第32話「激突!ヒーロー決定戦」


概要

月の機械化城では、ゴウザウラーとの戦いに没頭するエンジン王に対して、機械神が大切な目的を忘れているとし、猶予も無限ではないことを通達していた。 そんな機械神の言葉に、もうあまり時間がないことを悟ったエンジン王は、ギルターボに、ゴウザウラーのデータがまだ不十分であることを確認すると、ゴウザウラーのデータ収集を狙って出撃するのだった。
一方、ザウラーズは、小学生生活最後の運動会を迎えていたが、ザウラーズとしての任務から、運動会実行委員を出しておらず、またザウラージェットの着陸の際に、運動会の飾り付けを全て吹き飛ばしてしまっていた。 そのため、ザウラーズが運動会を軽視しているように感じた6年1組・運動会実行委員長の北島博子と口論となり、ザウラーズ=6年2組と1組は真っ向から対立、運動会で激突することになる。
こうして、様々な思いが絡み合う中、事態は進んでいくのだった。

実行

まず、ゴウザウラーを誘き出すことにしたエンジン王は、ギルターボに機械卵を射出させると、それが変化した機械化獣ウインガルーダを春風町で暴れさせた。 機械化獣は、応戦する防衛隊を軽く蹴散らし、町中を次々に破壊していくが、不思議なことにゴウザウラーは現れず、エンジン王も自分の目論見通りにいかないことに、苛立ちを覚えていた。 実は前日、ザウラーズは、防衛隊の要請で出撃したにもかかわらず、それは子供の悪戯電話による偽情報だった上、そのことに関して防衛隊の武田長官からは無下な対応を受けていたため、 今回の機械化獣出現の報せも、偽情報であると決めつけて、運動会に没頭していたのだった。
そんな運動会で、2組と1組はライバル心をむき出しにして激しくぶつかり合い、6年生の種目が全て終わった時点で、30対30の同点という結果に。 そのため決着は、プログラムの最後に組み込まれた、クラス対抗綱引きでつけることとなり、その同点決勝戦が開始されようとした正にその時、春風小学校の上空を防衛隊の戦闘機が横切ったため、 機械化獣出現の報せが本当だったことが発覚する。
自分たちに課せられた地球防衛の使命のため、運動会への未練を残しながら出撃する6年2組=ザウラーズ。 そして戦場に到着した彼らは、暴れる機械化獣とギルターボに向かって、怒りを乗せたティラノファイヤー、トリケラショット、ザウラーボンバーを次々に繰り出すのだった。
そんな好戦的なザウラーロボに対して、機械化獣巨大結合を行うエンジン王。それを受けてザウラーズも、キングゴウザウラーへと合体すると、キングバズーカを連射し、更にキングスパルタンを一斉発射する。
高機動力で、これらの攻撃を全て回避しながらも、その攻撃内容には、全く計画性がなかったため、ギルターボは戸惑いを隠せなかったが、エンジン王の命を受けて、作戦を第二段階へと進めていくのだった。
作戦の第二段階の攻撃方法は、合体機械化獣の翼を羽ばたかせることによって竜巻を作り出し、その中にキングゴウザウラーを閉じ込めることで身動きを封じ、羽根ミサイルによる攻撃を加えて、徐々にダメージを与えていくというもので、 これは前回の合体機械化獣スクワームが行った締め付け攻撃と同種の戦法であった。 つまりエンジン王は、前回と似たような状況にキングゴウザウラーを追い詰めることによって、その驚異的なパワーの秘密を探ろうと画策したのだが、キングゴウザウラーはキングタイタンで竜巻に突破口を開くと同時に脱出して、 合体機械化獣に反撃のパンチを見舞ってきたのだった。
全く予期せぬ反撃を受けた合体機械化獣は、ザウラーキングフィニッシュの前に爆発四散。 敗れたエンジン王は、しかしまたしても計算外のパワーが計測されたとして、ギルターボに戦闘記録を取っておくように命じるのだった。
なお、機械化獣出現の煽りで、6年生の優勝決定前に中断されていた運動会は、北島をはじめとした6年1組の熱意が、先生たちやPTAを説得させて、その同点決勝戦がザウラーズの帰還後に行われており、 クラス対抗綱引きの末に、6年1組が優勝の栄冠を勝ち得たことを、最後に付け加えておく。

