第34話「大逆襲!ギーグの罠」


概要

月の機械化城内部のスクラップ処理場。そこで、復活に必要なエネルギーを充填し、周囲のスクラップを使ってボディを復元したギーグが見事に蘇った。 ギーグの目的は、機械化帝国内に自分の居場所を失わせたゴウザウラーの打倒、ただその1点のみである。 しかし、ギーグの能力では、ゴウザウラーに正面からまともに挑んでも勝ち目はないため、勝利するための用意周到な作戦が立案される。
まず、ザウラーズの活躍を再現した遊園地「ザウラーパーク」にザウラーズを招待し、そこに装置されたアトラクションにギーグが手を加えて、仮想現実空間のごとき実害のあるトラップに改造、 それにザウラーズを陥れることによって、勝利を掴む手筈が整えられている。
更に、ザウラーズを油断させつつ邪魔者を一掃するために、先生達や武田防衛隊長官、Jr.ザウラーズといった関係者も招待し、トラップも一部のアトラクションにのみ設置することによって、違和感を軽減させる措置がとられている。
なお、ゴウザウラー自体を攻撃する役目は、機械化帝国の内部資料から、ギーグが使えると判断した機械化獣軍団に任せてあるが、更に、歯車王と電気王を自分の部下として復活させ、戦闘要員として使役するという「奥の手」を用意。 そして万が一、全てのトラップを破られた場合に備えて、結合後のミッドダロスの機能がインプットされた機械卵が、切り札として準備してあるなど、ギーグは、自分自身が絶対に戦わなくてよい万全の態勢をもって、ザウラーズに復讐戦を挑んでいくのだった。

実行

ギーグの目論見通り、ザウラーパークにやってきたザウラーズ一同は、 早速、遊園地のアトラクションの1つ「ビックリ!ドッキリ!!大絶叫コースター」へと入っていくが、その中にはザウラーズ抹殺用に準備されたサドレイガーとレドクーバーの、2体の戦闘機械化獣が待ち構えているのだった。 ところが仮想現実空間のごときトラップ要素がザウラーズにも味方し、ザウラーズはゴウザウラーとマグナザウラーを呼び出して応戦すると、2大戦闘機械化獣の迎撃を切り抜けてしまう。
次なるアトラクション「ダイノパーク」では、再現された6400万年前の世界と共に、機械化獣ボルトロボの大群が攻撃部隊を編成していたが、その中の火山には、マグナティラノが眠っていたため、思わぬ伏兵が登場してしまう。 このマグナティラノによって、ボルトロボ軍団は壊滅し、全く想定外の展開で罠を破られたギーグは、歯車王と電気王を自分の部下として復活させる奥の手を出し、彼らをザウラーズ抹殺に向かわせるのだった。
そして「ゲームパーク」内部のテレビゲーム「ザウラーファイトIIターボ」にて罠を張った歯車王と電気王の攻撃がスタート、第1ステージは歯車王が機械化獣シャドーシェーバーで挑むが、3体のコアロボとマグナティラノの前に敗退してしまう。 そのため、続いて電気王が出動。「このゲームは早くクリアしないと爆発する仕掛けになっている」とザウラーズを脅すと第2ステージを開始させ、デスボルトと戦闘機械化獣バロンガーノンのタッグでザウラーズに襲いかかる。 しかし電気王は、ゴウザウラーとマグナザウラーの連係攻撃の前に劣勢となると、あまつさえザウラービッグバスターでバロンガーノンを倒されて、無事にゲームのクリアを許してしまい、またしてもザウラーズの抹殺に失敗してしまうのだった。
その後、ボウエイガーの活躍を再現した「ボウエイガーマークII」の前で武田長官と邂逅し、グラントプス誕生の経緯を振り返ったことで、純粋に遊園地のアトラクションを楽しんだザウラーズは 気を緩めて、次なるアトラクション「底抜け脱線キングゴウザウラー迷路」に挑戦。この好機に、ギーグは迷路内へ大量の水を送ることでザウラーズを溺死させんと画策する。 しかし、迷路壁面の強度は意外なほどに脆かったため、ザウラーズは簡単に壁を破って、全員が水責めの罠から逃れることに成功。 そして、水責め作戦の失敗を悔しがっていたギーグは、迷路からの脱出を果たし、ザウラーパークという遊園地に不信感を募らせていたザウラーズに発見されてしまったため、即座にその場から撤退、なんとか逃走せんと試みる。 ところがザウラーズがすぐさま後を追ってきたため、彼らから逃げ切るのは難しいと判断したギーグは、歯車王と電気王を差し向けるとキングギアとハイパーデスボルトに変貌させて、力での勝負に出るのだった。 これを受けたザウラーズ側もゴウザウラー・マグナザウラー・グランザウラーを呼び出し、本格的な戦闘が開始されるが、キングギアは、ザウラーマグマフィニッシュで、ハイパーデスボルトは、グランショット、トリプルボンバーからの ザウラーグランドスラッシュで、それぞれ呆気なく倒されてしまう。
いよいよ追い詰められたギーグは、隠し持っていた機械卵から機械化獣ミッドダロスを誕生させてザウラーズを倒そうとするが、この最後の頼みの綱であったミッドダロスでさえもキングゴウザウラーのザウラースパルタンとザウラーキングフィニッシュの前に、敢えなく破壊されてしまうのだった。
果たして、用意していた罠を全て破られたギーグは、敗北を悟って、ザウラーパークからの脱出を決意するが、そのための空中飛行の際に、電池切れを起こして墜落してしまう。 しかし執念深いギーグは、この後、次なる復讐の機会を狙って、しばらく潜伏することになるのだった。

