第49話「ザウラーズ最大の弱点」


概要

いつまでたってもゴウザウラーを抹殺できない四天王に怒り心頭の機械神は、彼らを無能な機械と判断、用無しの存在として、まずは歯車大王から処刑しようとする。 この事態に、他の四天王が「絶対の勝利を約束する完璧な作戦がある」と豪語したため、これを聞いた機械神は、四天王の処刑を一旦保留すると、彼らに最後の機会を与える審判を下すのだった。
一方、拳一が元の人間に戻れたザウラーズは、卒業を間近に控え、他のクラスよりも遅れている卒業制作のトーテムポール造りに、放課後まで春風小学校に居残っていた。 するとその時、防衛隊と武田長官が学校に到着。会話の中で、ザウラーズに物質復元装置が半径20メートルの範囲に亘って復元可能になっていることを伝えた武田長官が、この度来校した趣旨は、 機械化帝国にゴウザウラーの発進基地がバレてしまっていることを、ザウラーズに忠告するためであった。 そして武田長官は、機械化帝国を倒すまで、ゴウザウラーとザウラーズを防衛隊の秘密基地に匿うことを提案するが、ザウラーズや先生達はこの考えに反発する。
このように、それぞれの立場から、様々な意見が出て揉めていると、そこへ機械化帝国の四天王が襲来。自分達の邪魔をしてくる防衛隊を蹴散らしながら、春風小学校をある程度破壊した四天王は、ゴウザウラーを校舎ごと一気に機械化する「絶対の勝利を約束する完璧な作戦」を実行したのだった。
更にこの時、原子大王の機械化光線から拳一を庇う形で、中島先生が機械人間となり、ザウラーズは精神的な支えを失いながら春風小学校から避難していく。 そこで、これを追撃した原子大王だったが、結局、ザウラーズメンバーと、高木、弥生、北条の各先生、そして武田長官には、下水道へと逃げられてしまう。 が、ゴウザウラーを機械化した今、自分達の勝利は揺るぎないと考えた四天王は、これまでの鬱憤晴らしとばかりに、春風町に攻撃を加えていくのだった。

実行

中島先生が機械人間にされ、ゴウザウラーも学校ごと機械化、防衛隊も頼りにならず、機械化帝国と戦う戦力を失い、意気阻喪するザウラーズ。 絶望感が漂い、機械化帝国に降伏する考えを唱えるメンバーも出てくる中、拳一だけは空元気ながらも諦めの気持ちを持とうとはしなかった。 この拳一の姿を見て、高木先生が機械化されてしまった中島先生に成り代わり、ザウラーズを激励。その結果、活力を取り戻したザウラーズは、四天王に対する反撃を期して、改めて一致団結するのだった。
斯くして、ザウラーズの挑む反撃の頭脳戦…即ち教授立案の「ゴウザウラー復元計画」が実行に移されることになる。 教授の計算によれば、ゴウザウラーごと機械化されたブロックは、それほど破壊されておらず、ゴウザウラーは機械の塊になっているのが現状だという。 そして、そんなゴウザウラーを元に戻すため、物質復元装置を数回に分けて使用することと、その物質復元装置は、防衛隊の秘密基地に置いてあるため、武田長官が運んでくることが決定。 更に、ゴウザウラーの復元作業から四天王の目を逸らす必要性から、ゴウザウラーを物質復元装置で元に戻すAチームと、四天王を引き付けて時間を稼ぐBチームにチーム分けがなされ、オトリ役のBチームには、足の速い拳一、ボン、チョビの「悪戯トリオ」が選ばれた。
こうして綿密に練られた「ゴウザウラー復元計画」は、春風町を攻撃していた四天王めがけて、サッカーボールが飛んだ瞬間にスタートを切った。 四天王にサッカーボールをぶつけたのは、オトリ役を任された拳一達であり、彼らの挑発に乗った四天王は、これが敵の作戦とも知らず、拳一達を追いかけ始める。 果たして「鬼ごっこ」の末、建設中のビルの屋上に拳一達を追い詰めた四天王は、とどめの機械化光線を発射しようとする。 これを躱そうとした拳一達がビルから落下したため、彼らが自ら死を選んだと嘲る四天王。しかし拳一達は、四天王が「鬼ごっこ」をしている間に物質復元装置で復活していたゴウザウラーによって助かっていた。 そしてゴウザウラーの両隣にはマグナザウラーとグランザウラーの姿も見える。 拳一達Bチームが四天王と「鬼ごっこ」をしている間に、別働隊のAチームが機械化された中島先生とゴウザウラーを元に戻すことに成功、教授の「ゴウザウラー復元計画」は、見事に完遂されていたのだ。
後がない四天王は、決着を付けるべく、究極合体で機械大王へと変貌。一方のザウラーズも、ザウラーロボをキングゴウザウラーに超熱血合体させたことで、ここに決戦が開始される。
その時を同じくして、機械化された太陽系の惑星がコードで連結されていっていた。四天王の作戦失敗を悟った機械神が、行動を開始していたのである。
そんなことは露とも知らないザウラーズと機械大王は激戦を展開していた。 しかし機械大王の弱点は既にザウラーズに知られていたため、装甲の隙間にザウラーキングフィニッシュを受ける形で、機械大王は爆発してしまう。 それでも不死身の四天王は、戦場から遁走しようとするが、最後のチャンスを活かせなかった四天王は、宇宙から襲来した巨大なコードに捕まると、無能な機械として破壊されるのだった。
こうして、四天王の最期を見届けたザウラーズの目の前に、自ら出陣した機械神の哄笑が響き渡る中、ザウラーズと機械化帝国の最後の戦いが、遂に始まろうとしていた。

