第43話「さよなら恐竜時代」


概要

ダークゴウザウラーが傷付いている今こそ、先手必勝で敵の基地に乗り込んで、原子王を倒そうと呼び掛ける拳一。 しかし、ザウラーズの殆どのメンバーは、強敵との度重なる死闘と、家族や日常生活の恋しさ、そして原子王を倒したとしても、元の世界へ戻れる保証のない戦いに、戦意を失っていた。 その結果、拳一、しのぶ、五郎、エリー、金太の5人だけが、原子王との決戦に向かったのだった。
一方、ダークゴウザウラーを修復しながら、原子王は地球壊滅装置を造り、それが完成する夜明けと共に装置を作動させることを決定していた。 この地球壊滅装置が作動すれば、ありとあらゆる天変地異が起こり、その結果、地球上の全生命体は滅亡するのである。 そして原子王は、自分がその一部始終をダークゴウザウラーで宇宙から見届けることで、地球が機械の星へと変わりゆく様を機械神に報告する「歴史の語り部」となることを宣誓するのだった。
迎えた翌朝。日の出と共に、ゴウザウラーとマグナザウラーが、地球壊滅装置の前まで飛来してきたため、この2体を迎撃するダークゴウザウラー。 こうして、地球の未来を賭けた一大決戦の幕が上がったのだった。

