第28話「涙のシンデレラボーイ」


概要

自らが機械神以上の存在となり、宇宙の支配者になろうとする野心を秘めたエンジン王は、地球攻略の初陣で対戦したゴウザウラーに興味を覚えていた。もしゴウザウラーが、自分の求める最強の力の持ち主であったとすれば、自分が一気に機械神を凌駕することも、夢物語ではなくなるからだ。
そこでエンジン王は、次の戦いでは、自分たちの本来の戦法である「巨大結合」をもって、ゴウザウラーの力を試すことを決意する。そして、その戦いで最善を尽くすために、地球環境に適応した機械化獣を生み出す必要性を感じたエンジン王は、地球の環境データを収集させる目的も含んだ機械卵を、ギルターボに発射させるのだった。
一方、ザウラーズは「春風テレビ」のニュース番組「春風ニュース」に出演、最新機のグランザウラーのパイロットである洋二が、一夜にして、学校中のスターとなってしまう事態が起こっていた。エリーが言うところの「シンデレラボーイ」となった洋二は、当初はその環境の変化に戸惑いながらも、「1日くらいこんな日があっても…」と思うと徐々に増長。遂には他のザウラーズメンバーと放送部の前で「今度の敵は僕一人で倒す」と宣言してしまう。
そんな洋二をエリーが諫めに行くが、「グランザウラーのパイロットになって変わった」と言う洋二は聞く耳を持たない。果たして、その瞬間、地球の環境データを収集し終えた機械卵が、機械化獣ガラジャークに変化。春風町に攻撃を開始する。
こうして洋二の暴走を止められないまま、ザウラーズはエンジン王との第2ラウンドに臨むことになった。

実行

機械化獣ガラジャークとザウラーズの戦闘が開始されるや、洋二はグラントプスで単独攻撃を展開、1人だけ先走った行動を取ってしまう。それは、ガラジャークの反撃を受け、各ロボがゴウザウラー、マグナザウラー、グランザウラーへと合体・変形を果たした後も、変わることはなかった。
そんなザウラーズ側の事情はともかく、ザウラーロボが3体揃ったことに時宜を叶えたエンジン王が戦場へと到着。本来の戦法である巨大結合によって機械化獣ガラジャークと一体化、合体機械化獣としての姿を顕現させる。圧倒的な合体機械化獣のパワーでザウラーズを圧倒し始めるエンジン王。だが、未だ自分が「ザウラーズのシンデレラボーイ」であると信じる洋二は、単独行動を取った結果、機械化獣に撃墜され、ピンチに陥ってしまう。
そんな洋二のグランザウラーを助けんと、機械化獣の両腕を押さえる、ゴウザウラーとマグナザウラー。そして、ここでザウラーズの知恵袋たる教授が、策を授ける。教授曰く、合体機械化獣を倒すには、3体のロボットの力をそれぞれに出し切るしかなく、その方法は、ゴウザウラーとマグナザウラーで敵の動きを止め、グランザウラーの必殺技で倒すというものであった。しかし、ザウラーロボの間近で機械化獣を破壊すれば、搭乗者であるザウラーズメンバーの身にも危険が及ぶ可能性があったため、洋二は作戦開始の合図であるゴウザウラーとマグナザウラーの砲撃が始まっても、必殺技を放てないでいた。
ここに「シンデレラボーイ」の幻影が解け、自分1人では何もできないと弱音を吐く洋二。そんな洋二に対しエリーは、それは誰もが同じで、だからこそ力を合わせることが大切だと伝えると、洋二のことを信じているから勇気を出して欲しいと、叱咤激励する。 果たして、そんなエリーの言葉に勇気を奮い起こした洋二は、必殺のザウラーグランドスラッシュを発動させて、機械化獣を撃破。更に、戦闘終了後、その安否が心配されたゴウザウラーとマグナザウラーも、爆炎の中から無事な姿を見せた。
敵の合体能力=巨大結合に驚愕し、その対策を練る必要があると言う教授に、今回の自分の行動を反省した洋二は、作業の協力を申し出、他のザウラーズメンバーも協力を誓い合う。
そしてエンジン王は、3体のザウラーロボこそ、自分たちの探し求めていた相手であると確信するのだった。

