第36話「大噴火!ばくはつ五郎」


概要

ザウラーズでは拳一と金太が、どちらが優秀なパイロットかで言い争っていた。そんな2人を洋二が止めようとするが、「新米パイロットは黙ってろ」と言われたことから、怒りを覚えた洋二も言い争いに加わり、3人のパイロットが、腕の優劣を巡って争う形となってしまうのだった。
そのため、今度は委員長である五郎が争いをやめさせようとするも、「ザウラージェットを飛ばすしか能の無い奴は黙ってろ」という拳一の言葉に怒りのスイッチが入ってしまった五郎は、3人が全く言うことを聞かなかったことからキレるに至り、拳一、金太、洋二を相手に大暴れしてしまう。
この騒ぎを聞き付けて、6年2組の教室までやってきた高木先生にも被害が及んだことで、やっと正気に返る五郎。果たして、高木先生から怒られ、特に騒ぎの中心人物とされた五郎は、もう二度とキレたりはせず、冷静で、立派で、誰からも尊敬される委員長になってみせると誓うのだった。
ところが、拳一たち3人のパイロットの間では、まだ腕の優劣をハッキリさせたいとする火種がくすぶっていた。そこで拳一は決着方法として、お互いに操縦するロボットを交換するというアイディアを金太と洋二に提案。拳一がグランザウラーを、金太がゴウザウラーを、洋二がマグナザウラーを操縦することでパイロットとしての腕を競うことにし、それを次の出動の際に実行することも決定してしまうのだった。
一方、月の機械化城では、ゴウザウラーとの戦闘データをあれだけ集めたのに、まだ足りないのかとエンジン王に問いかける、ギルターボの姿があった。そんなギルターボに対し、「キングゴウザウラーが危機に陥った時に発揮する計算外のパワーを手に入れるまで、機械神に言い訳を続けなくてはならない」と回答したエンジン王は、その計算外のパワーを入手するために出撃に臨み、石油コンビナートに機械卵を撃ち込んで、機械化獣オクトバルガーを誕生させた。
こうして、この機械化獣出現のニュースが、ザウラーズ内の最優秀パイロット決定戦の号砲となったことを知らないエンジン王と、チームワークがバラバラになったザウラーズとの戦いの幕が上がるのだった。

実行

石油コンビナートで暴れる機械化獣オクトバルガーは、防衛隊の攻撃をものともせずに猛威を振るっていたが、そこにザウラーズが登場。早速戦闘が開始されるかに見えた。
しかし、金太はザウラーボンバーの撃ち方がわからず、拳一は照準をロックせずにトリケラショットを発射したために味方にも被害を及ぼし、洋二はマグナティラノでゴウザウラーに突進してしまう。
更に、グラントプスがゴウザウラーとマグナティラノに向かって激突するに至っても、拳一、金太、洋二の3人のパイロットは、これからが腕の優劣を決める本番と、より一層、意気込むのだった。
一方、こうしたザウラーロボの様子を空中から見ていたギルターボは、その不可解な動きに戸惑いを覚えずにはいられなかった。 しかし、あれがザウラーズの作戦だというエンジン王の答えを得て、気を取り直したギルターボは、機械化獣巨大結合を行い、オクトバルガーを合体機械化獣へとパワーアップさせると、ザウラーズへの攻撃を開始。
最初の一撃をゴウザウラーに見舞ったオクトバルガーは、続いてマグナティラノとグラントプスを、その触手で捕らえることに成功するが、その2体をも巻き添えにするゴウザウラーのザウラーキャノンによって、 マグナティラノとグラントプスに触手からの脱出を許してしまうのだった。 その結果、マグナティラノはマグナザウラーへ、グラントプスはグランザウラーへ、それぞれ熱血進化を果たし戦いが展開されていくが、ゴウザウラーも含めて3体のザウラーロボが揃っていながら、敵はいつものようにキングゴウザウラーに 合体しようとしない。 実のところ、パイロットが正規の位置に着席していないと、キングゴウザウラーに合体することができないのだが、そんなザウラーズの内情を知らないエンジン王は、自分の求める計算外のパワーを分析できない状況に、次第に苛立ちを覚えていくのだった。
こうした戦いの中、キングゴウザウラーの司令室には、周囲のザウラーズメンバーから普段の勢いのなさを心配される五郎の姿があった。 そこで五郎は、これからは冷静で、落ち着きのある委員長に生まれ変わると決めたこと、皆に迷惑をかけるから、怒ったり爆発したりしないと誓ったことを吐露するのだが、 しかし五郎は、爆発してしまうのは責任感の強さの表れであるため、生まれ変わる必要なんてないと、口々に励まされるのだった。 そして「皆を信じて、自分を信じる」という言葉に諭された五郎は、拳一、金太、洋二に向かって、元の位置に戻るべきだと訴え始める。
ところが、「戦闘中にそんなことはできない」と、3人のパイロットは異口同音に反発。その結果、我慢が限界を超え、今まで鬱積していた怒りの感情が大爆発した五郎は、「無理だぁ!?できねぇ!?やりゃあいいんだよ!!」と叫ぶと、司令室を飛び出して、ゴウザウラーのコクピットに直行、 メインの操縦席に座っていた金太を投げ飛ばすと、そのままゴウザウラーを操縦して、マグナザウラーを押さえ込み、まずは金太をマグナザウラーのコクピットまで連れて行くことに成功する。
この後、同じようにして、洋二をマグナザウラーからグランザウラーに強制移動させた五郎は、最後の1人である拳一を、ゴウザウラーのコクピットに移し替えるべく、グランザウラーをゴウザウラーに向けて動かすと、 タイミングを見計らって、拳一と一緒にジャンプ。果たして、ゴウザウラーのコクピットに着地を決めた五郎は、戦闘中に3人のパイロットを正位置に戻すという無理難題を、一瞬のうちに、しかし見事に実践して見せたのだった。
この光景を見ていたエンジン王は、パイロットを取り替えたことの意味を知るべく、マグナザウラーを捕らえると、中にいるパイロット=金太を取り出さんとする。 この危局に、ザウラーズは教授が新しく考案しプログラムした三位一体の必殺技・スクラムアタックを行うことを決意。この必殺技が発動する形で脱出に成功したマグナザウラーがザウラービッグバスターを見舞うと、 間髪入れずにグランザウラーがザウラーグランドスラッシュで斬り付け、最後にゴウザウラーがザウラーマグマフィニッシュを炸裂させて、見事にスクラムアタックは成功。その結果、オクトバルガーは爆発四散してしまう。
こうして、ザウラーズの新必殺技・スクラムアタックの前に敗退したエンジン王は、パイロットの性格を調べ直してみる必要性を感じながら、月の機械化城へと遁走するのだった。
なお、今回、ザウラーズ内部で競われていた最優秀パイロットの座は、ザウラーズメンバーの満場一致の意見により、3体のザウラーロボ全てを操縦しきって見せた五郎に決定している。