実行

ザウラーキャノンが戦闘開始の号砲を鳴らして始まった決戦は、緒戦から現状の自分たちが持っている最大の戦力・ザウラービッグバスターをゴウザウラーが発射するが、ダークゴウザウラーはキングゴウザウラー状態から瞬間分離することによって、その一撃を回避。 更に、偽グラントプスのトリケラショットや、偽ゴウザウラーのザウラーボンバーを、偽マグナティラノが尾で打ち出すなど、連係攻撃においても原子王はザウラーズ相手に優勢な戦闘を展開していった。 そして、再びキングゴウザウラー形態に超鋼鉄合体したダークゴウザウラーは、動きの鈍いゴウザウラーを捕まえ、その手で握り潰そうとするが、金太が機転を利かせてマグナバスターを分離させると、 ザウラービッグバスターを単独発射して、ゴウザウラーを危機から救った。 が、そうした行為と引き替えに、ザウラービッグバスター発射の勢いで、地上に落下していくマグナバスター。しかし、それを急行してきたグランザウラーがキャッチしたため、金太は九死に一生を得た。 実は、意気阻喪していた残りのザウラーズメンバーも、原子王との決戦に向かった拳一たちのことが気がかりで、戦況不利に陥っていることを音声受信する形で知るや、戦場に駆け付けてきたのだった。
果たして、全員集合したザウラーズの駆る、三大ザウラーロボを前にした原子王は、一気に勝負を付けるべく、地球壊滅装置を作動させる。 すると、俄に空が曇り、地球全土に大雨が降り始める。そして、雷鳴とどろく中、エルドランが守ろうとしたものが滅びていく様を見せ付けんと勝ち誇る原子王は、しかしその言葉から、原子王が作動させた機械の正体が、地球を壊滅させるための装置であることを、ザウラーズに知られてしまうのだった。
そのため必死に地球壊滅装置を攻撃するゴウザウラーだったが、地球壊滅装置の装甲は、どんな武器でも破壊することができないように設計されていた。 そこでゴウザウラーとマグナザウラーは、地球壊滅装置を巡ってダークゴウザウラーとの戦闘に突入。一方、原子王の造った機械の正体が地球壊滅装置だと知ったザウラーズの教授は、実現可能かどうかは別にして、 それを破壊するのが何よりも先決と判断すると、残りのザウラーズメンバーや中島先生と協力して、何処かに存在するであろう地球壊滅装置のコントロールシステムを探し出さんと奮闘。 途中、ダークゴウザウラーのミサイルが流れ弾で飛んでくるも、そうした敵の攻撃はグランザウラーが全て防御したこともあって、教授たちはなんとかコントロールシステムの発見に成功するのだった。
だが今度は地球壊滅装置の働きで発生した大竜巻が、地球壊滅装置のある方向に進行。 激しい風雨の中、自分が中島先生と一緒に残って地球壊滅装置を停止させんとする教授だが、そんな教授を秀三はじめ、ザウラーズメンバーが自分たちの体で壁を作り、教授の作業効率をアップさせる。
一方、ゴウザウラーとマグナザウラーの2体と戦うダークゴウザウラーは、マグナザウラーを掴んでそれを人質にゴウザウラーを牽制するも、マグナザウラーが苦し紛れに連射したザウラーショットが、意外にもダークゴウザウラーの腹部を損傷させた。 そこで、これに活路を見出したザウラーズは、ダークゴウザウラーの腹部破損箇所にザウラーブレードを斬り付けると、一気にとどめを刺さんとするが、その直後、地球壊滅装置の近辺で戦っていたダークゴウザウラー、ゴウザウラー、マグナザウラーの3体は、地球壊滅装置に接近してきていた大竜巻に呑み込まれてしまうのだった。
徐々に接近してくる大竜巻に、皆の身の危険を感じた洋二は、ザウラークラフトを使ってザウラーズメンバーを迎えに行くが、地球壊滅装置を停止させんとする教授と、その身の安全を守ろうとする中島先生だけは、その場に残る。 そして、教授と中島先生の作業場所に大竜巻が最接近したその時、遂に教授が地球壊滅装置の仕組みを理解してコードをつなぎ替え、地球壊滅装置の動作停止に成功し、それと共に大竜巻は消滅、雷雨をはじめ、あらゆる天変地異は収まるのだった。
その結果、大竜巻に呑み込まれていたダークゴウザウラーが、地球壊滅装置のもとに飛来。原子王は初めて目の当たりにした「人間」という生物に驚きながらも、地球壊滅装置を停止させた犯人として、教授と中島先生を、ダークブレードで殺害せんと迫る。しかしその時、同じく大竜巻に呑み込まれていたゴウザウラーとマグナザウラーがダークゴウザウラーの行動を妨害したため、この隙に洋二が教授と中島先生をグランザウラーの中に収容する。 更に、ビッグランサーでダークゴウザウラーの背中を突き刺し、これを転倒させたザウラーズは、この間隙を縫ってキングゴウザウラーへの超熱血合体を完了させた。 そして、その直後にキングスパルタンをダークゴウザウラー諸共、地球壊滅装置に直撃させたザウラーズは、地球壊滅装置を完全破壊し、勝利を確信する。
しかし、まだ潰えていなかったダークゴウザウラーは、爆炎の中から姿を現すと、ダークランチャーをキングゴウザウラーに見舞ったのだった。 この、思いもよらぬ敵の攻撃に驚くザウラーズ。 そして、原子王操縦のダークゴウザウラーは、作戦潰滅の怒りを込めてキングゴウザウラーを殴り飛ばすと、その手に握られたダークブレードを振りかざすが、その時、戦闘の限界を超えたダークゴウザウラーのボディが、爆発を起こし始めてしまう。 この機を逃さずザウラーズはザウラーキングフィニッシュを発動。これを受けたダークゴウザウラーは大爆発し、そのパイロットだった原子王も、断末魔で機械神に対する忠誠心の誉れを見せ、 機械化帝国の幹部として、見事な死に様を残して玉砕するのだった。
終戦後、地球壊滅装置のあった場所に、時空の穴を発見したザウラーズは、自分たちの時代に帰れると喜ぶが、次の瞬間、火山の噴火、地割れといった様々な天変地異が起こり、恐竜たちは、ザウラーズの目の前で、次々と死んでいく。 チビ助を心配するマーボーをはじめ、恐竜たちの死に困惑し、落涙するザウラーズ。そんなザウラーズの前にエルドランが現れ、1993年の現代への帰還を促す。そしてエルドランは、地球が本来の歴史を取り戻したこと、 恐竜たちの死は、地球の歴史の一部であるとだけ伝えると、ザウラーズの前から消え去るのだった。
中島先生から、「地球の生命を守った」と言われても、納得することができないザウラーズは、その直後に、マグマの中を流れるギルターボの頭部と、その上で助かっている2匹の哺乳類型爬虫類(単弓類)=人類の祖先であるネズミをモニター越しに発見する。 こうして「歴史」というものを肌で感じたザウラーズは、時空の穴を通って1993年の現代へと帰還するが、そこは恐竜時代を攻撃していた原子王とダークゴウザウラーが倒された影響で元の春風町に戻っており、町はホワイトクリスマスを迎えていた。
降り積もった雪でチビ助の雪像を作り、その別れを惜しむマーボーと、それを励ますザウラーズ。しかし次の瞬間、チビ助の雪像に一片の赤い雪が落ち、驚いたザウラーズが空を見上げると、そこに機械神が姿を見せる。 果たして機械神は、ザウラーズとの最終決戦を行うことを宣言するのだった。

