第38話「閃光のギルターボ!」


概要

前回の戦闘終了時に、中島先生を拉致したエンジン王。その退却の道程、ギルターボは中島先生に名前を尋ねると、次に「心とは何か?」と問うた。 心が何なのかを解き明かしたいギルターボは、自分に解析不能なデータは無いと言うと、しつこく中島先生に心の正体を問い質す。 しかしそんなギルターボをエンジン王が一喝すると、続けて「心が何か解析する必要はなく、心が生み出す力を入手できさえすれば良い」という考えを述べたため、ギルターボはそれ以上の質問をやめると月の機械化城まで急ぐのだった。
一方、前戦においてキングゴウザウラーのエネルギーを90%消費させてしまったザウラーズ。残りのエネルギーでは月まで行って戦うことはできないため、キングゴウザウラーのエネルギーが回復するのをザウラーズは教室に待機しながら待っていた。 ところが、そんなザウラーズのいる教室に武田防衛隊長官、先生方、拳一の両親などの大人達が入ってくる。そして大人達は、教室にいるザウラーズ全員からザウラーブレスを取り上げてしまうのだった。
大人達の言い分は、月にある敵の基地まで乗り込むなど無茶だというものであった。 中島先生のことが気がかりなザウラーズは大人達の言うことに反発。しかしその立場から、どうしてもザウラーズを月に行かせたくはない大人達は、ザウラーズを教室に閉じ込めてしまうのだった。
果たして、キングゴウザウラーのエネルギーが100%回復しながらも、発進できないザウラーズは、しかし北島博子をはじめとした6年1組の助力でザウラーブレスを取り戻すと、中島先生を助けるために月の機械化城に向けて出動する。
こうして月で待ち受けるエンジン王、月に向かうザウラーズ、そしてこれらに機械神が絡む形で、事態は進んでいくのだった。

