第44話「新春熱血ザウラーズ!」


概要

怨敵ゴウザウラーを倒すべく、今再びギーグが行動を開始した。
前回は罠を張り巡らせた遊園地「ザウラーパーク」にザウラーズを誘き出し、その抹殺を図ったものの失敗したため、同じように罠まで誘き出す手は使えない。 加えて、既に機械神がザウラーズとの最終決戦を予告しているため、ギーグが手柄をあげる機会はあまりない実情がある。 そこで今回は、人間側の用意したイベントと宣戦布告した機械神を利用して、ゴウザウラーとの直接対決を考慮に入れた心理作戦が立案される。
今般、ザウラーズの活躍を記録した映画「ザウラーズ熱血大進撃」が完成し、その完成記念パーティー兼試写会にザウラーズメンバーは招待されており、その会場には、先生達関係者も来場している。 そこで、このイベントが行われている最中にギーグが機械神の姿を借りて登場し、隙を見て檻に閉じ込めておいた先生達の身柄を盾に、ザウラーズに降伏を要求する手筈となっている。
無論、ザウラーズが大人しく従うとは考え難いため、ザウラーズが刃向かう意思を見せた場合は、ギーグが考え得る最強の機械化獣・ビーストカイザーを投入して、これにゴウザウラーを攻撃させることを決定。 それを造るための機械卵と無人操縦のギルターボ2号も手配が整えられている。
ビーストカイザーは、嘗てキングゴウザウラーを窮地に陥れた実績を持つ、最強クラスの機械化獣である。 突如出現した敵の首領に、先生達を人質に取られた上、強敵と再戦しなければならない状況に追い込まれたザウラーズは心理的に動揺するハズだ。 そうなれば、戦闘力が皆無のギーグ自身が直接戦わずとも、ザウラーズを心身両面で屈服させることすら可能となるため、この作戦成功の暁には、機械神の覚えめでたく機械化帝国に凱旋するというギーグの本懐が果たされることになるのは間違いない。 こうしてギーグは、自らの栄光を掴み取るべく、ザウラーズに再度、復讐戦を挑んでいくのだった。

実行

まずは予定通り、ザウラーズの記録映画「ザウラーズ熱血大進撃」の上映が開始される。 最初に各パイロットの紹介が、金太、洋二、ひろみ、しのぶ、拳一、五郎の順番でなされ、ザウラーズ内の恋愛模様を描いた「ワンとツーのラブラブレポート」では、金太&ユカ、洋二&エリー、ひろみ&クーコ、拳一&しのぶの各カップリングに 焦点が当てられた。
そして、ここまで映画が進んだところで一旦映像がストップするや、教授の「天才少女・小島尊子発明品コーナー」が無理やりプログラムにねじ込まれ、教授が冬休みに造り上げた超電磁バリア、天才製造マシン、人間探知機の改良版が、拳一、五郎、ボンを被験者として披露される。ところが、これらの発明品は、そのスイッチオンと同時に、全て電気ショックと共に爆発してしまい、教授の冬休みの苦労は、一瞬にして水の泡と消えたのだった。
こうした教授の発明品を見たためか、今年の冬休みが「小学生生活最後の冬休み」であることを意識したザウラーズは、この1年間に経験したこと全てが、小学生最後の思い出だということを改めて感じたことから、再び記録映画に目を移す。 スクリーンには夏休みの温泉旅行、秋の運動会が映し出され、その思い出に浸りながらも、ザウラーズは小学生生活が終わってしまうという現実から寂寥感に襲われる。
こうした状況に、いよいよ機は熟したと見たギーグは、「最後なのは小学校生活だけではなく、ザウラーズも今日が最期」というセリフと共に機械神の姿をスクリーンに映し出すと、先生達が閉じ込められた檻をザウラーズの眼前に晒し、 この人質を助けたければ、大人しく降伏するよう勧告するのだった。
だが、予想通りザウラーズは降伏勧告に従わず、先生達を助けるための行動に移ろうとしたため、ギーグはビーストカイザーの製作を決意、まずは機械卵を多数放出すると、それより機械化獣軍団を誕生させる。 そして、この機械化獣軍団は、見事にゴウザウラー、マグナザウラー、グランザウラーの3体に粉砕され、ここにビーストカイザーの材料を得たギーグは、待機させておいたギルターボ2号を呼び出して巨大結合を行わせ、ビーストカイザーを造り出すことに成功するのだった。
ここでギーグの思惑通りにいけば、ザウラーズは怯むハズだったのだが、ザウラーズにそのような気配は全くなく、キングゴウザウラーへの超熱血合体を果たすと、ビーストカイザーに戦いを挑んでくる。 そこで、戦闘を開始したビーストカイザーは、ビーストバーンでキングゴウザウラーに大ダメージを与えると、更に必殺のビーストダイナマイトを繰り出すが、それをキングゴウザウラー渾身のパンチで真っ向から破られてしまうと、 続けざまに発動したザウラーキングフィニッシュによって呆気なく爆散。 その上、打倒機械神に燃えるザウラーズが、映画のスクリーンを取り去ったため、今回出現した機械神の正体が、その姿を借りたギーグであることが露見してしまうのだった。
正体を看破されたギーグは慌てて逃げを打とうとするが、機械神に化けるために体中に付けていたコードが絡まってしまい、そこをキングゴウザウラーに捕獲されると、球体に丸められて、遙か彼方に弾き飛ばされてしまう。
こうしてギーグが己の栄光を目指して行った二度目の復讐戦は、何の成果も上げることなく、その終焉の時を迎えたのだった。