分析

機械神の言葉から、自分に与えられた猶予があまりないことを自覚したエンジン王は、早急なゴウザウラーのデータ収集を狙って機械化獣を暴れさせ、ゴウザウラーの誘き出しを図った。 しかし、まさか小学生生活最後の運動会などという行事のために、ザウラーズがなかなか出撃してこなかったなど、エンジン王には想像もつかなかったに違いない。
ところで今回、ザウラーズには2人の敵が存在している。1人は機械化帝国のエンジン王。そしてもう1人は、6年1組の運動会実行委員長・北島博子である。
一口に「敵」と言っても、エンジン王は侵略者、北島は運動会というイベントを巡って、ザウラーズと対立する小学生という点で敵としての立場は全く異なっている。 更に北島は、時間の経過と共に、非常に興味深い心情の変化を見せているのである。そこで、北島のザウラーズに対する心の変わり様を、追ってみることにしよう。
北島はザウラーズが運動会の実行委員を出していないことから、彼らが特別扱いを受けていると感じ、また運動会を軽視しているとして、当初はザウラーズを敵視していた。 そんな北島に、ケンカを売られた形となったザウラーズも、対抗心を燃やし、デッドヒートの末に、同点決勝にまでもつれ込んだ運動会の決着は、機械化獣の出現によって、引き分けで納められようとしていた。 しかし、そうした大人の判断に北島が異を唱えようとするより早く、ザウラーズの拳一とエリーが反対の声を上げ、ザウラーズメンバーの全員が、運動会に未練を残しながら出撃していく姿を見て、北島はザウラーズが、運動会を軽視していた訳ではなかったことを実感する。 そしてザウラーズの思いを汲み取った北島は、涙ながらに高木先生に訴え、PTAや先生たちの協力を取り付けて、運動会の同点決勝戦は、ザウラーズが帰還した後に行われることになったのである。
こうした北島の変化は、運動会を軽視していると思っていたザウラーズが、実は自分たちと同じくらいの情熱を運動会に注いでいたことを、その姿から窺い知り、 運動会に一生懸命に取り組みたいという自分と同じ思いを、ザウラーズから感じたからに他ならない。 故に、自分と目的が同じであったと心から実感できたとき、北島はザウラーズの敵から理解者となり、後に協力者にもなっていったのである。
この「目的が同じ」という点からザウラーズとエンジン王を見てみると、機械化帝国と戦うザウラーズと、自分が宇宙の支配者になろうという野心を秘めているエンジン王は、 機械化帝国の統治者たる機械神を倒したいという点では、目的が一致している。 つまり、ザウラーズとエンジン王は、理解し合うことさえできたならば、いつでも機械神を倒すために共闘できる下地が既にできあがっているのである。
実際にザウラーズとエンジン王は、最終的に和解して共闘することになるのだが、「人間と機械の共存などあり得ぬ」という考えを持っている機械神からすれば、 それは万に一つも起こらないハズの、全く想像だにしなかった事態だったのではないだろうか。
最後に。今般の戦いの中で、キングゴウザウラーが合体機械化獣の竜巻から脱出することができたのは、ザウラーズの、「小学生生活最後の運動会を邪魔された」という怒りが、全て合体機械化獣に向けられたからだ。 つまり、今回のザウラーズの勝利は、小学生生活最後の運動会に賭けていたザウラーズの心が一致したからこその勝利だった訳だが、同じ志が一つの方向に向けられた時に凄まじいエネルギー量が発揮されることは此度の戦いにおいて既に証明されているのである。 こう考えると、月の機械化城における決戦時に、心を理解してザウラーズと和解し、機械神に対する怒りを抱いたエンジン王が、最後の最後に驚くべき力を発揮できたのは、ある意味、当然なことだったのかもしれない。

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