分析

今回の戦いを振り返る上で重要なのは、「リーダーシップ」と「適材適所」の2つのキーワードである。 ザウラーズの各メンバーは、最も適切と思われる役職に割り振られているハズで、それはグランザウラーの原型となったボウエイガーのパイロットに、洋二が最も適しているという理由から選ばれた辺りからも見て取れる。
つまり、拳一、金太、洋二は、ゴウザウラー、マグナザウラー、グランザウラーのパイロットとしての役割こそが最適な配置であり、それを入れ替えてしまえば、場合によってはまともな戦闘を行うことすらできなくなってしまう訳だ。
その適材適所の配置が崩れた今回はザウラーズにとって最大級のピンチであった訳だが、これを救ったのが、五郎のリーダーシップである。
五郎は理想的な委員長であろうとするため、キレてしまう自分を押し殺して、今回の戦いに臨んでいた訳だが、五郎がキレるのは、主にクラス全体が乱れたり、ザウラーズの各員が、自分の役割をしっかりこなしていないとき等に、 全体をまとめる委員長職の立場から、怒りが爆発するパターンが殆どだ。
その逆上しやすい性格を高木先生に咎められていた五郎は、今回、キレることを我慢していたのだが、しかしそのために、拳一たち3人の暴走を止めることができず、パイロットの身勝手から窮境に陥ったザウラーズは、 態勢を整え直すことすら困難な状況に陥ってしまった。 しかし、司令室にいるザウラーズメンバーから「皆を信じて、自分を信じる」と諭されたことから、今まで通りの自分を取り戻した五郎は、鬱積した怒りのために「キレる」を通り越した「爆発」をしたことで、 「戦闘中にコクピットの移動など無理」と言っていた3人のパイロットを、見事に正位置に戻してみせたのである。
「リーダーシップ」とは、口で言うだけではなく自分で実践してみせることを指す。今回のことに関して言えば、五郎が爆発し、リーダーシップを発揮したからこそ、ザウラーズは、最大の危局を脱出することができた訳だ。 そして拳一、金太、洋二が、それぞれゴウザウラー、マグナザウラー、グランザウラーのパイロットであることが最適な配置なのは、教授が今回考案した連携技・スクラムアタックを、一発で決めたところに証明されていると言える。
以上のことから「リーダーシップ」と「適材適所」が、ザウラーズを見る上で重要なポイントだということが分かるのだが、これら2つのキーワードは、機械化帝国にとっても大変重要なポイントなのである。 そこで「リーダーシップ」と「適材適所」の2点を踏まえながら、機械化帝国という組織のここまでを追ってみることにしよう。
機械化帝国が地球に攻め入ったのは、"太陽系機械化計画"を完遂するためであり、その実行責任者として、1993年の現代には当初、歯車王が派遣されていた。 しかしゴウザウラーの度重なる妨害行動の前に、なかなか地球を機械化できずにいた歯車王を見限った機械神は、それ以降、電気王、エンジン王と、王の首を次々とすげ替えた訳だが、戦士としての側面が強い電気王はゴウザウラーとの戦闘を重視し、 野心家のエンジン王はゴウザウラーの強さの秘密を探ろうとするなど、地球を機械化するという機械化帝国本来の目的が、徐々に、しかし確実に軽視されるようになってしまったのである。 "太陽系機械化計画"の遂行という点に限れば、忠誠心の強い歯車王こそが、最適な人選であったし、ゴウザウラーの打倒という点に絞れば、野心家のエンジン王よりも、純粋な戦士である電気王の方が扱いやすかったことは明らかで、 機械神がリーダーシップを発揮して、歯車王や電気王に、適切なアドバイスを送ったり、より強力な力を与えるなりしていれば、また違った展望が開けていただろうし、その場合は地球の機械化も、もっと容易く達成できていたかもしれない。