実行

月でザウラーズを待つエンジン王とギルターボ。中島先生を人質にすれば間違いなくザウラーズがやってくると読むエンジン王は、それが人間の浅はかさだと見下しつつも、 そんな彼らが操縦するキングゴウザウラーが生み出す心の力が、エンジン王を機械化帝国はおろか全宇宙の支配者にするという野心を吐露するのだった。
そんなエンジン王に対してギルターボは心の解析の件について切り出すが、エンジン王は「必要ない」の一点張りでギルターボの主張を容れようとはしない。 それでも、心の力が、機械化帝国においては触れてはならない「禁断のパワー」だと知るギルターボは、エンジン王のことを心配するが故に、一言申し上げんとするのだが、 「お前は私に従えば良い」とエンジン王から会話を拒絶されてしまったため、ギルターボは自分を押し殺すと、その言葉を呑み込むのだった。
それから程なくして、エンジン王の前に機械神が現れる。エンジン王は、機械神への忠誠の証に、ゴウザウラーの首を捧げると、誓いの言葉を口にするが、そんなエンジン王に飛んだのは、機械神の怒りの一言だった。 エンジン王の謀反を早々に見抜いていた機械神はエンジン王に「己を知れ」と言うと、エンジン王が心の力を諦めるなら辺境宇宙への左遷という処分で許そうとする。 だが、そんな機械神に対して、エンジン王はその本性を露にすると、「己を知るのは機械神の方」であるとし、更には、全宇宙の支配者に相応しいのは機械神ではなく、心の力を手に入れた自分であると言い放つ。 ここに、完全に袂を分かったエンジン王と機械神は、戦闘に突入。その一騎打ちの果てに、機械神のダミーオブジェを破壊したエンジン王は、全宇宙の頂点を極めるのは自分であると、高らかに宣言する。
こうして、機械神と完全に敵対したエンジン王を前に、本当に心が生み出す力をコントロールできるのかという、漠然とした不安を覚えるギルターボは、それがマイナスのパワーになるかもしれないと危惧するのだが、エンジン王は、そんなギルターボの不安を、歯牙にもかけなかった。 しかし、ここで中島先生がギルターボに同調、エンジン王に、「心はお前が思うようなものじゃない。お前には使えないよ」と、反対意見を口にしたため、自分の考え方を否定されたエンジン王は憤ると剣から電撃を放ち、それを中島先生に浴びせ始めた。
こうしたエンジン王の姿を見つめるギルターボは、口を挟む形で攻撃を止めさせると、もっと冷静に考えてほしいと要望するが、しかしエンジン王は「自分は常に冷静だ」と返答すると、ギルターボに剣を投げ返し、その場を去っていこうとする。 自分の言葉に耳を傾けてもらえない現状を憂うギルターボは、中島先生に「こんな時、人間ならどうするんだ?」と問いかけるが、その答えを聞く前に、機械化城の警報がザウラーズの接近を告げたため、ギルターボはエンジン王と共に、臨戦態勢に入るのだった。
それから間もなく、キングゴウザウラーが機械化城内部に突入。そのため、これを広間で迎え撃つエンジン王搭乗のギルターボは、キングゴウザウラーを逃がさないためにも、機械卵を発射して、機械化城を機械化獣メガキャッスルへと変貌させると、 その内部で戦闘を開始する。機械化獣の体内に蠢く触手を用いてキングゴウザウラーを拘束し、自由の利かなくなったところを徹底的に痛めつけ、追い詰めることで、機械化獣に心の力を充填することを、エンジン王は画策していたのだった。
果たして、ギルターボの攻撃の煽りを受けて、中島先生が傷付き、この事態に怒りを覚えたザウラーズ操縦のキングゴウザウラーから、エンジン王待望の心の力が流れ出し始める。 機械化獣を心の力で満たさんとするエンジン王は、人間の心の力が機械神を倒す、自分が神になるのだと、その本心を語りながらキングゴウザウラーに更なる攻撃を加えるが、次の瞬間、キングゴウザウラーは各ザウラーロボに分離、 機械化獣の触手による拘束状態から脱出すると、中島先生救出に向けての行動を開始してくるのだった。
襲い来る機械化獣の触手を、その武器で排除しながら、中島先生まで向かって行く、マッハプテラとサンダーブラキオ。そしてこれをグラントプスとマグナティラノがギルターボを足止めする形で援護する。 中島先生を渡してはならないとするエンジン王だったが、ギルターボはグランショットの直撃に傷付き、その間にしのぶをはじめとしたサンダーブラキオのクルーが中島先生を救出、 目的を達成したザウラーズは再合体を果たしたキングゴウザウラーのキングブレードにより、機械化城内部から脱出することに成功するのだった。
しかし、一方のエンジン王も、ギルターボが胸部に大ダメージを負うという事態に陥りながらも、機械化獣の体内に心の力を充填するという目的を達成。 そのためエンジン王は、機械神を倒す前に心の力がどれほど強大なものかを、キングゴウザウラーで試すことを宣言すると、自ら機械化獣に巨大結合するのだった。 しかし次の瞬間、エンジン王の渇望していた心の力は完全に消失してしまう。全く想定外の事態を受けて困惑するエンジン王に、中島先生は「それが心」だと答えると、 続けて「ある時は熱く、ある時は優しく穏やか。だが、何故燃える?何故穏やかになる?機械のお前にそれが分かるのか?」と問いかけ、最後に「心の力を吸収することなどできないんだ」と断言するのだった。
そんな中島先生の言葉に、「吸収できぬエネルギーなどない」と反論するエンジン王は、再度キングゴウザウラーの心の力を得ようと、機械化獣で攻撃を仕掛けていく。 戦闘の中、拳一から「お前みたいな奴に心が分かってたまるか」と、重ねて自分の考えを否定されて憤然とするエンジン王が、「私は心の力をもって機械神を…」と言いかけたその時、宇宙の彼方から降ってきた光が機械化獣を包むと、凄まじい衝撃が発生。 この衝撃によってキングゴウザウラーは吹き飛び、機械化獣はその機能を完全に停止、思わぬ事態の急変に、ザウラーズとエンジン王の双方が困惑の色を隠せないでいた。
すると次の瞬間、機械神の声が響き渡り、エンジン王を始末するための機械神の攻撃が、機械化獣に結合しているエンジン王めがけて発射されたのだった。 この攻撃を食らってはひとたまりも無いことを理解したエンジン王は、脱出を図るも、結合状態からの分離に手間取ってしまい、エンジン王が助かる道は閉ざされたかに見えた。 しかし絶体絶命のエンジン王は、その危機を察知したかのように動き出していたギルターボによって救われ、九死に一生を得る。 だがエンジン王を助けたギルターボは、その身代わりとなる形で機械神の攻撃を受けて倒れてしまうのだった。 自分を助けるためにギルターボが出した驚異的な力に驚くエンジン王。そんなエンジン王にギルターボは「ファーザー、今、心が解析できたよ。心とは…、心とは…」と言いかけて、しかしその答えを伝えきる前に事切れてしまう。
ギルターボの死に、怒りと悲しみを覚えるエンジン王は、ギルターボが最後に残した、自分の専用剣を手に取ると、その切っ先をキングゴウザウラー、続いて機械神に向ける。 ギルターボの敵討ちにと機械神に勝負を挑まんとするエンジン王。そして、そんなエンジン王の「姿を現せ」という言葉に応えるかのように、不敵に顕現する機械神。
かくしてギルターボの死を発端として、戦いはエンジン王、機械神、ザウラーズの三つ巴戦へと発展していくのだった。