分析

驚異の生命力によって、復活を遂げたギーグ。そのギーグがゴウザウラーの打倒を狙ったのは、機械神の野望を達成させるためではなく、あくまで自分のためである。 いくら機械神が冷酷な支配者であったとしても、"太陽系機械化計画"最大の障害であるゴウザウラーを排除したとなれば、ギーグは大手を振って機械化帝国に凱旋でき、再び自分の居場所を取り戻すことができたハズだからだ。
そんなギーグの弱点は、戦力不足の一語に尽きるのだが、これとて「ザウラーパーク」という遊園地を舞台にすることで、ザウラーズの心の隙を狙うというカバーが図られており、 戦闘能力が皆無に等しい自らは、絶対に戦わないという信念の元、あくまでも機械化獣や歯車王、電気王を戦闘要員としたトラップを使うことによって、自らの手を汚さずにザウラーズを倒そうとした作戦計画の内容は実に見事であった。 更に歯車王、電気王といった、機械神が既に無能と判断した駒を上手く運用しての勝利とあれば、王の従者でしかなかったギーグが、機械神の覚えめでたく、よりよい立場に出世することも、決して夢物語ではなかったものと思われる。
そんなギーグが用意周到に準備した作戦が失敗した最大の理由は、ザウラーズが「ザウラーパーク」という遊園地に違和感を覚える前に、その抹殺を完了できなかったことに尽きるだろう。 実際に、ザウラーズが純粋にザウラーパークを楽しんでいた時点のトラップでは、ザウラーズ全員を、幾度となく窮地に追い込んでおり、このことからもギーグの作戦内容が決してまずかった訳ではないことが窺える。
しかし、内容自体は悪くなかったこの作戦も、ザウラーズの活躍を再現した「ザウラーパーク」という遊園地の裏側に、その抹殺を狙うギーグが潜んでいることを、当のザウラーズに気付かれてしまうという、絶対にやってはいけないミスを犯してしまった瞬間、即座に崩壊してしまった。 ギーグは嘗て、歯車王の部下として、度々地球で活動をしていたため、ザウラーズとはその時に面識があった。にもかかわらず、水責め作戦が失敗した際、悔しさのあまりに、身を隠すことを忘れたギーグは、ザウラーズに発見されてしまい、 遊園地の違和感の正体が、全てギーグの仕業だったことを悟られてしまったのだ。 これによって、トラップを使った作戦の続行が不可能になったギーグは、力による勝負を余儀なくされてしまったのだから、究極的な敗因がギーグがザウラーズに発見されてしまったことにこそあったのは、火を見るよりも明らかだ。
また今回の作戦を発動させたギーグにとって、キングギアと化せる歯車王とハイパーデスボルトと化せる電気王は、自分の恨み深い相手であると同時に、いざという時のための用心棒でもあった。 だからこそ、トラップによるザウラーズ抹殺が続行できなくなったギーグは、歯車王と電気王を、ザウラーズにぶつける策に出たのだが、 しかしザウラーズは、ギーグが対戦していた頃より経験値を積んで成長していた上、ギーグの手下に成り下がり、ザウラーズを罠にはめる行為に荷担していた歯車王や電気王はもはや王ではなく、 彼らの強さの根幹であった「王としての誇り」を持ち合わせていないキングギアとハイパーデスボルトにザウラーズを倒せというのは、残念ながら難しい注文であった。 以上のようなことから考えて、ギーグが用意したトラップをザウラーズが「アトラクションやゲームの一部」と感じている間に抹殺できなかった時点で、ギーグの敗北は事実上、決まっていたと言っても決して過言ではないだろう。
また、ミッドダロスは、キングゴウザウラーの初陣の相手であり、その時でさえ全く歯が立たなかったのだ。そんなミッドダロスが切り札では頼りなさ過ぎるのだが、ギーグとしては本来、機械卵を使う展開になった場合は、 それより誕生するミッドダロスで時間を稼ぎ、その間に脱出する準備を整えることを決めていたのかもしれない。だとしたならば、戦略的撤退をも視野に入れていたギーグの強かさは褒められるべきであろう。
なにはともあれ、自分自身は絶対に戦わないという信念を貫き、ザウラーズ自体を罠にはめることも躊躇無く行い、嘗ての上司や自分の処刑者を部下として復活させ使役するなど、保身と怨恨を組み合わせたギーグの戦略は一本筋が通っており、 どの機械王も行わなかった、ザウラーズの心の隙を突く心理戦を展開した点も含めて、ゴウザウラーを攻略する上で、注目に値する箇所が多々あった作戦計画だったことだけは確かである。
その容姿が特に人間に酷似している機械人のギーグだが、自己保身を最優先に考える小胆な性格に加え、強烈すぎるほどの怨恨と生命力を持っている点なども併せて考えると、ある意味ではギーグこそが、機械化帝国の中で最も人間に近い存在だったのかもしれない。

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