第48話「出動!サイボーグ拳一」


概要

前回、エンジン大王が破壊した物質復元装置の設計図と実験データは、機械人間となりつつある拳一の頭脳に記憶されていたため、防衛隊は物質復元装置の2号機を完成させることに成功した。 その性能と効果は、エンジン大王に破壊された1号機を遙かに凌ぐものであり、人間の子供一人くらいなら確実に元に戻せるという実験結果を得た武田長官は、機械化帝国に襲われることなく、拳一の体を元に戻すため、 極秘裏に装置を防衛隊基地から春風小学校まで運び出すことを決定。その手段として、防衛隊が引っ越し業者を装いながら、物質復元装置を運搬する方法を選択するのだった。
一方、こうした防衛隊の動きを、月の基地から注視していた機械化帝国の四天王は、再製造された物質復元装置をこのまま放置しておくことによって、自分達が機械神から更なる怒りを買ってしまうことを危惧していた。 そこで四天王は、合議の結果、地球人が物質復元装置を二度と製造することができないよう、徹底的に破壊してしまおうと画策。それを成し遂げるために、四人全員での出撃を決意する。
こうして、物質復元装置を巡った戦いの火ぶたが、再び切られるのだった。

実行

体の機械化が90%進行し、今日中にも完全に機械となってしまう拳一は、学校の屋上で元気なく空を見上げていた。そんな拳一は、屋上へやってきたしのぶに、「体の90%が機械になっても、俺は俺なのか」と問いかける。 この問いに対して、しのぶは、「もし、姿が人間に見えないくらい変わってしまっても、拳一らしさが残っていれば、拳一は拳一だって思う」と答えて拳一を励ますのだった。
それでも拳一の心が晴れることはなかったが、その時、春風小学校に引っ越し業者を装った防衛隊が到着。 そして、武田長官から物質復元装置完成の報せが齎された結果、拳一をはじめとしたザウラーズは一気に活力を取り戻すと、機械化帝国に物質復元装置の在処がバレないように装置をセットする場所として、校長室をセレクトする。
こうして拳一を元に戻すための準備は着々と進んでいたが、しかし物質復元装置を作動させるための準備が完了する前に、機械化帝国の四天王が、春風小学校に来襲。 果たして、四天王は、その校舎内に立ち入ると、抵抗する防衛隊を排除しながら、破壊すべき物質復元装置を捜索するのだった。
四天王が校舎内にいる現状でザウラージェットを発進させれば、春風小学校が基地だということが発覚してしまうため、ゴウザウラーを出すことができないザウラーズ。 この事態を受けて、機械化帝国の四天王とやり合えるのは自分だけだと判断した拳一は、なんとか四天王を春風小学校から引き離して、その間にゴウザウラーを発進させるべく、四人の大王にたった一人で立ち向かっていくのだった。
「四天王の目を引くことくらいはできる」と考えていた拳一だったが、四天王と拳一の戦力差は歴然であり、拳一をその手の中に捕まえた原子大王は、そのまま拳一の体を握りつぶさんとする。 すると次の瞬間、春風小学校の校舎がザウラージェットへと変形し始めた。ザウラーズは春風小学校が基地だとバレることよりも、拳一の命を救う方を優先させ、覚悟を決めて、ザウラーロボを発進させたのだった。 図らずも春風小学校がゴウザウラーの基地だという収穫を得る四天王。一方、こうした四天王の隙を突いて脱出した拳一は、ザウラーフォーメーションで分離したマッハプテラに搭乗する。 そして教授から「ゴウザウラーを発進させたのは、拳一を四天王から救うためのザウラーズ全員の一致した意見」だと聞かされた拳一は、ザウラーロボをキングゴウザウラーへと超熱血合体させるのであった。
これに対して、遂に本気を出すことを決めた四天王は、究極合体を行い、機械大王へと変貌。物質復元装置を破壊するより先にキングゴウザウラーを倒さんとするが、その戦闘開始直前、遂に拳一の機械化の最終段階が始まってしまう。 そのため、すぐに物質復元装置にかからなければ、完全に機械化してしまう拳一は、ここで戦線を離脱、キングゴウザウラーのメインパイロットはしのぶが代行することとなるのだった。
こうして始まったキングゴウザウラーと機械大王の戦闘は、圧倒的な力を見せる機械大王の優位に進み、キングスパルタンは無論、ザウラーキングフィニッシュすら打ち破ってみせた機械大王は、キングゴウザウラーを破壊すべく、 その頭部を握りつぶしにかかる。 が、次の瞬間、機械大王の肩には、頭部以外の体がほぼ機械となった拳一の姿があった。物質復元装置にかからんとしていた拳一は、しのぶの悲鳴を聞いて、我が身の危険を顧みずに、キングゴウザウラーを助けに来ていたのだ。
そこで機械大王は、キングゴウザウラーを手から離すと、拳一を捕まえんとするが、拳一は装甲の隙間から機械大王の体内に入り込むと、その内部からの破壊を始めるのだった。 そして拳一は、ザウラーズに装甲の弱った部分にザウラーキングフィニッシュを決めるように連絡するが、この拳一を、機械大王は遂にガトリングガンで補足し、ダメージを与えることに成功する。
しかし拳一による身体内部からの攻撃で、装甲が弱くなった箇所にザウラーキングフィニッシュを決められた機械大王は大爆発を起こし、四天王は、戦場を敗走する憂き目に遭ってしまう。 結局、拳一は無事だった物質復元装置で元通りの人間の体を取り戻し、ゴウザウラーの基地発見という収穫こそあったものの、機械化帝国はまたも敗北を重ねてしまったのだった。