分析

絶対の勝利を機械神に約束した四天王が実行した完璧な作戦とは、ゴウザウラーをその発進基地である春風小学校の校舎ごと機械化してしまうことであった。
確かに、出動前のゴウザウラーを校舎ごと機械化するのは、戦わずして勝利することができる方法のひとつであるし、そうすることが、有効な策であったことは間違いない。 だが、ゴウザウラーを機械化しただけではザウラーズの戦力を削いだだけで、彼らが心の底から諦めて降伏してこなければ、真に勝利したとは言えない。つまり、ザウラーズの心をへし折らなければ、本当に勝ったことにはならないのである。
そもそも、ゴウザウラーを周囲の物体ごと機械化しても、全く意味が無いことは、歯車王がキングギアとなり、ゴウザウラーとの最終決戦を行った際に、既に実証済みのハズである。 加えて、物質復元装置が完成し、機械化に対抗する力を持った地球人が、そう簡単に絶望するハズがないのだ。 従って、四天王がザウラーズに完勝しようと思うのなら、ゴウザウラーを機械化するだけではなく、物質復元装置を破壊し、希望を完全に断ち、絶望させて、思考停止から行動不能に追い込まなければならなかった。
あるいは、ザウラーズや大人達が下水道に逃れた際、原子大王がこれを執拗に追撃し、一気に全員を機械化してさえいれば、もっと簡単に、後顧の憂いを断つことができたハズだ。 ゴウザウラーを校舎ごと機械化する作戦をとった時点で、四天王にはゴウザウラーとまともに戦う気など無かったし、当然、その勝ち方に拘りがあったわけでもなかった。 にもかかわらず、四天王が敗北を喫することになったのは、生まれながらのエリートである四天王の精神的な驕りと、そこから来る人間軽視が詰めの甘さに繋がったからに他ならない。 歯車王の攻撃を退け、電気王を倒し、宇宙最強の力を求めるエンジン王の眼鏡にかない、原子王を敗北に追いやったのは、全てザウラーズという「人間」だったことを、四天王は、肝に銘じておく必要があったのである。
一方、絶望的な状況に置かれながらも、絶望しなかったザウラーズは、現状の自分達ができることを考え、その考えを必死で実行し、果てには成功させて逆転に繋げている。 そこにはまたも、教授の頭脳が関わっているが、一方で中島先生の代わりにザウラーズに活力を呼び戻した高木先生の存在も無視できない。
高木先生は教育方針の違いなどから、中島先生とは対立する立場の人間だったが、しかし子供達を想う気持ちは中島先生と何ら変わらないものを持っていた。 また、校長先生や弥生先生、武田長官など、考え方ややり方こそ違えども、その根底には、「ザウラーズの子供達を想う気持ち」が、やはり共通して流れていた。 こうした共通点を持つ大人達とザウラーズの子供達が、性別、年齢、立場の枠を超えて一致団結し、自分達にやれるだけのことを必死にやった結果が、地球人に勝利という形で顕れたと言っていい。
以上のように、今回は四天王、ザウラーズの双方とも、短時間で立案した作戦を実行したわけだが、その結果は見事なまでに真逆のものとなった。 作戦を成功に導くために全力を尽くしたか否か、最善の努力をしたか否かといった作戦活動の内容が、その成否を分けてしまったのである。
また、今回特に痛感させられたのは、四天王の意志薄弱さだ。 誕生して日の浅い四天王が、経験値の面でザウラーズに劣っているのは仕方が無い。 ならばせめて、今やらなければならないことを全力で成し遂げんとする「強い意志」だけは欲しかったところだったのだが、 しかし残念ながら四天王は、機械神から最後通告を受けるに至ってもなお、絶対に今回の作戦を成功させなければならないという必死さが希薄なままであった。
いくらゴウザウラーを機械化しても、ザウラーズをはじめとした人間達が、いつ、どのような反撃をしてくるかも分からないのに、四天王は、ゴウザウラーを機械化したことで安心し、 町を破壊・機械化することによって、自分達の鬱憤を晴らしながら、機械神へのアピールを行っていた節すら見受けられるのだ。 前述したことからも明らかなように、どんな有利な状況にあっても最善の努力を怠ってしまっては、勝利することなどあり得ないのである。 実際、四天王は拳一達の「鬼ごっこ」に、遊び半分で付き合い、その結果、ザウラーロボに復活を果たされてしまうのだが、これも人間達を侮り、全力を尽くさなかったが故の失態だろう。 「窮鼠猫を噛む」という言葉もある。必死の逆襲を試みるザウラーズに、必死さのない四天王が勝てなかったのは、当然だったと言える。
