、歯車王の姿を見て自分の身の危険を悟り、歯車王には頼らずに独自の戦略でザウラーズに挑むことにする。
そして機械神は、歯車王たちをあえて泳がせながら、新たな機械王・電気王の製造という「次の準備」に取り掛かる。
こうして、機械化帝国の内部に三者三様の思惑が渦巻く中、歯車王部隊最後の攻撃は開始された。

実行

作戦をスタートさせた歯車王は、機械の心臓を隕石として地球に落下させると、ゴウザウラーの誘き出しを狙って、街で破壊活動を行っていく。
しばらくすると、ランドステゴとサンダーブラキオが、歯車王の活動地点に到着。
己の活動を妨害しにきた2体のザウラーロボを前に、「今の自分にとって地球はどうでもよい存在である」という本音と、「ゴウザウラーの所為で王の座を追われた」という怨みを語った歯車王は、ついに自ら戦闘を開始するのだった。
その頃、マッハプテラは、塾通いのために一足先に帰路についていたザウラーズメンバーの洋二を拾うべく、別行動をとっていた。
だが、洋二がマッハプテラに搭乗する隙を狙って、独自の挑戦を画策するギーグがマッハプテラの内部に忍び込むことに成功。
果たしてギーグは、パイロットの拳一を拘束すると、マッハプテラの操縦システムを乗っ取って、街に攻撃を加えていった。
ギーグの存在に気付いたザウラーズは、マッハプテラの動力を低下させて、ギーグのコントロール機能に対抗。
そして、コクピットに乱入した洋二と、パイロットの拳一の抵抗の前に、ギーグはマッハプテラから強制放逐されてしまう。
こうして、ギーグの挑戦を退けたザウラーズは、歯車王の前に3体のザウラーロボの揃い踏みを果たしたのであった。
そこで歯車王は、最終決戦を行うべく、過去にゴウザウラーに倒された機械化獣の残骸と合体し、決戦形態であるキングギアに変貌を遂げ、手始めにキラーウォッシャー、マッドシャープ、バッドバーストの必殺技でザウラーロボに先制する。
苦戦のザウラーズは、ゴウザウラーへと合体し、ザウラーボンバーとザウラーキャノンによる攻撃を仕掛けるが、無傷のキングギアはバイクレイザーの能力でゴウザウラーに逆襲。ゴウザウラーの援護にやってきた防衛隊も、アイスクラッシャーとヘルジャイガーの能力で一掃する。
そんな防衛隊の危機に、ゴウザウラーはスピンブーメランをキングギアに向けて投擲。続けてザウラーブレードで攻撃せんとするゴウザウラーに対し、キングギアはデッドビームの機能で反撃するが、先程のスピンブーメランが戻ってきて、キングギアのボディを貫通したのだった。
ここに隙を見付けたゴウザウラーは、ザウラーマグマフィニッシュを炸裂させて、見事にキングギアを破壊する。
戦いは終わった。誰もがそう思い、みんなが歓喜に沸く中、ひとり違和感を覚えるザウラーズの教授。
果たして、次の瞬間、不死身のトリックによって完全再生したキングギアは、デビルキャッチャーのクレーンでゴウザウラーをビルの瓦礫に埋め込むと、そこに機械化ミサイルを発射して、ついにゴウザウラーを文字通り金属の塊と化すことに成功した。
これに勝利を確信し、己を無能と判断した機械神に向かって、その成果を誇ったキングギアは、機械化ミサイルで地上を機械化。ゴウザウラー同様に恨み深い地球を蹂躙していくのだった。
しかし、破壊はされていなかったため、ゴウザウラーは復活。
更に、教授の分析により、キングギアの不死身の秘密が、地球に落下した隕石にあると見たゴウザウラーは、隕石落下現場まで急行してきたのであった。
そのためキングギアは、隕石の前でゴウザウラーを迎撃。
まだ生きていたゴウザウラーを流石だと称えたキングギアは、隕石の中に自分の命である機械の心臓が埋め込んであるという秘密を明かし、それが破壊されれば不死身ではなくなってしまうことも認めるのだった。
斯くして、小細工不要の勝負を決意したキングギアは、ギア・アックスを手に握ると、ゴウザウラーとの隕石を巡る攻防戦を開始。
キングギアは、剣戟でもゴウザウラーに対して優勢となるが、しかしゴウザウラーの分離・合体機能を活用する、ザウラーズの知恵を絞った戦法により、キングギアは機械の心臓を内包した隕石を両断されて不死身ではなくなってしまうと、直後に発動したザウラーマグマフィニッシュによって、炎を上げながら大爆発した。
それでも、ゴウザウラーを道連れにせんと執念のキングギアは、爆炎の中から半壊した姿を現し、なおもゴウザウラーに迫ろうとする。
ところが、そんなキングギアは、戦場を包んだ突然の電撃により、地上から完全に消滅してしまった。
急変した事態が飲み込めず、困惑するザウラーズ。そんな彼らの操縦するゴウザウラーの眼前には、キングギアを消滅させた張本人である、新たな機械王・電気王の姿があった。
電気王は、自分が歯車王に代わって地球を機械化することを宣言。挨拶代わりの電撃をゴウザウラーに放つと、高笑いと共に月の機械化城へと引き上げていった。
こうして、歯車王の指揮による地球攻略は終焉を迎え、機械化帝国は、電気王を指揮官に据えた、新たな攻勢を開始するのだった。

