第40話「恐竜時代への旅立ち」


概要

月の機械化城での死闘を終えたザウラーズは、完全に機械化された地球を目の当たりにしたため、急ぎ地球へと帰還した。 果たして地球に降り立ったザウラーズは、確かに地球が機械化された事実をその目で確認。 そして人間の造ったものの痕跡が見られず、まるではじめから人間などいなかったかのようだという教授の言葉に不安になりながらも家族を探したザウラーズは、 半径6000キロにも及ぶ広範囲を捜索したにもかかわらず、人間の姿はおろか、生き物の影さえ確認することはできなかった。
その結果、自分達が機械化帝国に敗北した事実を悟って自暴自棄になり、喧嘩を始めるザウラーズメンバー。 だが、中島先生の言葉から平静を取り戻したザウラーズが絶望の中に希望を見出した途端、彼らの前に春風小学校が出現した。 ところが、その春風小学校から出てくる先生や生徒達には全く触れることができず、自分達からの呼びかけにも全く反応がなかったことから困惑するザウラーズ。 すると次の瞬間、ザウラーズ全員のザウラーブレスが眩い光を放ち、エルドランからSOSのメッセージが入った。 エルドラン曰く、自分が守っていた恐竜時代に強力な敵が現れたため、このままでは地球の歴史が変わってしまうというのである。
このエルドランの言葉から、恐竜時代を守っていたエルドランが機械化帝国に敗れたのだとしたら、その時点で地球は機械化され、恐竜時代から先は、正常な歴史とは異なる「パラレルワールド」になってしまうことに気付く教授。 更に、機械化城の爆発で生じた時空の穴が恐竜時代に繋がり、何らかの形でエルドランに不利な状況を作ってしまったのだろうと予測した教授は、エルドランの通信から察するに、エルドランはまだ完全に敗れたわけではなく、 現在の地球は、2つの異なった歴史の狭間を揺れ動いていること、エルドランの勝敗次第で、地球が正常な歴史を取り戻すか、機械化されてしまうかが決まること、幻のような春風小学校は、混乱した地球の歴史が生み出した現象であることをザウラーズメンバーに説明する。
結果して、エルドランを助けること意外に道がないザウラーズは、時空の穴を通ってエルドランの守護する恐竜時代まで、その救援に向かおうとするが、しかしキングゴウザウラーは、時空の穴の内部で時空の嵐に襲われ、 ゴウザウラー、マグナザウラー、グランザウラーに強制分離してしまい、各ザウラーロボは離ればなれになりながら、恐竜時代へとたどり着いたのだった。
こうして、恐竜時代を舞台として、ザウラーズと機械化帝国の、地球の未来を賭けた戦いが始まった。

実行

恐竜時代に到着したザウラーズ・ゴウザウラーのクルーはエルドランの捜索を開始。それと同時に、離ればなれになってしまったマグナザウラーの金太や、グランザウラーの洋二との連絡を試みるも、機械化された地表から強力な電磁波が出ており、これが通信を妨害し、お互いがかなり接近した状態でなければ通信は不可能という、機械化帝国にとっては好都合な状況となっていた。
やがてゴウザウラー組は、湖で恐竜マイアサウラの群れに遭遇するが、その群れを機械化獣ボルトロボの軍団が襲撃。このためゴウザウラーのコアロボとボルトロボ軍団の間で戦闘が行われるが、 量産型ゆえ、戦闘力の低いボルトロボ軍団は、コアロボの前に全滅してしまう。
そこで今度は原子王配下の機械化獣ジャンキールが出撃、マッハプテラに一撃を加えるが、このジャンキールがエルドランを窮地に落とした相手だと思い込んだザウラーズは、コアロボをゴウザウラーへと合体させる。 ジャンキールは、右腕の大剣と持ち前のパワーでゴウザウラーを攻撃するも、このジャンキールを倒せば地球を救えると信じている拳一が操縦するゴウザウラーは強く、ザウラーキャノンとザウラーボンバーを立て続けに受けたジャンキールは、 ザウラーマグマフィニッシュに両断されて爆発四散してしまうのだった。
戦闘終了後、あまりにも呆気なく倒されたジャンキールを、エルドランが苦戦していた相手にしては弱すぎると感じたザウラーズは、他にもっと強い敵が存在することを疑い始める。 それでも、金太と洋二が揃えば大丈夫と拳一が思ったその時、茂みの中からグラントプス(=分離したダークゴウザウラー)が姿を現したため、ゴウザウラーは駆け寄っていくが、 次の瞬間、偽グラントプスはゴウザウラーに向かって攻撃を仕掛けてきたのだった。 同じ頃、本物のグラントプスは、これもダークゴウザウラーの分離形態である偽マグナティラノに襲われ、本物のマグナティラノも、やはりダークゴウザウラーが分離した、偽マッハプテラ、偽ランドステゴ、偽サンダーブラキオに襲撃されていた。 こうした状況の中で、ゴウザウラーコクピット内の拳一達が、偽グラントプスにパイロットが誰も乗っていないことに気付くや否や、教授が「あれは自分達の知っているグラントプスではない」ことを拳一に告げてきた。 斯くして、拳一達は目の前の偽グラントプスに混迷を深めながら、なおも戦いを続行せざるを得ない状況となってしまうのだった。