そもそも四天王は、機械神が存在する限りは無限に復活できることから、自分達が機械神に買われていると思い込んでいたが、実際はそうではない。 地球に送り込んだ4人の機械王のうち、3人までが造反の意志を見せたため、四天王の生殺与奪の権を機械神が握ることにより、裏切りを防止する策の一環というのが、四天王の不死身の正体なのだ。 事実、機械神が不要と判断した瞬間に、彼らは処刑の対象になってしまったし、その際に不死身の効力は発動しなかった。四天王は、機械神が地球を機械化するためだけに造った、魂のない王のコピーロボットに過ぎなかったのである。
そんな四天王は、かつてザウラーズに敗れた王達や、不完全な地球人のことを見下していたが、王や地球人には、四天王が遂に持ち得なかった「覚悟」というものが確かにあった。 結果的に敗北したとは言え、王達は最終決戦に臨む際には、「覚悟」を持って戦っていたし、「自分」というものを貫くために、最後に己がすべきことを理解し、それを全力で実行していた。 そしてそこには、四天王のような「保身」など、間違いなく存在してはいなかった。
だからこそザウラーズは、各王との決戦時には、常に苦戦を強いられてもいるわけだが、それでもザウラーズが勝利を重ねられたのは、覚悟を持って全力で向かってくる王を倒すために、ザウラーズも覚悟を持って全力で戦った上、 更に「団結力」や「成長力」といったものがプラスアルファされたからだ。ザウラーズと各王の決戦は展開次第で勝敗がどう転ぶか分からない、紙一重のものばかりであったと言っていい。
そうした決戦の果てに戦場に散っていった王達だが、彼らが皆、自分の意思で、誇りを賭けて戦った、立派で勇敢な指揮官だったことは疑いようのない事実であり、 そのことは、「覚悟」を持たずに戦い、ザウラーズに呆気なく敗れ去った四天王を見た時に、より強く実感することができる。
四天王は、最後通告を受けていた今般の戦いに敗れた後、まだ次があると思って撤退を図り、機械神に処刑されている。 この際、四天王は機械神に対して命乞いをしているが、追い込まれた時にこそ、本当の自分が出るものだ。 故に、「命乞い」をした瞬間、四天王の本質は「我が身可愛さ」だったことが、明確に表出したわけだが、それと同時に、四天王が王よりも脆弱な指揮官であったこともまた、証明されてしまったと言えよう。
第一、地球を機械化してしまうことを最大の目的として生み出された四天王は、機械化帝国という組織に対して、何の貢献もしていない。
歯車王は"太陽系機械化計画"を実行に移した際、海王星・冥王星・天王星・土星・木星・火星の各惑星に加え、月の裏側を機械化して地球攻略のための橋頭堡としたし、四天王と同様、誕生したての電気王も、手付かずの状態だった水星と金星を機械化している。 数多の惑星を機械化した実績を持つエンジン王は、"太陽系機械化計画"の指揮官就任に際して、一瞬で月を完全に機械化したし、6400万年前の世界に送られた原子王は、1993年の現代にエルドランを出現させなかったという点で使命を果たしていた。このように、王達は皆、曲がりなりにも、機械化帝国という組織に対する貢献を、何らかの形で成しているのである。
翻って四天王は、一番手の歯車大王が、拳一の体に機械化光線を浴びせて、徐々に機械人間になっていくきっかけを作ったことが目立つくらいで、これも結果的にそうなった「偶然の産物」という側面がある。 そして、この拳一の機械化が、機械神によるゴウザウラー引き入れ計画を後押ししたことは間違いないが、物質復元装置の開発を促すという、機械化帝国にとっては厄介な事態を引き起こしたことも事実であり、 ある意味では四天王が、機械化帝国の存亡を危うくしてしまったとも言えてしまうのだ。
そんな四天王は、地球の機械化も物質復元装置の破壊も成し遂げてはおらず、かといって、自分の命と引き替えにしてでもゴウザウラーを倒そうとする気概すら持ち合わせてはいない。 この段になると、結果が全ての機械神からすれば、口先だけで、何の成果も上げられていない四天王など、不必要極まりない存在になっていたのではないだろうか。
今回は一応、四天王に「絶対の勝利を約束する完璧な作戦」を実行するための最後の機会を与えてはいるが、機械神自身、半ば四天王のことは見限っていたようで、そのことを証明するかのように、 「絶対の勝利」が綻びを見せた瞬間、機械神は自らキングゴウザウラーと戦うべく行動を開始している。
また、キングゴウザウラーと機械大王の決着がつく前から、機械神が地球へと赴く準備を始めていたことから察するに、作戦が瓦解した場合はその後の展開に関係なく、四天王の処刑は決定されていたものと思われる。 全宇宙に完全なる鋼鉄の秩序を打ち立てることを目的としている機械神にとって、地球ひとつ満足に機械化できない四天王は、まさしく「無能な機械」であり、「使えない道具」以外の何物でもなかったのだから。

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