分析

「見たか機械神よ!」。これは、キングギアと化し、機械化ミサイルでゴウザウラーを倒したと思った、歯車王の歓喜の叫びである。
歯車王は、ゴウザウラーのことを一度たりとも機械神には報告していなかった。にもかかわらず、ゴウザウラーを倒したことを機械神に向けて誇ったということは、いかにゴウザウラーの打倒が、歯車王にとっての「全て」になっていたかがよく分かる。
歯車王は、ゴウザウラーとの決戦に際して、不死身の決戦形態・キングギアへと変貌した。
しかし、このキングギア、どこまで「不死身」であったのだろうか。
機械の心臓が破壊されるようなことがあれば、不死身ではなくなることが、ゴウザウラーとの決戦時に明らかとなっている。
つまり、キングギアの不死身には、「機械の心臓が無事」という前提条件が存在しているのである。
そしてもし、機械の心臓が無事=不死身であるとしたら、その扱い方次第で、機械神からの処刑すらも回避できそうに思えるが、しかし歯車王は、ゴウザウラーとの決戦には命懸けで臨んでいる。
ということは、たとえ機械の心臓が無事だったとしても、キングギアは不死身ではなかったということだ。
思えば歯車王は、決戦を急いでいるようなところがあった。人間が操縦するゴウザウラーを相手に、仮に持久戦に持ち込んでいたら、勝てていたかもしれないのにである。
恐らく歯車王には、「機械神から処刑される前に」ということ以外にも、スピード決着をせねばならない理由が存在していたのだろう。
それではここで、その答えを探るべく、今回の歯車王の言動に注目してみることにしよう。
歯車王は、ゴウザウラーを倒すために、自らの体内から機械の心臓を取り出し、それを機械化城の動力部と一体化させることによって、キングギアになるためのエネルギーを獲得した。
このとき、歯車王は、命など惜しくはないという旨の発言をしているが、しかしトリックさえ見破られなければ、キングギアは不死身を装えたハズだ。
よって、この発言が、ゴウザウラーとの勝負に負けることを想定した発言だとは考え難く、もっと根本的に、自分の命にかかわる「何か」があったと見るべきだろう。
そして、その「何か」とは、「歯車王がキングギア形態を得た代償として、機械化城の動力部と一体化させた己の機械の心臓に、大きな負担がかかること」だったのではないだろうか。
機械化城の動力部から絶えず供給される、莫大な量のエネルギー。キングギアとしての活動を支える機械の心臓が、そのエネルギーに持ちこたえられている間に、歯車王はゴウザウラーを倒さなければならなかった。
だからこそ歯車王は、ゴウザウラーとの勝負に「迅速さ」を求めたのであり、自ずとその戦い方も、急戦にならざるを得なかったのだろう。
不死身のキングギアという「偽り」の中に、歯車王がスピード決着を望んだ「真実」が隠されていたという訳だ。
不死身ということがブラフなら、機械の心臓を破壊されなければ不死身ということもブラフ。
そんなブラフを重ねた歯車王が唯一かけられなかったブラフが、ゴウザウラーの内部にギーグが潜んでいるというブラフだ。
ギーグは歯車王とは別行動をとっており、それが幸いしてマッハプテラへの侵入に成功した。
この後、ギーグは、マッハプテラを乗っ取り、独自の挑戦を図るも失敗した訳だが、ギーグが姿を現すならば、ゴウザウラーへの合体後だっただろう。
別にギーグが戦う必要はなく、ゴウザウラーへの合体後、ザウラーズメンバーにその姿を見せて、内部にギーグがいると思わせた後、頃合いを見て、密かにゴウザウラーから脱出すればよかった。
そうしていれば、ザウラーズを疑心暗鬼にさせ、戦闘の局面をキングギア有利にできていた公算が大きい。
己の命と誇りを懸けて、決死戦に出た歯車王にしてみれば、ギーグ頼みのような手段を用いてまで、ゴウザウラーに勝ちたくはなかったかもしれない。
しかし、ギーグという従者の存在も、見方によっては立派に歯車王自身の武器だと考えることができるし、更に、そんな武器たるギーグは、自らの意思を持っているばかりか、歯車王と連絡を取れる電話を体内に内蔵しているのである。