分析

ザウラーズの精神状態は、限界に達しており、その点から言えば、原子王に有利な状況が揃ってはいた。 恐竜の親子を見て親が恋しくなり、家族が恋しくなる。日常生活が恋しくなる。やはりザウラーズといえども、そこは普通の小学生なのだ。 そして例え原子王を倒したとしても、元の世界に戻れる保証など何処にもない。 保証がないから不安になる上、その不安が心から生まれるものであるからこそ、ザウラーズは希望を見出せない絶望状態に落ち込んでしまっていたのだ。
一方、原子王は、既に地球壊滅装置を完成させており、後はそれを作動させるだけで、機械化帝国の目的を見事に成し遂げ、機械神に吉報を伝えられる状態を整えていた。
未来に希望を見出すことができないザウラーズと、機械化帝国の目的を成就させる青写真が描けている原子王。こうした精神的な面から見ても、原子王の圧倒的な優位は揺らぐハズがなかった。
では何故、原子王は敗れてしまったのか。やはりザウラーズの心の結束力が強かったことが、最大の理由として挙げられよう。 希望を見出すことができず、戦意を失っていた殆どのザウラーズメンバーは、しかし原子王との決戦に向かった拳一たちのことが心配だったため、その戦況を音声受信する形で知得した結果、グランザウラーで戦場に向かっている。 絶望の中で、仲間を見捨てられないという心が行動に直結し、アクションを起こしたザウラーズは、そのまま地球壊滅装置を停止させることを試し、それを成功させて、未来を切り開いたのである。
ダークゴウザウラーという強敵が存在し、仮に原子王を倒したとしても、元の世界に戻れる保証がない上、地球壊滅装置の動作を止められるかどうかも不確定。 しかしザウラーズは、これら多くの不安を仲間を想う心を持っていたからこそ全て克服し、恐竜時代を守って、現代への帰還を果たしたのだ。 現実から目を背けず、各人が自分にできることを精一杯やった結果として、ザウラーズに勝利が齎されたと言っていいだろう。
翻って、原子王側に敗因があるとすれば、原子王の機械神に対する忠誠心の高さが、自分の計画を尽く邪魔してきたエルドランに対する憎悪を掻き立て、その結果として冷静さの欠如に繋がってしまったことが挙げられる。 原子王が造り上げた地球壊滅装置は、地球上にありとあらゆる天変地異を起こして全生命体を滅亡させる装置であり、機械化帝国の目的を達成させるための、まさしく究極兵器であった。 そして本来、この地球壊滅装置を作動させるのは、原子王がダークゴウザウラーで安全な宇宙空間に避難した後だったハズだ。だからこそ、原子王が地球上での戦闘中に地球壊滅装置を作動させたことには、やはり疑問が残る。 地球上にありとあらゆる天変地異を起こす装置なのだから、これを作動させれば、その天変地異に自分が巻き込まれる可能性は十分にあったし、それくらいのことは想像が付きそうなものである。 にもかかわらず、原子王は、まだ自分が地球上にいる時に、地球壊滅装置を作動させてしまった。 その結果、ダークゴウザウラーは、地球壊滅装置が発生させた大竜巻に呑み込まれ、それがひいては作戦の失敗に繋がり、最終的には自らの命を犠牲にする形になったのである。 更に地球壊滅装置を作動させた際の原子王の言動からは、エルドランに地球の生命が滅びゆく様を見せ付けんとする、原子王の個人的な怨恨を窺うこともできる。 こうしたことからも、原子王が地球壊滅装置から発生する天変地異を、戦闘の際の切り札として使おうとした訳ではなかったことは明白で、感情に任せた杜撰な戦略の末に、「敗北」の二文字が待っていたことは、誠に残念ながら、至極当然の結果であった。
また、キングスパルタンの直撃にも耐え抜いたダークゴウザウラーが敗北を喫したのは、戦いの途中で、機体に異常を来したからであるが、恐らくこれは、キングゴウザウラーのデータを元にして、よりハイスペックなロボットを造ったはいいが、とにかくパワーだけを上げたため、本家のキングゴウザウラー以上に機械に大きな負荷がかかり、 本家より先に戦闘の限界を迎えてしまったからだろう。装甲が脆い部分も含め、全体的な改良を施してさえいれば、また勝負の結果は違っていたかもしれない。
また、原子王には科学者としての一面もあったが、そういう意味では今般の戦いは、ザウラーズの科学者である教授との頭脳戦であったとも言える。 しかしこの2人の科学者は、自分が造り上げた機械の内容や、その開発方法が決定的に違っている。
