第39話「最終バトル!機械化城」


概要

謀反を起こしたエンジン王を、無能な機械と判断した機械神は、その抹殺を試みた際、エンジン王を庇ったギルターボを破壊した。 これに怒りと悲しみを覚えるエンジン王に勝負を挑まれた機械神は、自分に代わって機械化帝国の支配を企んだ罪と、決して触れてはならない心の力に触れた罪で、エンジン王の処刑を改めて宣言すると、エンジン王に攻撃を加える。 この攻撃でギルターボの亡骸を破壊されたエンジン王は、その怒りの感情で巨大化し、機械神に向かっていくが、エンジン王を処刑にやってきた機械神は、そのエネルギーのほんの一部が姿を変えた幻影だった。 そして機械神は、このエネルギーを機械化獣メガキャッスルと化した機械化城の動力炉に融合させてこれを操り、最終的には自爆させることで、その際に発生するプラズマエネルギーの威力を利用、 邪魔者であるキングゴウザウラーと、エンジン王を抹消しつつ、同時に、心を持つ人間が多く生息する地球を滅亡させるという、最も効率の良い手段を選択するのだった。
一方、機械神を討ち取ることが、叶わぬ夢だと悟ったエンジン王は、月面からの脱出を試みていたキングゴウザウラーに矛先を移し、せめてその首をギルターボに捧げんとする。
こうして機械神の陰謀渦巻く機械化城を舞台に、エンジン王の運命の戦いは、そのフィナーレの時を迎えようとしていた。