怒りの限界を超えてなお、お手本を見せた五郎と、怒りの限界を超える度、王の首のすげ替え行為を繰り返した機械神。 自分の思い通りにいかない時に苛立つのは五郎も機械神も同じであるし、自分の言うことを聞かない仲間をまとめるのに、時には怒りや力が必要なことも同じなのだが、 それが適切な方向に向けられ、適切な方法で表現されていたか否かが、分岐点となっており、五郎と機械神の結果の差は、それぞれのリーダーシップの差にあったといえる。
また、今回、「リーダーシップ」を比較した五郎と機械神には、「集団を束ねるリーダー」という共通点がある。 この共通点から五郎と機械神を更に比較すると、五郎は対ヘルジャイガー戦の際に見せた冷静さを評価されて、ザウラーズメンバーから委員長として認められた経緯があったのと同じく、 今回も3体のロボットを見事に操縦して見せたことで、ザウラーズの最優秀パイロットとして認められるに至っている。 そして、五郎がそのように評価されたのは、五郎の言動を、周囲のザウラーズメンバーが見て、委員長や最優秀パイロットの地位に相応しいと判断したからに他ならない。
一方、機械神は機械化帝国に君臨してはいるものの、自分が造り上げた歯車王や電気王はそのプライドを傷付けられたことから、最終的には機械神に対して造反しており、 少なくとも、ゴウザウラーに決戦を挑んだ時点の歯車王や電気王から、機械神を自分の主として認める気持ちを感じることはできない。 特にエンジン王は地球攻略を任される以前から、機械神が宇宙の支配者に相応しくないと思っており、機械化帝国の統治者である機械神には、求心力というものが殆ど見られないのである。
このように、リーダーに位置する人物が周囲から評価され、認められているか否かも、ザウラーズと機械化帝国の大きな違いになっており、 そのことは後に、中島先生を救出するために機械化城に向かったザウラーズと、機械神に謀反を起こしたエンジン王という形で、象徴的に顕れたと言えよう。
もう一つ。五郎は逆上しやすい性格で、怒るとキレるという欠点さえなければ、真面目な委員長であると言えるが、キレるという欠点があるからこそ、ザウラーズをまとめられているといえるのは、今回の戦いを見ても分かる。 真面目なだけの人物では、ザウラーズという個性の集まりをまとめることは不可能に近く、キレるという欠点を持っているからこそ、五郎はザウラーズの委員長たり得ているのだ。
更に言うならば、五郎がキレるというのは、委員長職に真面目に取り組んでいることの裏返しと言えるもので、五郎がザウラーズの委員長職を務めることができているのは、真面目という陽の面と、逆上しやすいという陰の面という、 陰陽両面を内包した人物だからに他ならない。
同じことは機械化帝国のエンジン王にも言え、エンジン王は野心という陰の面を持っていたからこそ、向上心という陽の面を持つことができ、その結果として有能な機械王としての評価と立場を得ることができたのだ。 故に、野心を持たないエンジン王は、機械神にとって、扱いやすい存在だったに違いないが、その場合は、現実とは違って、目立った成果を上げることはできておらず、無能な機械として、とっくの昔に処分対象になっていたかもしれない。
陰陽両面の存在には前回触れたが、今回の五郎とエンジン王を見ても分かる通り、陰陽両面は表裏一体のものであり、この二面性を備えているからこそ、人間も機械も優秀さを発揮できていると言えるし、 改めて人間と機械人が、大差ない存在であることを窺うこともできるのである。
今回の戦闘からは、以上のような分析データを弾き出すことができるのだが、こと戦闘の中身自体に目を向ければ、ザウラーズの拳一、金太、洋二の3人が、ロボット操縦の腕の優劣を決めたい一心で行ったパイロットの取り替え行為が、エンジン王の目をキングゴウザウラーから それを操縦している人間へと向けさせ、これがきっかけとなって、エンジン王が「人間」そのものに注目することになった。
運命の歯車を、大きく動かすことになった一戦だったことだけは、疑う余地がない。

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