分析

今回、四天王が出撃した最大の目的は、物質復元装置を完全に破壊してしまうことであり、キングゴウザウラーを倒すことではない。 物質復元装置が春風小学校に運ばれ、その完全破壊を目指した四天王が春風小学校を襲撃したことでザウラーズはザウラーロボを出せなかったし、結果的に発進したのも、四天王を相手にして、危機に陥った拳一を助けるために、 ザウラーズが覚悟を決めた末にとった行動であった。この時点で四天王は、物質復元装置が春風小学校にあることと、その春風小学校がゴウザウラーの基地であることを突き止めたことになる。
ここで四天王は、究極合体を行って機械大王となり、キングゴウザウラーを倒すことにしたのだが、そもそもの出撃の目的を考えるなら究極合体は行わず、物質復元装置の破壊を何よりも優先させるべきであった。 具体的な方法を挙げれば、歯車大王がキングギア、電気大王がハイパーデスボルト、エンジン大王が巨大化エンジン王と同型の戦闘形態にそれぞれ変貌し、残った原子大王が物質復元装置の破壊に向かう采配がベストだっただろう。 歯車、電気、エンジンの三大大王の戦闘形態を相手にしたザウラーズがキングゴウザウラー状態なら数的不利に追い込まれるし、分離状態であれば数的優位はなくなるものの、生身の人間が操縦するザウラーロボなら 四天王の相手ではなかったハズだ。 そして、もし仮に、半機械人間の拳一が原子大王の妨害に現れても、戦闘力では原子大王に敵うわけがなかったのだから、四天王がこのような戦法をとっていれば、物質復元装置の破壊が滞りなく遂行されていた可能性は、極めて高かったと思われる。
そもそも今回の出撃自体、これ以上、機械神の怒りを向けられることのないように、四天王が勝手な判断で行ったものであるが、そこには四天王の「保身」が見て取れる。 この時点で四天王は、歯車大王、電気大王、エンジン大王と、既にザウラーズに三連敗を喫している。こうした事実が四天王を「保身」に走らせたのかもしれないが、ならば尚更、何らかの結果を出さねばならなかった。 機械神は「結果が全て」の結果主義者である。四天王が、機械神や機械化帝国のためではなく、自らの保身のために出撃したのだとしても、 物質復元装置の完全破壊か、キングゴウザウラーの打倒か、この二つのどちらか一つでも成し遂げられていたならば、機械神は四天王の行動を咎めなかっただろうし、また、そうなっていれば、少なくとも次戦の段階で、四天王が最後通告を受けることは無かったハズだ。
更に、今回の四天王は、春風小学校がゴウザウラーの基地だと分かった瞬間に、破壊するターゲットを物質復元装置からキングゴウザウラーに変えているが、目の前の獲物に飛びついた感のある四天王の状況判断には、疑問符が付くところではある。 とは言え、判断力というのは、経験によって鍛えられる側面を持っているため、誕生して日の浅い四天王に適切な判断力を求める方が無理というものだったのかもしれない。 しかしながら、こうした状況判断の甘さが、結果として、四天王の身を滅ぼすことに繋がっていってしまったのである。
なお、四天王は今回、究極合体を行い、機械大王という決戦形態を出しているが、これは言うなれば切り札であるため、出した以上はその戦いに必ず勝たねばならなかった。 事実、今回の戦いで「装甲が弱い部分を攻めれば機械大王に勝てる」ということを学んだザウラーズは、次戦でも機械大王の装甲の隙間にザウラーキングフィニッシュを決めて勝利を収めている。
どんな状況であっても、「チャンスは一度きり」という覚悟を持って、戦いに臨まねばならなかったわけだが、残念ながら四天王に欠けているのはまさしくこの「覚悟」なのだ。 ザウラーズは拳一を助けるためとは言え、春風小学校がゴウザウラーの基地だとバレても構わないという「覚悟」を決めて今回の戦いに臨んでいた。 「覚悟」を持たない四天王が「覚悟」を決めたザウラーズに敗北したのは、自明の理であったと言わざるを得ないだろう。
しかしながら、機械神が存在する限り何度でも甦ることができる四天王が、「覚悟」を持ち難い存在だったことも、また確かである。 不死身の彼らは、決死の「覚悟」を得ようと、死中に活を求めんと思ったとしても、自らの意思で背水の陣に身を置くことができない者達だったのだから。
加えて、生まれながらのエリートである四天王は、戦闘能力それ自体は高くとも、誕生したばかりのために実戦経験というものが全くなかった。 数々の修羅場をくぐってきたザウラーズに戦闘経験の点において劣っていても、それは仕方が無いことであるし、またその差で敗北してしまったとしても、それも当然の帰結なのである。
王の強化型である四天王は、機械神が存在する限りは不死身な上、その戦闘能力自体も高いものを持っている。従って四天王は本来、ゴウザウラーを簡単に排除して然るべき、機械化帝国最強の幹部であったハズだ。 ところが実際には経験値がないために戦闘時の状況判断が甘く、目的を達成するための道筋すら付けられず、不死身であるために一戦必勝の気迫と覚悟に欠ける、戦士としては二流の利己的な集団になってしまった。 経験値と覚悟。これらは、現時点の四天王がどう足掻いてもザウラーズに及ばないものであり、四天王が敗者として見下している王よりも劣っている部分である。 そして、これらを持ち得ない四天王は、いくら基本的な戦闘力自体が勝っていようとも、王を追い越すことなど、絶対にできはしないと言っていい。 今回の戦闘に絡めて考えても、体が機械に変わってしまった拳一と、王と同じ姿態と性質を持っている四天王は、その中身に雲泥の差があった。 単なる外見の見た目や、能力が問題なのではない。人間も機械も関係なく、その個人個人の置かれた環境こそが、何より重要であることが、今回の戦いからは窺えるものである。

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