実行

ギルターボの亡骸が見上げる宇宙空間に、巨大化したエンジン王とキングゴウザウラーの激しい戦いが展開されていた。 その勝負は、ほぼ互角であり、このまま戦いを続ければ、地球に帰れなくなることを危惧したザウラーズが、一気に勝負を決めようとザウラーキングフィニッシュを発動させんとしたその時、 機能を停止していた機械化城が機械神に操られる形で動き出し、地球を滅亡させる自爆を行うために浮上する。 そのため、機械化城の中心部でエネルギーが大きくなっていることをザウラーズの教授に知られ、その目的が機械化城の爆発を利用した地球滅亡にあることを悟られてしまう機械神だったが、 機械化城の強度に加え、エンジン王とキングゴウザウラーが争っているという状況もあり、機械神にとっては、いささかの問題もないというのが現実であった。
機械化城の爆発まで、あと20分と迫る中、キングゴウザウラーを倒せるなら、命などいらないと言い切るエンジン王は、キングゴウザウラーとの戦いを続行。 そして、凄まじい戦闘の中で、両者ダウンの状態から先に立ち上がったエンジン王が、キングゴウザウラーにとどめの一撃を加えんとしたその時、ギルターボがエンジン王を庇って死んだことを知った中島先生が宇宙服を着てエンジン王の前に飛び出すと、 地球を滅亡から救うため、機械化城を破壊しなければならない子供達の邪魔をしないでくれと嘆願するのだった。 そんな中島先生に、地球が滅亡してしまっても自分の知ったことではなく、キングゴウザウラーが道連れなら自分が死んでも本望だと言い放つエンジン王は、中島先生からギルターボが自分の命と引き替えに守った命を粗末にするなと言い返されたことに苛立ち、 その手で中島先生を掴むと「小うるさい虫けら」として握り潰さんとする。 しかし中島先生は、それでエンジン王の気が晴れるなら、そうしても構わず、その代わりに、もう子供達には手出ししないでくれと願い、更には「あの子たちのためなら私は喜んでこの命を投げ出そう。ギルターボのように!!」と、その覚悟を口にしたのだった。
言葉の応酬の中で、ギルターボを比較対象とした中島先生に苛立ちを覚えるエンジン王は、「人間ごときが私のギルターボと同じだと!身の程を知れ!!」と怒ると、中島先生を握る拳に力を入れ始める。 人間を下等な存在と見下す機械人のエンジン王は、中島先生にギルターボの真似などできないと踏んでいたが、しかし中島先生は本当に死にそうになっても、エンジン王の考えるように、泣いて許しを請おうとはしてこない。 何故、他人のためにそこまでするのか、不思議に思ったエンジン王は、「お前は死ぬのが怖くないのか?」と中島先生に尋ねる。 果たして、それに対する答えは「怖いさ…。しかし、それを乗り越えて大切な人を守ろうとするとき、人の心は限りなく強くなれるんだ!」というものであり、それこそがエンジン王の求め続けた心の力の正体であった。
衝撃を受け、中島先生を手放すエンジン王。 そして「ギルターボは復讐など望んではいない。お前に生きて欲しいんだ!!」という中島先生の言葉を受けたエンジン王は、ギルターボの亡骸にそうなのかと問いかける。 すると、その問いに対して、物言わぬギルターボの首は、しかしその意思が残っているかのように首を縦に振り、その目から「涙」を流したのだった。
この「回答」に大きなショックを受け、手に握っていた剣を落としたエンジン王は、ギルターボが心を理解したことを悟り、自分に対するやり場のない感情を拳に込めて、ひたすら地面を打ち付けると、遂には戦意を喪失。 キングゴウザウラーと戦うことをやめたエンジン王は、ギルターボの亡骸の前で、ただただ悲しみに暮れるのであった。
こうして、エンジン王が戦意を喪失した後、キングゴウザウラーは地球を救うため、今度は機械化城と交戦する。しかし機械化城が、仮に破壊できたとしても、地球がプラズマの影響から逃れられないデッドラインまで進むに至ったため、 ザウラーズはキングゴウザウラーの推進力を全開にし、機械化城が爆発するまで押し留め、爆発直前に脱出する作戦に打って出る。 そしてこの作戦は、キングゴウザウラーが機械化城と戦っていることを、機械化城のスピードダウンという形で、意気消沈するエンジン王に知らせるのだった。
キングゴウザウラーだけでは機械化城が止められないことを分かり切っているエンジン王は、何故ザウラーズができもしないことに命を賭けるのか疑問に思う。 そして、中島先生の言葉を思い出し、ザウラーズがギルターボと同じく、自らの命を賭けて大切なものを守ろうとしている姿を目の当たりにしたことで、遂に「心」を理解したエンジン王は、 ザウラーズと共闘する道を選び、機械神に対して改めて立ち向かっていくのだった。
だが、戦いの中でエンジン王は、処刑寸前のピンチに陥ってしまい、それを救おうとしたキングゴウザウラーもまた、機械化城の攻撃を受けてしまう。 自分を助けようとしたキングゴウザウラーが機械神からダメージを受けたことで、改めて機械神への怒りを覚えるエンジン王。 すると次の瞬間、突如、エンジン王の体が眩い光を放ち、それで己が身を包んだエンジン王は、光の巨人へと姿を変えたのだった。 そしてエンジン王は地球がプラズマの影響を受けないところまで機械化城を押し返すと、ザウラーズに自分ごと機械化城を貫くようにと訴えるが、流石のザウラーズも、エンジン王を犠牲にする戦法に、躊躇いを覚えてしまう。
そこでエンジン王は、キングブレードのフルパワーをもってしても機械化城を一撃で破壊することはできないが、そこに自分のエンジンのエネルギーを上乗せすれば、必ず破壊できると、ザウラーズを説得するのだった。 様々な葛藤の中、その気持ちを汲んで、エンジン王ごと機械化城を沈める決意をしたザウラーズは、キングブレード・フルパワーを使用。 キングブレードから放たれたエネルギーの奔流がエンジン王と機械化城のコアを貫通するが、それと同時に、光の巨人と化していたエンジン王は、そのエネルギーを燃え尽きさせて灰化し、 巨人体の軸となっていたエンジン王の本体は、崩壊しながらギルターボの眼前に落下するのだった。 そして瀕死のエンジン王は、ギルターボの亡骸に自分を許してくれるかと訊きながらその身を寄せて行き、そんなエンジン王を爆発の振動の影響で落下したギルターボの掌が迎え入れるが、その中でエンジン王は息絶えてしまう。 その直後に機械化城は大爆発と共に消滅。地球を滅亡から救ったザウラーズは、しかしギルターボの掌と、その中で動かないエンジン王の亡骸を目の当たりにすると、その死に対して涙を流すのだった。
こうして、運命の戦いは終わりを告げた。しかし地球に帰還しようとするザウラーズの眼に映ったのは、完全に機械化された、地球の姿であった。 全く予想外の事態に驚愕するザウラーズは、地球への帰路を急ぐのだった。