分析

今回のキーワードになるのは、ずばり「心」である。
心は機械化帝国の中では、絶対に触れてはならないタブーとして扱われてきたものであり、機械神以外の構成員にとっては、未知なる代物であった。 その中の1人、エンジン王は、ゴウザウラーとの戦いの中で、宇宙最強の力を生み出すものが、心であると読んだのだが、エンジン王が、心に宇宙最強の力を求めたのは、機械化帝国の中でタブーとされてきた背景も、無関係ではあるまい。
機械神にとって心は不完全な生命体の象徴であり、自分達機械が心に触れた結果、心を持つ不完全な生命体と同質の存在に堕してしまうことを恐れたがために、心を機械化帝国のタブーとしたものと思われる。 しかし、ゴウザウラーの心の力の前に敗れ続けてきたエンジン王はそうは思わず、機械化帝国の中で心がタブーとされているのは、それが機械神以上の存在になれる、強大なエネルギーであるためだと思ったのではないだろうか。
こうした機械化帝国の中で唯一、冷静に心というものを見つめ、その本質を理解しようと努めていたのがギルターボであった。
だからこそギルターボは完全に解析できていない心のデータを使用する危険性を危ぶみ、それによってエンジン王が危険に晒される可能性があることも危惧していたのだが、宇宙最強の心の力を前にして、盲目的になっていたエンジン王には、 もはやギルターボの諌言も届かなくなってしまっていた。 つまりエンジン王は、実際には心を持っているにもかかわらず、ゴウザウラーの持つ心の力に目が眩んだ結果、自分を心配してくれているギルターボの言葉が心に響かない、精神的に不健康な状態に陥ってしまっているのである。
これは、一方のザウラーズとは対照的な状態だといえる。 ザウラーズの一部メンバーは、悪性の風邪をひき、咳や発熱によって弱っていたハズだが、中島先生を救出するために、月の機械化城まで乗り込まんとした際には、全員が回復していたように見える。 戦闘前に、薬を服用してから学校に駆けつけてきていたとは思うが、あまりにも回復が速すぎるのである。 しかし本来、人間には、自然治癒力が備わっており、その体内には、NK(ナチュラルキラー)細胞という、侵入してきたウィルスを退治する細胞が存在している。そしてこの細胞は、その人の気持ち次第で活発化する代物なのである。
つまり、風邪をひいていたザウラーズメンバーは、中島先生がエンジン王に拉致されるという非常事態を受けて、それを心配する気持ちが体の防御反応に作用し、細胞レベルの働きで風邪を早く治させたのだと推測される。 もちろん、実際には風邪が完治するまで更なる時間を要していたのだろうが、ビーストカイザー戦を行った後、驚異的なスピードで風邪を回復させることができたのは、 数々の戦闘を経験し、強い精神力を獲得したザウラーズをして初めて成し得た業だったと言える。風邪をひいていたザウラーズは、心を持っているからこそ、肉体的な不健康状態を脱することができた訳だ。
心にはプラス面とマイナス面の陰陽両面が存在しているが、エンジン王は心がマイナスに作用して不健康になり、ザウラーズは心がプラスに作用する形で健康になった。 両者とも、「病は気から」を地で行ったのだが、その行き着く先は真逆のものとなってしまった。
また今回、エンジン王は遂に「自分が神となる」という、究極的な野望を口にしている。エンジン王は、機械人という人でありながら、神になりたかったのである。 そのためにエンジン王は、人から神への「成長」を望んでいた訳で、エンジン王の繰り出す機械化獣が成長する動植物の形を模していたのは、やはりエンジン王の成長したいという深層心理が表れた結果であったのだろう。 そして、そんなエンジン王が率いた機械化獣のモチーフを注意して見れば、エンジン王が如何に神になりたがっていたかということも明解となるのである。以下の表をご覧頂こう。

