第47話「砕け!鋼鉄の呪い」


概要

機械化された町や惑星を元通りにする研究を、極秘裏に進めていた防衛隊。そんな防衛隊が、体の機械化が進行中の拳一を救うため、機械化された物質を元に戻す「物質復元装置」を開発した。 早速、その効果を試す実験が行われた結果、機械化された地面が、ほんの少しながら元に戻るという「希望」がザウラーズに齎されるが、 物質復元装置が人体に与える影響は未知数であるため、今すぐ拳一に使用することはできないというのが実情であった。
一方、この実験を月の基地から観測し、物質復元装置の光を確認したエンジン大王は、機械神から「物質復元装置の光は、機械化帝国にとって危険な光」だと告げられる。 そして、このまま放っておけば、いずれ機械化帝国の脅威になることは間違いないと判断した機械神から、物質復元装置破壊指令を受けたエンジン大王は、その使命を遂行するために出撃する。
こうして、物質復元装置という一大発明を巡って、ザウラーズと機械化帝国の戦いが始まるのだった。

実行

徐々に機械化されていく体であるにもかかわらず、学校ではいつも通り、明るく振る舞う拳一。しかしそれは、自分が機械人間になっていくという恐怖を紛らわすための行動であった。 そんな拳一の気持ちを汲んだザウラーズは自分達だけで物質復元装置を拳一の体に試すことを決意し、「社会見学」と称して防衛隊基地を訪れると、武田長官から物質復元装置が置いてある部屋に入るためのIDカードを奪取する作戦を実行する。
まず、マーボーのチョコバーを武田長官の制服に塗り付けたザウラーズは「シミになってはいけない」と理由をつけて上着を脱がし、その中からエリーが素早くIDカードを抜き取ると、これを教授にパスしたのだった。 こうしてIDカードの奪取に成功したザウラーズは、続いて頭脳労働担当の教授と秀三、被験者の拳一と付き添いのしのぶが、トイレに行くフリをして、物質復元装置のある部屋へと直行。 そして残りのメンバーが、武田長官に基地内部の案内を頼むことで、装置を使うための時間を稼ぐのであった。
このようにして、物質復元装置のある場所までやってきた拳一は、もしもの時のために、ザウラーチェンジャーをしのぶに託すと、覚悟を決めて物質復元装置の光線を浴び始める。
一方、トイレに行ったハズの拳一達の帰りが遅いことを訝った武田長官が、四人を探しに行こうとしたため、絶対にそれを阻止せんとするザウラーズメンバーは、金太の操縦で戦車を暴走させる。 この事態を受けて、春風小学校の中島先生にザウラーズを引き取りに来るよう電話を入れた武田長官は、自分の制服のポケットにIDカードがないことに気付くと、装置のある部屋へと急ぐのだった。
拳一の身を案じて装置を止めるように言う武田長官と、続けさせてくれるように頼むしのぶ。 そこに物質復元装置破壊指令を帯びたエンジン大王が飛来。指先からミサイルを放って、拳一が入っているカプセルもろとも装置を爆破すると、次の獲物として、しのぶをその手にかけんとする。 だが、次の瞬間、無事だった拳一が残骸の中から飛び出すと、エンジン大王の相手を買って出るのだった。
この非常事態に、拳一以外のザウラーズメンバーは、防衛隊と共に、物質復元装置がある部屋からの待避を開始。そんな中、教授は、物質復元装置の設計図および研究データを取り出そうとするが、それらを記録したフロッピーディスクは、エンジン大王の攻撃によって炎と消えるのだった。 こうして、物質復元装置を破壊することに成功したエンジン大王は半機械人間の拳一と戦闘を開始。ミサイルや有線付のパンチを用いた戦法で拳一に対して優勢となったエンジン大王は、今からでも遅くはないため、機械化帝国の一員になるよう勧告する。 しかし、拳一がこの申し出を断ったことから、エンジン大王はとどめを刺すことを決意。側にあった鉄骨を引き抜いたエンジン大王は、これで拳一を刺し貫こうとするが、次の瞬間、拳一は、無事に学校に戻っていたザウラーズ操縦のゴウザウラーに助けられるのだった。
あと一歩のところで拳一を仕留め損なったエンジン大王が、建物の外へと飛び出すと、そこにはゴウザウラーの他にマグナザウラーとグランザウラーの2体も揃っていた。そこでエンジン大王は、ザウラーロボと戦うべく、巨大化エンジン王と同型の戦闘形態へと変貌。 一方のザウラーズも、ゴウザウラーに搭乗した拳一が、しのぶに預けていたザウラーチェンジャーを受け取ったことで、キングゴウザウラーへの超熱血合体を行うのだった。
そしてキングゴウザウラーとエンジン大王の戦闘が開始されるが、半機械人間の拳一が操縦するキングゴウザウラーは手強く、エンジン大王は押され気味になりながらも、流石の攻撃力で逆転する。 更に追い打ちをかけんとするエンジン大王だったが、防衛隊による意地の攻撃がエンジン大王を直撃。 この隙に発動したザウラーキングフィニッシュによってエンジン大王は敗れ去るが、物質復元装置を破壊するという使命だけは果たしたエンジン大王は、機械化帝国の勝利は時間の問題であると確信して退却する。 しかし物質復元装置の設計図と研究データは、教授が装置のスイッチを入れた時に、モニターに映し出されたものを拳一が目にしており、その内容を頭部コンピュータに記憶していたのだった。
こうして、物質復元装置破壊作戦は、事実上、失敗に終わった。

