第33話「嵐のカンニング計画!」


概要

月の機械化城では、エンジン王が過去のゴウザウラーとの対戦データを元にして、より強力な機械卵をギルターボに製造させていた。 これまでの戦いの中でゴウザウラーのデータを多く得ながらも、まだまだ自分は、機械神に及ばないことを自覚しているエンジン王は、強化した機械卵から誕生する機械化獣の力をもって、ゴウザウラーの更なるデータを収集せんと画策するのだった。
一方のザウラーズでは、テストで0点続きの拳一が、母親から小遣い無しを宣言されてしまっていた。 そして、それが嫌なら100点を取ってくるよう言われた拳一は、なんとしても次のテストで100点を取ろうと、徹夜の勉強や教授の「天才製造マシン」によって、学力をアップさせようとするが、不慣れな勉強の無理がたたって、遂には熱を出してしまう。
果たして100点だけを追い求める拳一はカンニングをすることを決意。その結果、拳一は92点を取るが、普段から「拳一はやればできる」と信じてくれていた中島先生の信頼を裏切ってしまったという罪悪感から、カンニングをしたことを後悔し始めた拳一は、良心の呵責に苛まれていくのだった。
そんな拳一が落ち込んでいた、まさにその時、機械化城で造られた強化機械卵が地上に落下。機械化獣ケルベローダーに変化すると、機械化機能を持った火炎を放射して地球の機械化を行い始めた。 この事態に出動したザウラーズは、メインパイロットの拳一が心に罪の意識を抱いた状態のまま、機械化獣との戦闘に突入することになるのだった。

実行

機械化獣ケルベローダーは、防衛隊の攻撃をものともせずに春風町を蹂躙していたが、そこにザウラーズが登場。ケルベローダーとザウラーロボの対戦が開始される。
最初は分離状態のままで、ケルベローダーを包囲しながら攻撃する戦法を選択したザウラーズ。しかし後方からの援護射撃を任せた拳一のマッハプテラが、全く反応を示さなかったため、その攻撃は、不発に終わってしまう。 そこで今度は、マグナティラノをマグナザウラーに、グラントプスをグランザウラーに変形させて、マグナショットとグランフラッシュを炸裂させたその隙に、3体のコアロボを、ゴウザウラーへと合体させんとするが、拳一の反応が鈍かったうえ、ケルベローダーが、マグナザウラーとグランザウラーの攻撃にダメージすら受けていなかったため、その棘ミサイル攻撃を受けた3体のコアロボは、ゴウザウラーへの合体を阻止されてしまうのだった。
このように、戦いを優位に進めるケルベローダーは、マグナザウラーとグランザウラーの2体に対して、更なる攻撃を加えていくが、この間にダメージを受けていた3体のコアロボは、ようやくゴウザウラーへの合体を完了させる。 だが、ゴウザウラー、マグナザウラー、グランザウラーの3体が揃った瞬間、この時を待ちわびていたかのようにエンジン王の搭乗するギルターボが出現。 巨大結合でケルベローダーを合体機械化獣に変貌させると、手に握られた剣から繰り出す驚異的な剣捌きでザウラーズに更なる攻撃を加えていくのだった。
この、合体機械化獣と化したケルベローダーの素早い攻撃の前に、為す術のないザウラーズはキングゴウザウラーに合体して対抗せんとするが、またも拳一の反応が鈍かったため、合体の瞬間にケルベローダーの攻撃を受けて超熱血合体を失敗させてしまう。 そんなザウラーズに追い打ちをかけるように、マグナザウラーとグランザウラーを火炎放射攻撃でダウンさせて、更にゴウザウラーを追い詰めていくケルベローダー。 しかし絶体絶命のピンチの中で、罪悪感に苛まれ続けていた拳一が、カンニングしたことを中島先生に謝る覚悟を固めた次の瞬間、ゴウザウラーはケルベローダーの攻撃を回避すると、続いて3体のコアロボにまで分離する。 誰もが驚く展開の中、拳一は、「少し時間をくれ」とだけ言い残すと、戦闘を一時放棄して、中島先生に謝るため、マッハプテラを春風小学校まで飛ばすのだった。 そして春風小学校に到着するや、カンニングしたことを告白した拳一は、その贖罪として自分を殴ってくれるように、中島先生に訴える。 しかし中島先生は、カンニングしたことを正直に打ち明けた拳一の勇気に免じて、カンニングという罪を許すと、拳一をザウラーズとしての使命に送り出すのだった。
その頃、戦場では、ザウラーロボを「弱すぎるためにデータにならない」と判断したエンジン王が、とどめの一撃を加えんとしていた。 だが、この間一髪のタイミングでマッハプテラが戦場に舞い戻ると、瞬時にゴウザウラーに合体。ケルベローダーの剣による攻撃を受け止めると逆にパンチを見舞い、その隙に一気にキングゴウザウラーへの超熱血合体を成功させるのだった。
キングゴウザウラーの登場に、やっとザウラーズが戦う気になったと攻撃をかけるエンジン王。しかしケルベローダーの剣は、キングゴウザウラーにかすりもしない。 それどころか、キングゴウザウラーの強烈なキックによってダウンさせられたケルベローダーは、そのままザウラーキングフィニッシュを受けて、大爆発と共に四散する。
こうして、圧倒的な強さを見せたケルベローダーは、罪悪感の消滅した拳一の操縦するキングゴウザウラーの前に、完敗してしまうのだった。