分析

全宇宙の頂点に君臨し、自らが神になろうという野心を抱いていたエンジン王は、その野望の中で愛息ギルターボを失うという悲劇に直面してしまった。 そのためエンジン王は、ギルターボの仇である機械神に挑んでいったのだが、それを倒すことは叶わなかったため、代わりにキングゴウザウラーを討ち取ることで、ギルターボの行為に報いようとした訳だ。 しかしキングゴウザウラーは確かに敵ではあるが、それは「機械化帝国と機械神にとっての敵」であり、「ギルターボを破壊されたエンジン王にとっての敵」ではなかったハズだ。 むしろ、エンジン王がキングゴウザウラーを倒したり、機械化城の爆発で共に死んだりすれば、機械神が喜ぶだけであり、到底ギルターボのためにはなり得ない。 エンジン王が自分にできることで、真にギルターボのためになることは、機械神の思い通りにさせないことであるハズだが、心の力に対する執着から視野を狭めていたエンジン王が、 今度はギルターボを失った怒りから、更にその視野を狭め、尋常ならざる精神状態に落ち込んでいたことは、エンジン王の行動にも顕著に表れていたと言える。
そんなエンジン王の目を開かせたのは、中島先生である。中島先生はキングゴウザウラーを庇うようにエンジン王の前に飛び出すと、その命と引き替えにザウラーズの子供達を守ろうとしたのだが、 それはギルターボが、己の身を挺してエンジン王を助けたことと、同質の行為でもあった。 こうした中島先生の行動を受けて、不完全な人間がギルターボの真似などできないと思っていたエンジン王は、しかし握り潰されそうになっても、命乞いをしない中島先生に、死ぬことが怖くないのかという疑問を抱く。 そして、中島先生の口から発せられた言葉で、エンジン王は遂に、「心」とは何かを知るのだが、心の力への執着や逆上した怒りでその視野を狭め、感性が薄くなっていたエンジン王が、 命がけの中島先生から「何故、他人のためにそこまでするのか?」という疑問を感じた瞬間、ようやくエンジン王の視野は開けたと言っていい。 事実、エンジン王はそれ以降、キングゴウザウラーの姿に、ギルターボの姿を重ね合わせて、「心」とは何かを理解するに至ったのだから。そしてそこには、物事を理解しようと努めるエンジン王本来の姿があったハズだ。
そして特筆に値するのは、エンジン王が理解した「心」の力を、本人が知らず知らずのうちに使っていたことであろう。 一口に心と言っても、様々な心がある。エンジン王は機械神に取って代わる野心を持っていたし、そのために成長しようとした向上心やゴウザウラーの強さの秘密を知ろうとした探究心もエンジン王は持ち合わせていた。
しかし一般的に「心ある」というような表現をされるものこそが「心」であるとしたならば、困っている人を助けたりする人道に反しない精神こそが「心」なのであろうし、エンジン王が教わった「心」も、まさしくこれだと言っていい。 だからこそエンジン王はギルターボの仇である機械神の思い通りにさせないため、機械神への反逆という初心に返ることを口実にして、キングゴウザウラーと共闘する道を選んだのだ。
そしてエンジン王は、最終局面で心の力を最大限に発動させ、自らの体を軸に巨大な光の巨人へと変化、機械化城を押し返して、地球をプラズマの影響圏外へと出すことに成功している。
この時、エンジン王は、キングブレードのフルパワーでも機械化城を一撃で破壊できないことと、それに自分のエンジンのエネルギーを上乗せさせれば必ず破壊できることを理解しており、 ザウラーズに自分共々機械化城を貫くように訴えているが、ずっとキングゴウザウラーのことを研究し続け、自らの最強の肉体となるハズであった、機械化獣メガキャッスルを造り上げたエンジン王本人の分析だけに、 その計算は信頼に値するものだったと言えるだろう。 そしてその通り、フルパワー状態のキングブレードから放たれたエネルギーの奔流に、エンジン王のエンジンのエネルギーが上乗せされた結果、機械化城は、一撃で破壊されることになった。
この後、エンジン王は息子ギルターボの亡骸に、自分を許してくれるかと問いかけているが、その亡骸に、ギルターボの残留思念があるのか、掌がエンジン王を受け入れるかのような形で落下し、エンジン王は、その掌の中で息絶えることになる。 ギルターボの亡骸が、エンジン王を受け入れたのは、自分の命と引き替えに、ザウラーズと地球の生命を守るというエンジン王の最後の行動が、決して間違いではなかったからであろう。 これがもし、キングゴウザウラーと戦い、機械化城の爆発で落命するという展開を迎えていたら、エンジン王は、ギルターボに許されなかったハズだ。何故なら、それこそギルターボが命を賭けて救った命を、エンジン王が粗末にすることになるからだ。 機械人と人間が大差ない存在であることは、これまでの分析の中でも、度々触れてきたが、命がたった一つしかなく、それが何よりも大切なものであることもまた、共通点なのである。