分析

前回同様、心理作戦を挑んだギーグの戦略は、その性格と置かれた立場を考えれば至極当然のものであり、特に問題はなかった。 戦力不足のギーグに必要なのは、自分の仕業と思われないための「隠れ蓑」と自分の代わりに戦ってくれる「強力な刺客」の2点である。 この2点を前者は機械神の姿を、後者はビーストカイザーを利用することで補い、更に、これらに付随する脅威によって、ザウラーズの恐怖心を刺激し、動揺したところを一気に叩くことで、ザウラーズを心理的にも物理的にも屈服させられるハズだった。
しかし、そうしたギーグの目論見は、見事に瓦解してしまった。ザウラーズが機械神やビーストカイザーに対して、恐怖心を抱かなかったためだ。
機械神は、ギーグからすれば恐ろしい支配者であり、ザウラーズにとっても恐怖の対象となって然るべき存在なのだが、しかしエンジン王を犠牲にして勝利を掴み取った経験のあるザウラーズからしてみれば、 機械神は恐怖心を感じるより先に、闘志を掻き立てられる倒すべき存在であった。
また、ビーストカイザーとの再戦は、勿論ザウラーズにとって気分のいいものではなかっただろうが、しかし「強敵との再戦」という点に絞って考えれば、ザウラーズはタイムスリップした先の恐竜時代で、 原子王の駆るダークゴウザウラーと何度も対戦しており、強敵と再戦しなければならない状況を彼らは既にくぐり抜けてきているのだ。
月の機械化城における決戦と、恐竜時代での戦いを、1993年の地球にいたギーグは、全く知らなかっただろうし、だとしてもそれは仕方がないことなのだが、ギーグの知り得ないところで、ザウラーズが精神的な成長を遂げていたことは、不運だったとしか言いようがない。
しかしながら、ビーストカイザーが倒された場合のことまで考えていなかった辺りには、疑問が残る。 折角、人質を取ったのだから、先生達を閉じ込めた檻に細工をしておき、己の身の安全を確保しながら脱出できるように、ビーストカイザー敗北後のことまで考えて対策を施しておくべきであった。 自分が手柄をあげる機会の少なさからくる焦りが、ギーグの判断力に狂いを生じさせた結果なのかもしれないが、あまりにもお粗末であった感は否めず、この辺りは、ギーグの実戦経験の少なさも手伝ったのかもしれない。
また実質的にフリーの立場で動いていたギーグの今回の戦略には、後の機械神の戦略に悪影響を及ぼした疑いがある。 即ち、ギーグがビーストカイザーを再現するためにギルターボ2号を使った結果、機械神がエンジン大王にエンジン王のフリをさせられなくなった可能性を否定できないのだ。
ギルターボは、機械神の攻撃からエンジン王を守って大破し、そのエンジン王も、最終的にはザウラーズに味方して死んでいった。数多の敵の中でも、エンジン王とギルターボは、ザウラーズにとって特別な存在なのである。 そのうちのギルターボが、ギーグが化けた偽者とは言え、機械神の命令通りに動いているのだ。普通なら、この時点で動揺しそうなものである。