No.機械化獣モチーフ備考
1
オードロン食人植物 
2
ガラジャークナーガ 
3
ミッドダロスミノタウロス 
4
デッカードケンタウロス結合前はユニコーン
5
スクワーム大百足 
6
ウインガルーダガルーダ 
7
ケルベローダーケルベロス結合前は二つ首
8
ブランドルベルゼバブ 
9
オクトバルガークラーケン 
10
ビーストカイザースフィンクス 
11
メガキャッスルテュポーン 

見ての通り、エンジン王の機械化獣は、ただ単に動植物を模していたのではなく、人間達の間で語り継がれている神話や伝説等に登場する怪物をモチーフにしているのである。 エンジン王の目指していた神は、支配者としての神であった。故に、実在する動物は無論、神話や伝説の中に生き続ける怪物をも支配してこそ神という考えをエンジン王が持っていたとしても、何ら不思議はない。 こうしたことからも、エンジン王が「成長すること」以外に「神になること」を望んでいた事実を、ひしひしと感じることができよう。
そんなエンジン王は機械化獣メガキャッスルに心の力を充填させた後、自ら巨大結合し、その心の力を使おうとするのだが、心の力はその瞬間、完全に消失してしまっている。 それはそうだろう。何故なら心の力とは、感情の動きであるため、自分の内から生み出して、初めて自分の力になる訳で、たとえ他人の感情が凄い力を出したとしても、それを自分の力には出来ないものだからだ。
恐らくエンジン王は、これまでの機械化帝国に対する貢献の中で、吸収できるエネルギーしか見てこなかったのではないだろうか。 だからエンジン王の経験からすれば、心の力を吸収できないハズはないと感じられてしまうのだが、視野が狭くなっているエンジン王は自身の経験から来る固定観念で心を捉えているため、 中島先生の問いかけも、ギルターボのそれと同じく、エンジン王の心には、届かなくなっているのである。
果たしてエンジン王は、機械神から無能な機械として処分されかけるが、それを救ったのは、心とは何かを理解しようと努め続け、遂にその力を使うことができたギルターボであった。
ギルターボはエンジン王が搭乗していない状態の時、会話はできても動くことはできない構造になっているハズである。 そのギルターボがエンジン王の危機を察知したかのように勝手に動き出し、自らの命と引き替えにエンジン王を救ったのだ。これは製作者にして父であるエンジン王にとっても、全く予想外の出来事だったに違いない。
かくして、自らの野望を達成するために、心の力を手に入れようとしたエンジン王は、その結果、愛息ギルターボを失うことになってしまった。 しかしエンジン王は、中島先生とザウラーズによって、ギルターボ共々、決して不幸ではない最期を迎えることになるのである。

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