またエンジン王は、自分が最期の瞬間、ずっと追い求めていた心の力を使っていたことに気付いていなかったが、それはエンジン王が、「心とは、命懸けで大切な人を守ろうとするときに、限りなく強い力を発揮するものである」と教えられたことに起因している。エンジン王にとっては、既に破壊されてしまったギルターボこそが、唯一無二の大切な存在であったのだから。
また、今般、「心とは何か」を教わったエンジン王も、機械化帝国の一員であった以上、自分が既に「心そのもの」を持っていようなどとは、考えもしなかったに違いない。
だが、エンジン王が最後の最後に「心の力」を使ったことは、紛れもない事実である。 そしてそれは、機械神を許せないと思う気持ちだけでは、エンジン王に使うことができない力でもあったハズだ。
心の力は紆余曲折を経たエンジン王の中に、損得を超えて、危機に陥っている者を見殺しには出来ないという人間らしい心が芽生えた結果、ザウラーズのためにと はじめて発現させることができた力だった。このように見るべきなのではないだろうか。
光の巨人と化したエンジン王は、心を持つ者が命を賭けて戦う強さが、象徴的に顕現した姿であったのだろうし、そんなエンジン王の死にザウラーズが流した涙は、機械人と人間の垣根を越えて彼らが心通わせることができた証だったに違いない。
心を持つ者同士でなければ、心通わせることなど、決してできなかったハズなのだ。
そしてもう一つ、心の力を求めていたエンジン王は、自分が神になることをも夢見ていたが、これも心と同様、一口に神と言っても様々な神が存在する。 当初エンジン王が目指していたのは、全宇宙の頂点に君臨する支配者としての神であった。 しかしエンジン王は「心」を理解し、光の巨人と化して、機械化城という悪魔から、地球を守り切った。そう、最後の瞬間、エンジン王は、地球を守る「守護神」という神になっていたのである。
そして、「地球を守る光の守護神」という点に注目すれば、エンジン王がエルドランと同質の存在となっていたことにも気が付く。 エルドランの正体は不明ではあるものの、様々な状況から総合的に判断すれば、神に近い存在であろうし、それと同質の存在と化していたならば、最終的にエンジン王が神になれたという見方をしても、決して間違いではないハズだ。
更に言うならば、中島先生の「神様。どうか、どうかこの子達をお守り下さい」という祈りに応えるかのように、エンジン王は、キングゴウザウラーの救援に出現しているのだ。 「天の助け」という言葉もあるように困っている人を助ける者が神だとする考え方から見れば、窮地に陥ったザウラーズを助けたエンジン王は、紛うことなき神だったと言えよう。
神になろうと思い、心の力を求めていたエンジン王は、最後の最後に、渇望していた心の力を使い、地球を守って守護神という神になった。 エンジン王本人は、自分の願いが叶ったことを知らないだろうが、だからといってザウラーズと心を通わせ、機械神に一泡吹かせ、ギルターボに許されたエンジン王が、不幸な最後を迎えたとは、全く思えない。 そして、そう感じられるのは、エンジン王が、人生の終わりの時を、完全燃焼して迎えたからだろう。 歯車王や電気王のように、組織の命令の中で、志半ばのうちに無念の死を遂げたのではなく、エンジン王は、自分の意思で選んだ道の果てに、知らず知らずのうちにではあるものの、自分の願いを全て叶えて、その人生を終えたのである。 エンジン王の最期には、その生き様が全て集約されており、そんな人生の終幕を迎えられたエンジン王が不幸なハズはないではないか。
かくして、違う形ではあっただろうが、エンジン王は野望の果てに自分の夢を叶えることができた。しかし、その夢を完全に叶えることは、ザウラーズが機械化された地球を元の姿に戻せるかどうかに託されてもいる。 そしてザウラーズが地球を救えたその時に、エンジン王とギルターボの心と魂が真に救済されることになるのであるが、それは即ち原子王の敗北と、それによる機械化帝国の組織力低下を意味する。
エンジン王の地球派遣の余波が思わぬ形で機械化帝国に影響してくる訳だが、電気王敗北時には決して間違いではなかったエンジン王招聘という機械神の判断が、結果的に機械化帝国そのものにとってマイナスに働いてしまったのであれば、 王の首をすげ替え続けるという負の連鎖を断ち切らなかった機械神の姿勢こそが、機械化帝国が敗れ去った真の理由といえるのかもしれない。

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