しかし、ザウラーズにとっては、心通わせることができたエンジン王を、命懸けで守ったギルターボこそが、ザウラーズの知っている本物のギルターボなのだ。 そして、そんなギルターボの頭部によって、恐竜時代の人類の祖先たるネズミが、マグマから助かっているところを目の当たりにしているザウラーズは、ギルターボが地球の生命を守って死んでいったことを、心に強く焼き付け、認識してもいる。 だからこそ、ギーグの化けた機械神が操るギルターボが同じ姿かたちをしただけの操り人形であることと、自分達の知っているギルターボではないことを、ザウラーズは直感的に理解したのだろう。
そのことを証明するかのように、今回のビーストカイザーはいとも簡単に倒されているし、後にエンジン王と同じ姿態をしたエンジン大王と対峙したザウラーズが、躊躇することなく戦闘を行っているのも、此度の戦いがあったればこそに違いない。
四天王の一番手である歯車大王が、自分は歯車王とは違う別人であるということを早々に明かしているので、機械神には最初から、心理戦を挑む気はなかったのかもしれないが、それでも今回のギーグの一件がなければどうだったか。 機械神は心を持っている人間のことをよく分かっている上、ザウラーズとエンジン王が共闘した事実をも知っているため、エンジン大王をエンジン王として差し向ける心理戦を挑まなかったこと自体、不自然さがつきまとっている。 やはりここは、ギーグの戦略が、機械神の戦略変更に繋がったと見るのが妥当なのではないだろうか。
また以上のことから、機械化帝国VSザウラーズは、一見、組織VS組織の戦いに見えるものの、実際には、機械化帝国の構成員VSザウラーズという、個人VS組織であることが改めて窺える。 機械化帝国が、ここまで敗北を重ねてしまっている現状は、ある意味、当然だった訳である。
なお、ギーグはこの後、行方不明となってしまい、その間にザウラーズと機械化帝国の戦いは幕を閉じている。果たしてギーグはどうなったのか。
まず、この後、全く音沙汰がなくなったことから、死亡説から考えてみたい。その根拠となるのが機械神にザウラーキングフィニッシュを決めた後の教授のセリフである。 キングゴウザウラーが機械神を討ち取った際、教授は、「間違いなく、機械化帝国の反応は完全に消え去った」と確認しているため、パワーアップされた物質復元装置が発射された際、その煽りを受けて、何処かに潜伏していたであろうギーグは、人知れず消滅してしまったのかもしれない。
しかし一方で、驚異的な生命力を持つギーグが、そう簡単に死ぬとも思えないため、生存説も捨てきれない。だが、生き残っていたのなら、何故ギーグは再び復讐戦を挑んでこなかったのか。 機械化帝国とザウラーズの戦いが終結した後、ギーグが復讐すべきゴウザウラーはエルドランに回収されてしまい、機械化帝国自体も滅亡。更に、地球人が物質復元装置の技術を得た状況で、何よりも自己保身を優先させるギーグが ザウラーズに戦いを挑むメリットは皆無に等しくなってしまった。よって、自分本位な利己心の塊であるギーグの性格上、人間を装いながら、地球でひっそりと暮らしている可能性も、無きにしも非ずであろう。
このように、ギーグのその後は、死亡していたケース、生存していたケース共に、色々と考察することができるものの、その末路が明確になっていない以上、全ては憶測に過ぎない。 間違いなく言えるのは、今回の戦いが、ギーグ最後の挑戦となったということだけである。

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