第37話「ザウラーズ絶体絶命!」


概要

前回の敗戦時に、ザウラーロボ操縦者の性格を調べ直してみる必要性を感じたエンジン王は、かつて電気王が、ゴウザウラーの行動パターンを100通りに分析したデータを洗い直し、その結果、計算外の力=戦闘パターン101の存在に言及した。
即ち、人間(=ザウラーズ)の能力が機械(=ゴウザウラー)に作用した時に、初めて計算外の力が発揮され、これこそが自分の求めていた宇宙最強の力だと結論づけたエンジン王は、 人間(=ザウラーズ)の能力に関するデータを全て収集し、マイナス要素である心以外のデータを入手した自分達が遂に宇宙最強の力を手に入れたことを確信する。 そして、その宇宙最強の力をゴウザウラーで試すべく、行動を開始したエンジン王は、作戦の第一段階として、自分が地球で使役した機械化獣のデータが入った9個の機械卵を、地球に向けて撃ち込むのだった。
一方その頃、ザウラーズでは、悪性の風邪が流行しており、8人ものメンバーが学校を欠席していた。 そのため、ゴウザウラーは従来の3分の1の力も発揮できない危機的状態に陥っていたが、大量の機械卵が飛来してきたため、ザウラーズはメンバーが全員揃わないまま、出撃を敢行するのだった。
こうしてエンジン王にとっての、キングゴウザウラーに対する必勝の、しかしその運命を大きく左右する戦いが、これから始まろうとしていた。

実行

春風町が攻撃を受けている状況に、出撃を敢行したザウラーズだったが、機械卵から誕生した9体もの再生機械化獣が相手では流石に多勢に無勢であり、なおかつメンバーが勢揃いしていないために、 従来のパワーも発揮できなかったことから、機械化帝国側優勢のまま、戦闘は展開されていた。 このままなら、エンジン王が究極の合体機械化獣を出す前に、決着が付きそうな様相を呈していたが、病欠していたザウラーズの面々が、グランジェットで戦場に到着し、そのメンバー全員が集合すると、一転してザウラーロボの反撃が開始されるのだった。 シールドビームがガラジャークIIを、ティラノファイヤーがオードロンIIを、グランショットがオクトバルガーIIを倒し、更にザウラーズに加勢する防衛隊の攻撃がミッドダロスIIを破壊する。 その後も、ザウラーブレードがウインガルーダIIを両断し、グランフラッシュでケルベローダーIIは爆発。残りのデッカードII、スクワームII、ブランドルIIもトリプルボンバーに粉砕され、9体の再生機械化獣は、残骸の山と化してしまうのだった。
しかし、これも作戦のうちのエンジン王は、9体の再生機械化獣の残骸とギルターボを巨大結合させることで、ここに究極の合体機械化獣・ビーストカイザーを誕生させた。
エンジン王は、ビーストカイザーが、人間(=ザウラーズ)のデータを元に造り上げた、究極の合体機械化獣であることを告げると、宇宙最強の力を自分自身が確かめるため、そしてそれをザウラーズに見せ付けるために攻撃を開始。 その強力なパワーに対抗すべく、ザウラーズはザウラーロボをキングゴウザウラーに合体させるが、エンジン王はキングゴウザウラーを倒して、自分達こそが宇宙最強なのだと証明することを宣言する。
戦闘が開始されるや、優勢のエンジン王は、光線技・ビーストバーンをもって、キングゴウザウラーを追い込むと、更には、多くの合体機械化獣を倒してきたザウラーキングフィニッシュをも、必殺技・ビーストダイナマイトで打ち破って見せるのだった。
そして、その後も圧倒的な強さを見せ続けるビーストカイザーの攻撃の前に、確実にエネルギーを消費していくキングゴウザウラーを遂にダウンさせたエンジン王が、後はとどめを刺せば勝利を手にできるという、まさにそのとき、 春風小学校に残っていた中島先生が、キングゴウザウラー内部のザウラーズ一人一人に向かってエールを送り出した。 そんな中島先生を「目障りなゴミ」と判断したエンジン王は、ギルターボに命じて中島先生を攻撃させる。そのため、高所から落下してしまった中島先生は、しかし危機一髪のところを、突如覚醒したキングゴウザウラーに救われるのだった。 残り少ないキングゴウザウラーのエネルギーを使ってまで、中島先生を助ける「心」を持っているザウラーズを嘲笑うエンジン王はビーストバーンでキングゴウザウラーにとどめを刺しにかかる。 しかし、なおも爆炎の中からキングゴウザウラーが姿を現したため、エンジン王は、正真正銘、最後の一撃となるビーストダイナマイトを繰り出すのだが、 驚くべきことにビーストダイナマイトは、キングゴウザウラーが放った一発の単なるパンチによって粉砕されてしまうのだった。 その直後に、キングゴウザウラーはザウラーキングフィニッシュを発動。この必殺技が迫る中、再度計算をやり直したエンジン王は、ビーストカイザーの最期と見るやキングゴウザウラーの内部に侵入を果たした。 そして拳一達や中島先生と対峙したエンジン王は、自分の考えが間違っていたと語り、宇宙最強の力を生み出すパターン101の正体が、自分がマイナス要素と軽視していた「人間の『心』」だったことに驚嘆すると、それと同時に中島先生を捕縛する。
果たして、これを人質としたところのエンジン王は、中島先生を返してほしければ、月の機械化城までやってくるようザウラーズに言い残すと、ギルターボと共に飛び去っていき、 運命の戦いは地球から月へと舞台を移して、更なる展開を見せることになるのだった。