分析

過去の戦闘データを元にして造られた機械卵から誕生した、機械化獣ケルベローダー。流石に、これまでのデータが活かされただけあって、その強さは過去の機械化獣を遙かに凌駕していた。
結合前の状態でさえ、マグナザウラーやグランザウラーの攻撃をものともせず、拳一の反応が鈍かったためとは言え、ゴウザウラーへの合体を、一度は阻止するほどの活躍も見せた。 更に、ギルターボの巨大結合によって合体機械化獣となった後は、驚異的な剣捌きで各ザウラーロボを圧倒し、これも拳一の反応の鈍さがあったためながら、キングゴウザウラーへの合体を阻んでしまうに至っている。 ケルベローダーは、間違いなく、これまでで最強の合体機械化獣と言っていいだろう。
一方、ザウラーズが苦戦を強いられたのは、ケルベローダーの強さもさることながら、ゴウザウラー及びキングゴウザウラーのメインパイロットである拳一が、テストでカンニング行為を働いたことから罪悪感を覚え、その心に罪の意識を感じていたからである。
拳一としては、次のテストで100点を取らなければ小遣いは無しと母親に宣言されていたため、なんとしても100点を取ろうとした末にとった行動がカンニングであった。 その結果、92点という高得点をマークすることができた拳一だったが、以前から、「拳一はやればできる」と信じてくれていた中島先生の信頼をカンニングという形で裏切ってしまったという思いが罪悪感となり、その心に罪の意識を感じるようになった拳一は戦いに集中することができなくなってしまった。故に、今回の戦闘中における拳一は常に反応が鈍くなってしまった訳だ。
もちろん、カンニングは褒められた行為ではなく、それ自体が罪かもしれない。 しかし、拳一が罪悪感を覚えたのは、カンニング行為そのものよりも、自分のことを信じてくれていた中島先生の信頼を裏切ってしまったということの方なのである。 もし拳一がカンニングという罪を犯しても、本人にカンニングを罪だと感じる意識がなければ、カンニングをしたということが、今回の戦闘時における足枷にはならなかったハズなのだ。 だから、拳一がカンニング行為に罪悪感を覚えたことは、拳一が中島先生との間に、強い信頼関係を築けていた何よりの証拠と言えるのである。
そして信頼してくれた中島先生への背信という「罪」をカンニングに感じた拳一は、その贖罪として中島先生に殴られるという「罰」を望んでいる。しかし、中島先生が拳一に対して与えたのは、「罰」ではなく「許し」であった。 中島先生が拳一を許したのは、拳一が100点を取るための努力をしている姿を、実際に見ていたうえで、カンニング行為を正直に告白した拳一の勇気を、最大限に評価したためだが、更に言うならば、拳一が勉強以外にも良いところを持っていることを、中島先生は知っているからで、今回のように、拳一がカンニングしたことを後悔し、自分を殴ってくれるように願った「素直さ」などは、その好例と言えるものだ。
また、拳一が最初に望んだとおり、中島先生が殴るという罰を与えていたら、それはそれで拳一も気持ちを切り替えることができたかもしれない。しかし、その場合は、ケルベローダーに対して、苦戦は免れなかったと思われる。 なぜなら、ケルベローダーにキングゴウザウラーが圧勝できたのは、拳一の罪に対して中島先生から許しが与えられたことによって、拳一の心にカタルシス効果が作用したことが理由だからだ。 罪悪感によって苦しんでしまう人間の弱さと、その罪が許されたときの、カタルシス効果を得た人間の強さ。前者は心のマイナス面、後者はプラス面であるため、後にエンジン王が推論した通り、確かに人間の心というものは、最大の弱点であり、最強の力なのかもしれない。
そして今回、見逃してはならないのは、エンジン王が、まだまだ自分は機械神には及ばないことを、自覚している点であろう。 地球攻略の指揮官就任までに、数々の惑星を機械化し、機械化帝国に多大な貢献をしてきたエンジン王は、その課程で多くの勝利をも積み重ねていたハズだ。 そんなエンジン王が地球で相対したゴウザウラーは、宇宙最強の力を得るための研究対象として、自分の眼鏡に適う存在であった訳だが、 そのゴウザウラーのデータを数多く収集し、確実に力を蓄えていながらも、エンジン王には浮ついたところが全くないばかりか、己の力を過信するにも至っておらず、 この辺りは、ハイパーデスボルトと化した自分こそが宇宙最強だと信じた電気王とは、全く異なっている。
機械化帝国に多大な貢献をしてきた実績と経験に裏打ちされた確かな自信が、エンジン王を冷静に自己分析させているのかもしれないが、自分が認めたゴウザウラーのデータを、着実に収集してきたにもかかわらず、自らのパワーレベルを俯瞰できているエンジン王の言動からは、その強さと実力者ぶりを改めて窺うことができる。

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