原子王は、機械化帝国に既に存在する技術を応用して、機械化隕石誘導装置や地球壊滅装置を開発し、キングゴウザウラーのデータを元にして造り上げたダークゴウザウラーも、自分1人だけで完全制御できるように改造が施され本家を凌駕するパワーを有していた。つまり原子王は、1を10にも100にもできるタイプの科学者だということができる。
一方の教授は、発明家としての一面も持つ科学者で、その腕前はまだまだ未熟だが、しかし超電磁バリアや永久機関といった非現実的でありながらも他人の役に立つものを発明し続けており、キングゴウザウラーへの合体プログラムも、こうした流れの中で組み上げられている。これらのことから分かるのは、教授が0から1を生み出そうと努力を続けているタイプの科学者だということである。
かたや、地球の歴史に終止符を打つために、既成の技術を応用して、強力な兵器を造り続けた原子王。 かたや、地球と人類の未来を豊かにするために、未だ実用化されていない機械の開発に取り組み、発明を続けてきた教授。 どこまでも対照的な2人だが、此れ程までに、相異なる2人の科学者の対決は、教授の方に軍配が上がる。
原子王は、ダークゴウザウラーを造り上げたが、それはある意味、教授の発明品たるキングゴウザウラーの猿マネでしかなかった上、地球壊滅装置でさえも、その内部を初めて見た教授に停止させられてしまった。 更に、戦闘中の判断力に関しても、自らが天変地異に巻き込まれるリスクを忘却して、自分が地球上にいる時に地球壊滅装置を作動させた原子王と、地球壊滅装置の正体を知った後、それを停止させることを何よりも優先した教授とを比較しても、 勝負は原子王の完敗であったと言う他はないだろう。
ダークゴウザウラーや地球壊滅装置などの破滅のメカニックを造り上げ、決して無能な科学者ではなかった原子王が、科学者としての才能を磨いて、発明家としても成長を続け、 現在の自分が持っている知識と経験値をフル活用した教授に頭脳面で敗れてしまったという事実は、対機械化帝国という観点から見ても、大変に興味深く、改めてザウラーズにおける教授の重要性を認識せざるを得ない事象となったと言えよう。
そして、最も興味深いのは、ギルターボの頭部の上で、マグマの流れから助かったネズミ(人間の祖先)の存在であろう。 ギルターボは、人間の心に興味を抱いて、その解析に腐心し、最終的に心の本質を理解するに至って、機械神の攻撃からエンジン王を救うことができたのである。 故に、もし地球に人間が誕生しなければギルターボがその影響を受けることもなく、従って絶体絶命のエンジン王を救助することもできなかったハズなのだ。
そして、このギルターボの頭部の上で、天変地異から助かったネズミが進化した子孫が、ザウラーズの関係者だったかもしれず、もしそうだったなら、如何に歴史を変えようとしても、結局は変えることができなかったと言えてしまうのである。 つまり、エンジン王とギルターボが人間の心を理解し、機械神に反旗を翻すのは、定められた運命であったと言える訳だ。
加えて歴史には、「本来の歴史に戻す『修正力』がある」ともいう。機械神が、恐竜時代に攻め入った原子王に増援部隊を送るようなことをしなかったのは、過去を変えて歴史改変を試みても結局は徒労に終わることを知っていたからかもしれない。
また注目しておきたいのは、機械化城での最終決戦時に光の巨人と化して、地球の生命にとっての守護神になったエンジン王と同じく、今般、人類の祖先であるネズミを救ったギルターボもまた、地球の生命を守った守護神になった点だ。 ギルターボも、エンジン王を救うために、心の力を使った際、やはり光の巨人と化しており、言わば地球の生命は、エンジン王とギルターボという2人の光の守護神によって守られたのである。 そしてこの点を更に突き詰めていくと、彼らが守護神の中でも、阿吽の呼吸で敵を防ぐ仁王の役割を果たしていたことが窺えよう。
最後に。地球の歴史上で敗れたとは言え、原子王は、今際の際まで機械神への忠誠を貫き通し、機械化帝国の幹部として、見事に死に花を咲かせた。 他の機械王が離反したり、謀反を起こしたりする中、1人だけ機械神への忠誠心に変わりが無かったことは、賞賛に値すると言えるだろう。

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