分析

これまでにも、機械化帝国側に何度か訪れた勝機。その際には、ザウラーズのチームワークの乱れが絡んでいることが多かったが、今回もそうした過去の例に漏れない形で、勝機があった。お互いの長所が、お互いの短所を補い合うという一致団結さにこそ、ザウラーズの強さの秘密の一端が隠されているのだ。故に、洋二が増長して、スタンドプレーに走った今回は、十分すぎるほどに勝機があったと言え、エンジン王の目的が「打倒ゴウザウラー」であったなら、それを成し遂げられた可能性は高かった。
しかし、エンジン王の目的は、自分が宇宙最強の存在になるため、ゴウザウラーがその「最強の力」の持ち主であるか否かを試すことであった。そうしたエンジン王個人の目的は、果たされたと言える。翻って、機械化帝国の目的が果たされなかったのは、機械神にとっては遺憾なことだったに違いない。
一方、ザウラーズ側に目を向ければ、洋二の増長がザウラーズを危機に陥れた点に注目したい。洋二は自分の自信のあることには、その実力を発揮できるタイプの人間であると当データベースは分析している。事実、勉強ではクラス一の秀才と、周囲も認める洋二が、ことロボットの操縦においては、満足な結果が得られていなかったのは、ボウエイガーに初搭乗した時の操縦内容や、ハイパーデスボルトとの戦いぶりを見ても明らかだ。
ただ、対ハイパーデスボルト戦の最中に、仲間に支えられながらパイロットとして急成長した洋二は、前戦でも機械化獣オードロンを倒すまでに至っている。その成長度は驚異的と言っていい。 しかし、テレビ出演を契機に、学校中のヒーローになった洋二は、それまでの人生で注目されたことがなかった上、思い込みが激しい性格も手伝って、「シンデレラボーイ」として増長してしまったのだ。
エリーが諫めにきた際に、「自分はグランザウラーのパイロットになって変わった」と洋二は言った。しかし、実際に大きく変わったのは周囲の自分を見る目に過ぎない。だからこそ合体機械化獣と化したガラジャークにとどめを刺す役を任されたときに、増長していた洋二は萎縮してしまった。洋二の変化が、成長によるものであったなら、迷いはしても、仲間を信じて覚悟を決められたハズなのだ。
そうした中で、自分を諫めたり、励ましたりしてくれたエリーが側にいた辺り、本当に洋二は、周囲の仲間に恵まれていると痛感させられる。エリーは以前より、洋二は頼りなささえなくなれば、完璧であると考えており、洋二が弥生先生に片思いした時なども、成長の後押しを図ってはいた。しかし、そうした後押しが上手くいったことはなく、洋二の性格の、長所も短所も理解していたからこそ、今回のテレビ出演後の洋二を取り巻く環境や、洋二自身の言動の変化に、エリーは違和感を覚えたのだろう。
またエリー自身、「シンデレラボーイ」と洋二を祭り上げた責任を感じていたのかもしれないが、何にしても、成長ではなく増長してしまった洋二を気にかけたエリーの行動の数々が、結果的に洋二を真に成長させることになり、それがザウラーズの勝利の鍵ともなったことは、疑いようのない事実である。
こうして今回は、ザウラーズ、エンジン王の双方ともが、戦いの中で最善を尽くした末に、最良の結果を得ることができた訳だが、その最良の結果が、キングゴウザウラーの誕生と、エンジン王の完全なる造反に繋がっていくことになる。 機械神にとってのみ最悪の事態が進行してしまったことだけは、確かだと言えよう。

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