分析

ゴウザウラーとの戦いを繰り返したエンジン王は、前回の戦いで人間に注目し、その結論として、人間の能力が機械に作用した時に宇宙最強の力が生まれるという回答を弾き出した。 ただ、この人間の能力に注目したエンジン王が、唯一マイナス要素と判断し、入力外のデータとしたのが、人間の心に関するデータであった。 たとえマイナス要素であったとしても、心も人間の能力の一部であるし、それを欠いた時点で宇宙最強の力を得られない可能性もあったハズだが、 今回の戦闘開始前のエンジン王にとっては、心はあくまでも人間が不完全たる理由でしかなかったことが見て取れる。
そんなエンジン王は今回、自身が地球攻略に際して使用した機械化獣を、再び機械卵から誕生させ、その残骸を究極の合体機械化獣・ビーストカイザーの材料としている。
機械卵はゴウザウラーとの戦闘データを元にアップデートが繰り返されていたため、恐らくオードロンが誕生したVer.1に始まり、オクトバルガーが誕生したVer.9までの合計9種類が存在していたハズである。 つまり、ゴウザウラーとの戦闘を繰り返す度、バージョンアップを遂げてきた機械卵、それから誕生し続けたエンジン王の機械化獣は戦いを重ねるごとに進化していたと言っていい。 そしてそれは、この世に誕生した生命が、激しい生き残り競争を繰り返し、数多の生死循環が行われた結果、生物が発展・進化を遂げてきた歴史と、何ら変わらないことなのだ。
こうしたことを頭に置いてエンジン王の機械化獣を見てみると、機械卵という卵から誕生していたことや、その姿が成長を遂げる動植物を模していたことは、 機械でありながら成長することを望んでいたエンジン王の心理が、機械化獣の誕生方法やデザインに表出していたと言える訳で、故に動植物型の機械化獣は、エンジン王を象徴する兵器であったことが窺えるのである。
そんなエンジン王が、究極の合体機械化獣と称したビーストカイザーは、決して看板倒れはしておらず、特にザウラーキングフィニッシュを打ち破ったビーストダイナマイトという必殺技を有していた点は、 明らかにこれまでの機械化獣とは、一線を画していた。 しかし、ここで注目したいのは、宇宙最強の力を手に入れたと思い込んでいるエンジン王に「慢心」と「満足」はなかったかということだ。
ビーストカイザーは、確かに強力無比な機械化獣だが、計算上、キングゴウザウラーに負ける要素はなかっただけに、エンジン王に「慢心」が生じやすい条件を兼ね備えていた機械化獣でもあった。 そして、宇宙最強の力を求め続けていたエンジン王にとって、それを入手できたという思いは「満足」に直結する感情であったハズだ。 成長を続けてきたエンジン王にとって、驕りを生む「慢心」と成長を妨げる「満足」は、キングゴウザウラーや機械神以上の敵であり、これらに陥ってしまった瞬間、エンジン王は堕してしまうと言っても、決して過言ではないのだが、 残念なことに、今回のエンジン王の目が「慢心」と「満足」で曇っていたことは、対キングゴウザウラー戦の内容を見れば一目瞭然だ。
"太陽系機械化計画"完遂のため、地球攻略を任されたエンジン王は、その最大の障害となっていたザウラーロボを、度々苦戦させ、窮地に陥れてきた実績を持っている。 そんなエンジン王が、これまでのゴウザウラー戦の集大成として生み出した、究極の合体機械化獣ビーストカイザー、これを用いた此度の戦いで、エンジン王が優位に立つことは、ある意味当然のことであり、 キングゴウザウラーを楽に倒していたとしても、それも当然の結果だったハズなのだ。 にもかかわらず、今回、ビーストカイザーという勝って当然の戦力を得たエンジン王は、戦いの中でキングゴウザウラーを圧倒できている現実を楽しんでいた趣さえあった。 そしてそこには、自分のパワーレベルを俯瞰できていた、冷静で聡明だったエンジン王の姿を見ることはできないのである。
