第31話「爆走!ザウラーカート」


概要

エンジン王が地球攻略を任され、ゴウザウラーと交戦すること、はや4戦が経過していた。 その4戦の中で、ゴウザウラーこそ自分たちの求めていた対戦相手であることを強く確信したエンジン王は、その最強形態であるキングゴウザウラーの具体的なパワー数値を測定することを決定し、そのための機械化獣を生み出すべく、 ギルターボに機械卵を発射させるのだった。
一方、ザウラーズではひろみが漫画賞に落選してしまっており、母親・小夜子のアドバイスから、その次回作の題材をザウラーズでの体験に求めることにしていた。 こうした中、クーコの優しさにヒロインの手がかりを感じたひろみは下校時にクーコの取材を開始、密かに観察する形でそのスケッチを行っていった。 ところが、こうした行動を、自分を脅かすための尾行と誤解されてしまったひろみは、クーコから一方的に嫌われて、拒絶されてしまう。
このようにして、ひろみとクーコの間に不和が生じる中、機械化獣出現の報せを受けたザウラーズは、その現場へと急行するのだった。

実行

機械化獣スクワームが暴れる現場に、ゴウザウラー、マグナザウラー、グランザウラーの3体が現れたことを確認したエンジン王は、役者が揃ったとして、巨大結合を行い、スクワームを合体機械化獣へと変貌させる。 一方のザウラーズも、3体のザウラーロボを、キングゴウザウラーへと超熱血合体させるが、これを待ち望んでいたところのエンジン王は、戦闘を開始させると、一瞬の隙を狙って、スクワームのボディをキングゴウザウラーに巻き付かせることに成功。 それを振り解かんとするキングゴウザウラーの力を利用して、具体的なパワー数値を計測しようと試みる。
スクワームの攻撃によって、第1動力室の冷却装置が故障してしまい、エンジン王の思惑通りのパワーが出ない中、内部で復旧作業に当たるザウラーズは、その作業中にひろみが怪我をしてしまう。 保健委員のクーコは、気まずいながらもひろみに応急手当を施すと、保健室へと薬を取りに向かうのだった。
その頃、スクワームへの反撃方法を模索していたザウラーズは、足首にあるキングショットでなら砲撃できることに着目し、金太がその発射レバーを引くが、不思議なことに、キングショットは作動する気配を見せない。 実は、スクワームの攻撃による圧力が強すぎるため、安全装置がストップをかけており、キングショットを撃つには、手動で安全装置を解除する必要があったのだ。 そのため、金太が安全装置まで向かおうとするが、キングゴウザウラーに本気を出させようとしたエンジン王が更なる攻撃を加えた結果、金太の行く手に爆発が起き、進路が炎に塞がれてしまう。 それにより、偶然、安全装置に最も近い保健室にいたクーコが、足首にあるキングショットの安全装置を解除する役目を負ってしまうのだった。
クーコのことを心配するひろみの言葉に、自分が馬鹿にされていると感じたクーコは、意地になって安全装置のあるところまで向かおうとするが、クーコが梯子を下りようとした瞬間、 合体機械化獣の攻撃で梯子が外れるという事態が引き起こされ、懸垂状態に陥ったクーコは、必死の助けを求める。 このクーコのピンチに、ひろみは操縦席をザウラーカートに変形させるとキングゴウザウラーの内部を爆走。 司令室を突っ切る形でショートカットを行い、その出入口の破片が、怪我に直撃する痛みにも耐え、垂直の壁を疾走して、腕力の限界のため、梯子から落下していくところだったクーコを、無事に救助するのだった。 そして、ひろみとクーコが力を合わせて、安全装置を解除したことで、キングショットを、合体機械化獣のギルターボ部分に直撃させたキングゴウザウラーも、スクワームの束縛状態から逃れることに、辛くも成功する。
それと同時に、動力室の修理も完了したことで、本領を発揮できるようになったキングゴウザウラーは反撃を開始。 砲撃されたギルターボの怒りを込めた、スクワームの体当たり攻撃をも、キングゴウザウラーは真っ向から受け止めて見せるが、この瞬間、キングゴウザウラーのパワー数値は、エンジン王の目の前で、みるみるうちに上昇していくのだった。 エンジン王は、戦闘中に全くパワー数値の上がらないキングゴウザウラーのことを、期待外れと断じていただけに、この状況には驚きを隠せなかったが、それでも合体機械化獣のフルパワーでキングゴウザウラーに応戦せんとする。 が、それをジャイアントスイングで跳ね返されたエンジン王は、測定器の数値が振り切れて、爆発してしまうほどに驚異的なキングゴウザウラーのパワーを見せ付けられてしまうのだった。
こうして戦いは、キングタイタンでスクワームのボディを破壊したキングゴウザウラーが、必殺のザウラーキングフィニッシュで勝利を掴み、エンジン王はキングゴウザウラーの具体的なパワー数値を知ることが叶わぬまま、退却を余儀なくされる。
一方、仲違いをしていたひろみとクーコは、その誤解も解けて、戦闘終了後に仲直りするのだった。