分析

機械化帝国は6400万年前と1993年の現代に同時侵攻しているが、1993年の現代には歯車王が敗れた後、電気王、エンジン王と、次から次へと新しい王を派遣した一方で、6400万年前の世界には、原子王を送り込んだのみであった。今回のように、人間の歴史そのものを支配してしまうことは、地球を機械化する最も簡単な方法であろうし、キングゴウザウラーを得たザウラーズにも、どうしようもない状況を作り出せるにもかかわらず、機械神が6400万年前の地球に攻め入った原子王に対して、増援部隊を送るようなことはしてこなかったのである。このような機械神の采配の裏にはどのような事情があったのか、その辺りを考察してみたい。
思うに機械化帝国は、6400万年前に一度、ボルトロボ軍団を派遣して地球の機械化を試みたものの、この時はエルドランの駆るゴウザウラーの前に敗退し、目的を達することができなかったのではないだろうか。 この際、地球にエルドランが操縦するゴウザウラーという邪魔者がいることを知った機械神は、一旦地球攻略を後回しにして捲土重来の時を待った。 そして、長い時が経過した1993年。機械神は現代から時空の穴を介して原子王を6400万年前の世界にボルトロボ軍団の指揮官として派遣し、これにエルドランとゴウザウラーの相手を命じた。 こうして、6400万年前の世界にエルドランとゴウザウラーを封じ込めた機械神は、満を持して"太陽系機械化計画"を発動し、歯車王に1993年の太陽系を機械化するように命じて実行に移させたのだろう。 ところが、エルドランがゴウザウラーを拳一達ザウラーズに託したため、歯車王は1993年の地球でゴウザウラーという全く予想外の敵に難渋する事態が起こってしまった。 そのため機械神は、当初は1993年の地球に送り込む予定のなかった電気王、エンジン王といった面々をも太陽系攻略に投入せざるを得なくなってしまったというのが、機械化帝国の実情だったのではないだろうか。
それを裏付けるのが6400万年前の地球に最初に派遣された原子王と、"太陽系機械化計画"初代指揮官である歯車王の、地球に関する知識である。 6400万年前に送られた原子王は、邪魔者となるエルドラン及びゴウザウラーと、当時の地球上を席巻していた恐竜のことは知っていたが、人間のことは時空の穴を介してタイムスリップしてきたザウラーズを目撃するまで知らなかった。 一方の歯車王は、人間のことを知っていた反面、地球にゴウザウラーという邪魔者がいたことに驚いていたが、それは機械神から、1993年に存在するハズのないゴウザウラーのことを、教えてもらっていなかったからではないか。 これらを整理すると、原子王に与えられた使命は1993年の歯車王が"太陽系機械化計画"を滞りなく完遂できるように、エルドランとゴウザウラーを、6400万年前の世界に足止めすることだったと言える。 つまり原子王は、エルドランがザウラーズにゴウザウラーを託した時点で、ある意味、使命遂行に失敗していたのだ。
そして、機械神が原子王に増援部隊を送らなかったのは、時空の穴を作り出すためには、ハイパーエナジーミサイルや機械化城の爆発といった莫大なエネルギーがかかる上に、時空の穴自体が短時間で消滅してしまう不安定なものだからだろう。 更に言えば、原子王の侵攻している6400万年前の地球で栄えていた恐竜は、地球の歴史上では、とっくの昔に絶滅してしまった生物であるため、放っておいたとしても機械化帝国にとって何の問題もない。 要するに、ゴウザウラーが1993年の現代に現れた時点で、6400万年前に送られた原子王が、エルドランに敗北したとしても、機械神にとっては、さほど重要ではなかったと言える訳で、だからこそ機械神は、エルドランに対して劣勢気味の原子王に増援部隊を送る予定を、全く立てていなかったのではないだろうか。 以上の推測から、機械化城の爆発の影響でできた時空の穴を通って、ギルターボの頭部が恐竜時代に流れ着いたことと、それを回収した原子王がダークゴウザウラーを完成させて、地球の歴史を支配しかけたことは、機械神にとっても全く計算外の嬉しい誤算だったと思われるのだ。
無論、このギルターボの頭部は、機械神が意図的に送り込んだ可能性もある。謀反者であるエンジン王が集めたデータを忠臣の原子王に提供することで、地球の歴史を支配し、機械神がエンジン王に意趣返しをした可能性だ。 しかし、もし機械神が意図してギルターボの頭部を送っていたのなら、時空の穴から恐竜時代に向かったザウラーズのことも教えていたハズだが、結局原子王は、ザウラーズなる人間が邪魔者としてタイムスリップした事実を知らなかった。 エンジン王の造反の直後だけに、人間という生物に関するデータを、機械神が原子王に教えることを渋った可能性も否定できないが、しかし正確な敵の情報を伝えられていなければ、原子王の勝利が遠のいてしまうというのは自明の理であり、そんな下策を機械神がとったとは考え難い。 実際の原子王の戦いぶりを見ても、ザウラーズの存在を知らなかったことが敗因の一つだったことは明らかで、故にギルターボの頭部が恐竜時代に流れ着いたのは偶然だったというのが、当データベースが導き出した答えである。
それにしても驚くべきは、中島先生を含めたザウラーズの「心の強さ」だ。 地球が完全に機械化されたことを肌で感じ、絶望したザウラーズは、しかし中島先生の言葉で希望を見出し、地球を元の姿に戻す未来を志向している。 地球上に自分達19人しか人間がいなくなってしまったかもしれない中で、それでもなお折れない心を持っていることには、ただただ驚嘆せざるを得ない。

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