ギーグが連絡を取るタイミングと、歯車王からの指示次第になるが、場合によっては、内側と外側の両方からゴウザウラーを攻めることも、決して不可能ではなかった訳で、そうした戦い方をすることが、できたかもしれなかったという点が、極めて重要だったと言える。
何より、ゴウザウラーを内外から攻めるにあたっての最難関事項たる、「ギーグのザウラーロボ内部への侵入」は、現実に成功していたのだから。
しかし実際には、このような戦法を、歯車王とギーグはとることができなかった。
と言うのも、ゴウザウラーとの決戦しか頭になかった歯車王がギーグのことを気にかけられなかったように、ギーグもまた、歯車王のことを気にかけられなかったからである。
そもそも歯車王は、彼本来の戦法である「巨大改造」に象徴されるように、部下のギーグとのコンビネーションが上手く機能してこその機械王なのだ。
ギーグの仕事は、故障した機械を機械化獣に変貌させ、場合によっては地球への攻撃を行うという、歯車王が出陣するまでの下準備をしておくこと。
歯車王の仕事は、ギーグが誕生させた機械化獣に巨大改造を施して、自分たちの邪魔となる障害を取り除き、本格的に地球の機械化を推進させること。
このやり方は「対ゴウザウラー」を意識してからのものになるが、それでも今般の地球攻略における歯車王とギーグの役割分担は、驚くほど明確になされていた。
そして、機械神の度重なる催促が歯車王を焦らせながらも、シャドーシェーバー戦の折には、ギーグがゴウザウラーに張り付き、身体を張ってその位置を歯車王に知らせ、歯車王はそれを頼りに攻撃を加えるなど、歯車王とギーグの二人三脚は、それなりに上手くいっていたのである。
しかし、機械神の最後通告が歯車王とギーグの間に亀裂を入れ、最終決戦の段になると、彼らのコンビ関係は崩壊してしまった。
お互いがお互いを必要としていたハズの歯車王とギーグは、完全に余裕を失ったことから、それぞれが自分のことしか考えられなくなってしまっていたのだ。
よって、連携力がなくなった彼らが、如何なる策を弄しようとも、その本領を発揮できなかった以上、勝利することは難しかったともいえるが、しかし彼らからチームワークを奪い、あまつさえ敗北させたのは、歯車王に結果を要求し続けた機械神なのだ。
歯車王亡きあと、ギーグは電気王に取り入ろうとして処分されてしまうが、結果主義の機械神が過度なプレッシャーをかけなければ、歯車王もギーグも死なずに済み、長いスパンで見れば"太陽系機械化計画"は成就していたかもしれない。
実際、機械神が最後通告を行う直前の時点で、今しばらくの猶予を欲した歯車王の中には、ゴウザウラー打倒のイメージが描けていたのかもしれず、ゴウザウラーを絶対に倒せる機械化獣を生み出すべく、ギーグがその素材を吟味していたのも、歯車王から「ゴウザウラー必殺命令」を受けていたが故の行動だったと考えることもできる。
仮にそうだったとしたら、機械神があのタイミングで最後通告を行いさえしなければ、歯車王がゴウザウラーを倒していた可能性は十分にあった。
事実、アイスクラッシャーという機械化獣を得た歯車王が勝てるだけの条件は、これ以上ないほどに揃っていたのだから。
とにかく、総合的に判断して、歯車王部隊の壊滅は、ゴウザウラーの抗戦よりも、結果を欲しがった機械神の短気が招いた悲劇だったといえる訳で、歯車王に与えられたチャンスが有限だったのなら、せめて計画達成のタイムリミットくらいは、最初に設定しておくべきであった。
最後に。今回の戦闘時における注目ポイントとして、キングギアとの戦いで消耗したゴウザウラーに対し、電気王が一撃を加えただけで退却したことが挙げられる。
戦いで疲弊した相手に全力を出さなかった電気王の姿勢からは、「力ある者と正々堂々と戦いたい」という、電気王最大の拘りにして問題点を、既に垣間見ることができる。

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