分析

キングゴウザウラーの具体的なパワー数値を測定しようとするエンジン王の試みは、失敗に終わった。 戦闘中には、キングゴウザウラーの動力室が故障していたし、それが回復し、フルパワーを発揮できたキングゴウザウラーの力は、測定器が壊れてしまうほど凄まじいものであったからだ。
だが、キングゴウザウラーのパワーを測れなかったのは、単に動力室が復旧したからではない。 キングゴウザウラーに限らず、エルドランのロボットは全て、それを託された子供達の持つ心や、そこから生まれる気力といったものが、最大のエネルギー源となっているからだ。
とは言え、何故、計測不能なほど強力なパワーが出せるのか。そのヒントは仲違いをしていたひろみとクーコに隠されている。ここでひろみとクーコの2人をクローズアップしてみよう。
元々、ひろみとクーコは仲が良い友達であった訳で、それはザウラーズが結成された当時に、ひろみとクーコがお互いにエールを送り合っていたことからも窺える。 どちらから働きかけて友達になったのかは定かではないが、お互いに優しい性格であったからこそ、惹かれ合った部分はあったハズで、今回も、クーコの優しさに着目したからこそ、ひろみは新作漫画のヒロインのモデルにクーコを選んでいる。 一方のクーコも、取材を開始したひろみの行動を自分を脅かそうとした行為だと誤解すると、ひろみのことを「そんな人だったなんて思わなかった」と見損ない、ショックを受けて拒絶している。
この、ひろみがクーコを新作漫画のヒロインに選んだことや、その行動を誤解して、ひろみのことを見損なったクーコがショックを受けて拒絶したことは、お互いがお互いに対して好意を持っていたことの発露であると言える。
以上のことから、ひろみとクーコを繋いでいたのは、2人が生まれ持った優しさであり、それが発展した友情や愛情といった「情」であったことが分かる。 そんな「情」で繋がっていたひろみとクーコは、今回、誤解から仲違いをした訳だが、人間というのは、そのわだかまりが解けないうちは、相手のどんな言動も、不快に感じられるものだ。 だからこそ、ひろみのことを見損なったクーコには、自分のことを心配するひろみの言葉も腹立たしく聞こえたし、クーコがひろみの怪我の治療をしたのも保健委員の「仕事」としてやった趣さえある。
しかし、お互いに心の底から憎くて嫌いという訳ではないのだ。 だからこそ、ひろみはクーコのピンチに際し、ザウラーカートでキングゴウザウラー内部を疾走し、司令室出入口の破片が怪我に当たってもその傷みに耐えて、様々な危険を冒しながら、クーコを救助するに至っている。 またクーコも、ひろみが助けに来てくれたことで、その優しい本質が変わっていないことが、実感として理解できたため、クーコのひろみへの誤解は、この瞬間に氷解している。 故に、戦いが終わった後、クーコが「ひろみが助けに来たときは嬉しかった」と本音を語り、誤解から嫌ったことを謝ったことで2人は仲直りすることができたのだ。
このようなひろみとクーコのやりとりからは、2人が普段から純粋な優しさや友情で繋がっていたため、誤解で仲違いをしてしまっても、行動で相手のことを理解することができたし、自分が悪いと思ったら謝ることで、その関係を修復できさえもしたことが分かる。 更に言えば、2人の繋がりが、打算的なものでなかったからこそ、ひろみはクーコのピンチに際して、普段は見せないような必死の強さを発揮することができた訳だ。 同じようなことは、ザウラーズの関係者全員に言え、主に拳一が操縦するキングゴウザウラーが驚異的なパワーを出せるのも、優しさや情で繋がっている家族や友人がいて、自分が生まれ育った地球に愛着を感じる心があればこそであろう。
こうしたことを考えながら、機械化帝国という組織を見ると、機械神と各王の繋がりは、使えるか、使えないかという打算的なものであることが浮き彫りになってくるし、その中でも、機械神とエンジン王の関係からは、お互いがお互いの腹を探り合い、利用し合っているような印象を、特に強く受けてしまう。 結局のところ、機械化帝国がザウラーズに敗北し続けている理由は、この構成員の繋がりの温度差にこそ、集約されていると言える。
また、そんな機械化帝国の中で、エンジン王とギルターボだけは、唯一「情」による関係で結ばれていた訳だが、 月の機械化城における決戦時に、ギルターボがエンジン王を助けるという奇跡を起こすことができたのは、普段から情愛で繋がっていた彼らをして、初めて成し得た業だったことが、今回の戦いから窺い知れよう。

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