分析

防衛隊が開発した物質復元装置は、機械化された物質を元の姿に戻すという代物で、対機械化帝国の、ある意味究極の発明である。 機械化によって機械にされたものは、自然回復する類いのものではなく、防衛隊が研究を行ってはいたものの、機械化に対する有効な手立てを、地球人は持つまでには至っていなかった。 しかしゴウザウラーのメインパイロットである拳一の体が、徐々に機械化していくという非常事態が、「必要は発明の母」となった結果、機械化研究は長足の進歩を遂げ、 果たして地球人は、物質復元装置という機械化への対抗策を、遂に開発することに成功したのである。
この装置が、これまでの対機械化帝国用兵器とは一線を画すものであったことは間違いなく、機械神が明確に「危険」と判断し、エンジン大王に即刻破壊を命じている点からも、事の重大さが窺えよう。
何より、物質復元装置の開発によって、ザウラーズが希望を持ったことが大きい。
如何に拳一が強がっても、自分の体が機械化していくことは恐怖であるし、如何に周囲が拳一を受け入れても、機械化の進行を、ただ指をくわえて見ていることしかできなければ、そこには無力感と絶望感が漂うのみなのだ。 それが、友情という情で繋がっている者ならば尚更である。
恐怖や絶望が心身を硬直させ、前進する気持ちを、ひいては機械化帝国に逆らう気力を萎えさせる。 拳一ひとりが機械化するだけで、機械化帝国は、対ザウラーズの面において、多大な成果を得られるハズだったのだが、しかし機械化された物質を元に戻す物質復元装置の発明が、ザウラーズに「拳一が元に戻れる」という希望を与えてしまったのである。
人間というのは、対処できない脅威に恐怖し、希望を見いだせない時に絶望する。物質復元装置という機械化に対する対抗力は、ザウラーズが心を持つ人間である限り、絶対に消すことができない恐怖を破らせ、 どうすることもできないという絶望の中に、一縷の望みを見出させた。 これによって、絶望感に覆われていたザウラーズの内部には希望が灯り、更には前進する方向性が定まり、その結果、機械化帝国に立ち向かう活力までもが生まれたのだ。 物質復元装置の光は、地球人にとっては希望の光だが、機械化帝国にとっては、まさしく危険な光だった訳だ。
そんな危険な希望の光を消すべく、物質復元装置の破壊に向かったのは、エンジン大王である。エンジン大王は、姿形は無論、基本的な性格もエンジン王と同じであると言っていい。 エンジン王は、キングゴウザウラーが自分の眼鏡にかなわないと判断したら、即刻処分しようとする行動が幾度か見られた。 故に、エンジン大王が拳一を機械化帝国の一員になるように誘い、断られると殺害しようとしたのは、ある意味、オリジナル通りなのだ。
そして機械神の命令通りに動くエンジン大王の姿は「野心のない、機械神に忠実なエンジン王」の姿でもある。 基本的な戦闘能力自体が違う、エンジン王とエンジン大王の2人を、単純に比較することは難しいが、それでも対キングゴウザウラー戦の内容を判断材料として考えると、 やはり野心や向上心といったものを持たず、全く成長することがなかったエンジン大王には、エンジン王ほどの「強さ」がなかったことが窺える。 更にこのことは「もしエンジン王が、野心を持たない機械神に忠実な機械王だったら、現実ほど有能だったかどうか?」という問いに対する「回答」をも示していると言えよう。