あまつさえ今回のエンジン王は、人間の能力を元に造ったビーストカイザーで、自分が宇宙最強の存在になったと思い込んでいた。 そして、自分が手に入れた宇宙最強の力がどれほどのものかをキングゴウザウラーで試す、ただそれだけを目的として戦いに臨んでいた訳だが、 こうしたエンジン王の考え方は、自分こそが宇宙最強の存在になったと思い込み、グランザウラーの前に敗れ去ったハイパーデスボルト=電気王の考え方と、何ら変わりはしないのだ。 このように、成長を望んでいたエンジン王が、上には上がいるということを忘れ、成長しなかった電気王と同じ思考に陥ってしまっている事実を見ても、エンジン王の目が曇っていたことは明白だ。
そもそも、何をもってエンジン王は、人間の能力が機械に作用した時に生まれる力が、宇宙最強の力であると結論づけたのか。
これまで、数多くの惑星を機械化してきたエンジン王にとって、地球で相対したザウラーロボほど手応えのある相手は、恐らく初めてだったハズで、そのことはこれまでのエンジン王の言動からも、ある程度は窺える。 だからこそエンジン王はその最強形態であるキングゴウザウラーが持っている計算外の力こそ宇宙最強の力であると見たのだろう。 そしてエンジン王は、キングゴウザウラーの持つ計算外の力に執着していく訳だが、機械神から与えられた猶予内にその強さの秘密を絶対に解き明かそうとするがあまり、エンジン王はいつしか、余裕を失っていたのではないだろうか。 だとしたなら、キングゴウザウラーの強さの秘密に「人間」というヒントを得たエンジン王が、簡単にそれに食い付いたことも頷けるし、その結果として、人間の能力が機械に作用した時に生まれる力こそ、宇宙最強の力であると結論づけたことにも合点がいく。
しかし、以上のような背景があったとしても、何故それが宇宙最強の力だと言い切れるのか。そして、現状の自分と機械神を比較して、間違いなく機械神に勝てると判断した根拠は、一体どこにあったのか。 今回のエンジン王には、宇宙最強の力を手に入れたと「思い込んで」、ビーストカイザーの強さに「満足」し、キングゴウザウラーを圧倒できたことで「慢心」した形跡が見受けられるのだが、 エンジン王の目を曇らせた「慢心」、「満足」、「思い込み」といったことごとくが、エンジン王の軽視していた「心」から生まれるものばかりであったことは、皮肉以外の何物でもなかった。
戦いの果て、究極の合体機械化獣・ビーストカイザーは、ザウラーキングフィニッシュを打ち破った必殺のビーストダイナマイトを、キングゴウザウラー渾身の、しかし「単なるパンチ」に破られ、 ザウラーキングフィニッシュの前に爆散する。 キングゴウザウラーの「単なるパンチ」が、ザウラーキングフィニッシュに勝る威力を秘めたビーストダイナマイトを砕いたのは、そのパンチにザウラーズ全員の心から生まれた思いが乗せられ、魂が込められていたからであろう。
そしてそのパンチは曇っていたエンジン王の目を若干ではあるが開かせたようで、ビーストカイザー敗北の直後、キングゴウザウラーの内部に侵入したエンジン王は、最強の力を生み出すものは、自分が最大の弱点と軽視していた「人間の『心』」であると考えを改めている。 この時、自分の考えが間違っていたことに気づけたことは、エンジン王にとっての幸運だったと言えるのだが、だからこそ、心の本質を見抜こうとする考えを持てなかったことは、不幸極まりなかった。 とは言え、自分が長い間探し求めていた物が、手の届くところにあった以上、その視野が狭くなってしまうのは、ある意味、仕方がないことだったのかもしれない。
最後に。今回のエンジン王は、広い視野を持てない陥穽に落ち込みながらも、中島先生がザウラーズにとって大切な存在であることを見逃さず、それを人質とし、ゴウザウラーを自分達の本拠地たる月の機械化城まで誘き出すという行動に出ている。 こうした手際の良さからは、相手を己のペースに引き込んで、勝利を呼び込む術を知っているエンジン王の優秀さを、改めて感じることができる。

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