なお、実行に移されることはなかったが、大王が王と同型であるということを利用して、心理作戦を挑んだ場合、唯一、大王の中で違う効果を発揮できたのが、エンジン大王だったことは間違いない。
ザウラーマグマフィニッシュでも倒し切れなかった、歯車王と同型の歯車大王、ザウラーロボ3体の必殺技を総動員してやっと倒すことができた、電気王と同型の電気大王、恐竜時代という違う時間軸で戦った、原子王と同型の原子大王の3体は、 誰を最初に送り込んだとしても、ザウラーズの心に恐怖を与えることになっただろう。 そうした中で、ザウラーズと心通わせた、エンジン王と同型のエンジン大王だけは、「恐怖」ではなく「混乱」を惹起させることができたハズで、 ザウラーズの心を惑わせ、彼らが困惑している隙にゴウザウラーを葬るという戦法を、エンジン大王はとることが可能だったと思われる。 しかし、そうした心理作戦も、心通わせたハズのエンジン王が襲ってくるということに、ザウラーズが困惑しているうちは効果があるが、覚悟を決めて戦うことを決意されては意味がなく、 ましてや、偽者だということがバレてしまった場合には、その姿を利用された怒りから、想像を絶する反撃を受ける危険性をはらんでいるというのも、また事実であろう。
そして、今般の戦闘の中では、図らずもこうした心理作戦の問題点を垣間見ることができた。 今回の拳一は、エンジン大王に対して、明らかに歯車大王や電気大王との戦闘時以上に、闘争心をむき出しにして戦っていたように見受けられるのである。 この辺りの理由を推測すると、「自分の体を機械化されていく拳一の怒りが、エンジン王と同じ姿形ながら、機械神の手先でしかないエンジン大王に向けられた」というのが、少なからずあったのではないだろうか。
例え心理作戦を弄さずとも、結果的に、相手と親しい者の一部でも利用した形になった場合は、相手の怒りを掻き立ててしまうことになり、その結果、強烈な攻撃を一方的に受けてしまうマイナス面は、確かに存在しているし、 もう一つの効果である恐怖は、歯車大王がその姿を、初めて拳一としのぶの前に現した時のことを見れば分かるように、各大王そのものに付随する形でザウラーズに齎されている。 もしかすると、機械神が積極的に心理作戦を挑まなかったのは、それが失敗した時の大きなリスクを避けたためなのかもしれない。
最後に。ザウラーズは、これまでの機械化帝国との戦いの中で、どんな状況に置かれようとも、常に対策を講じ、反撃に転じて、勝利を重ねてきた。 そして「対策を講じ、反撃に転じようとする努力」は、無論、防衛隊も行っており、本来は彼らこそが、地球防衛のプロだということを忘れてはいけない。 成果こそ上げられていなかったものの、防衛隊はこれまでにも、対機械化帝国用の新兵器を、数多く開発していた。 そんな防衛隊が機械化対策の研究と努力の末に物質復元装置を発明したことは、ある意味、当然の結果なのだ。
ザウラーズの度重なるパワーアップや機械王の喪失による機械化帝国の組織力低下。そして、此度の防衛隊による物質復元装置の開発。 機械化帝国にとってここまで好ましくない状況が揃ってしまったのは、地球攻略の長期化にこそ要因がある。 従って機械化帝国は、地球人が対抗策を打ち出してくる前に一気呵成に攻め立て、電光石火の如く勝負を決めてしまわなければならなかったと言える。

次の話へ

前の話へ

サブタイトル一覧へ戻る

「機械化帝国データバンク」トップへ戻る