第50話「いつまでも熱血最強!」


概要

宇宙から巨大なコードと共に地球へとやってきた機械神は、四天王を粛正した後、遂に自ら地球攻略を開始。キングゴウザウラーに搭乗するザウラーズの眼前で、エネルギー体としての正体を見せた。
その外見がエルドランと酷似していたため、驚くザウラーズだったが、教授の解析によって、機械神とエルドランは、似て非なる存在であることが明らかにされる。
そんなザウラーズに対して、機械神は、自分自身を呼び寄せたその力を称えつつも、絶対にザウラーズが自分を倒すことはできないとも断言する。 その理由も、機械となった惑星や宇宙そのものが機械化帝国であり、機械神がその全てであるためだ。 言うなれば、既に機械化が完了した全宇宙を敵に回して、地球人類が勝てるのか、つまりは、量的な意味で宇宙規模の機械神に、地球という一つの惑星の支配生物に過ぎない人間が、敵うハズがないというのである。
こうして、自分の力の強大さを誇示して、ザウラーズの心を揺さぶった機械神は、キングゴウザウラーに対して、攻撃を加えていくのだった。

実行

機械神は巨大なコードでキングゴウザウラーを襲い、そのボディを捕縛すると、更に内部にコードを侵入させて、ザウラーズ一同を拘束し、キングゴウザウラーの機能を完全にジャックすることで、自らの支配下に置くことに成功する。 そして機械神は、自分に逆らった罪で、ザウラーズに死よりも重い罰を与えると言い放つと、己の支配下に落ちたキングゴウザウラーに、春風町を機械化させ始めるのだった。
機械神のコードに拘束され、身動きがとれないザウラーズの目の前で、次々と機械化されていく春風町と町の人々。こうした状況下、ザウラーズの援護に来た防衛隊の武田長官も機械となってしまう。
このような中、機械神は、「全宇宙のためにも、この地球は機械となるべきだ」と発言。その言葉の意味を尋ねるザウラーズに、機械神は、機械化帝国成立に至った経緯を語って聞かせるのだった。
機械神曰く、遙か昔、地球より数千億光年の彼方に、地球人と同じく心を持った生命体が存在し、高度な文明を築いていた。だが、その生命体は、自らの愚かさ故に戦争を起こし、結果、自分達の文明を滅ぼしてしまった。 そこで、荒廃した惑星に残された自分達機械は、同じ過ちを二度と繰り返さないためにはどうすればよいかと思案した果てに、この全宇宙に存在する全生命体を抹殺し、全てを機械化すべきだという結論に至ったというのが、 機械化帝国の成り立ちであった。
この話を聞き、「人間と機械は共存できるハズ」と反論するザウラーズの教授。しかし機械神は「共存などあり得ぬ」の一言で話を終わらせると、キングゴウザウラーによる町の機械化を再開した。
果たして、キングゴウザウラーによる機械化被害を受ける形で、ひろみの母親、しのぶの母親と祖母、拳一の両親も、ザウラーズの子供達の目の前で続々と機械になっていき、 機械神はそのような町並みを眺めながら、「全宇宙は我が鋼鉄の秩序に従うのだ」と哄笑する。 こうした展開の中、キングゴウザウラーのコクピットにいる拳一が、遂に抗うことを諦めかけたその時、既に機械となった一人の少女から声援が届く。 そして、この少女に続いて、拳一の両親が、更には町中の人々が、ザウラーズに声援を送り始める。驚くべきことに、地球人は機械の体となってもなお、人間としての心を失っていなかったのだ。
こうした人々の声援に勇気付けられたザウラーズは、再び活力を取り戻すと、動力を出力フルパワーにしてコードを引きちぎり、キングゴウザウラーを機械神の手から奪還する。 この際、有り余るパワーの反動で、キングゴウザウラーは春風小学校の近傍まで吹き飛ぶが、その直後、機械となった人々の心に呼応する形で、エルドランが出現する。 そしてエルドランは、「心ある生命の力」として、キングゴウザウラーに春風小学校の残る校舎を全て合体させる。その結果、ここに誕生を見た超熱血最強ロボット。 教授命名によるその名もガクエンガーは、エルドランがザウラーズに与えた究極のロボットであった。
こうして新たな力・ガクエンガーで向かってくるザウラーズに巨大コードで応戦した機械神は、一瞬の隙を突いて宇宙へ飛び出すと、機械化帝国にとって危険な存在である人間を、地球もろともこの宇宙から消し去ることを決意。 その手段として、完全に機械化した月を地球に激突させる戦法を選択する。
一方、なんとかしてこの危機を乗り切りたいザウラーズは、しかし機械化された月は完全に機械神にコントロールされている状態のため、月を元に戻しでもしない限り、ガクエンガーのパワーをもってしても、その軌道を変えることはできないというのが実情であった。
そんな中で発せられた、「物質復元装置が、もっと強力だったら」というエリーの言葉に着想を得た教授は、ガクエンガーのエネルギーを使って物質復元装置をパワーアップさせ、機械化された月を元に戻す作戦を立案する。 しかし、作戦立案者の教授をして、この作戦が成功する確率は、かなり低いものであることが予想された。 物質復元装置をどの程度パワーアップできるのかも、物質復元装置が、ガクエンガーの強力なエネルギーに、どこまで耐えられるのかも不明な上、 作戦が失敗してしまった場合、ザウラーズは月と地球の間で押し潰されてしまうかもしれないという、まさしく危険な賭け。
これしか地球を救う方法がない中、人道に反しない科学者として歩を進めてきたためか、教授は、人命を危険に晒すような成功率の低い作戦に自信が持てず、その実行を躊躇っていた。 しかし、周囲のメンバーに支えられ、後押しを受けた教授は、作戦を実行に移すことを決断し、かくて自分達の進む方向性が定まったザウラーズは、ガクエンガーへの物質復元装置接続作業を教授と秀三の二人に任せると、宇宙に飛び出してくるのだった。
一方、当然にしてこれを迎え撃つ機械神は、月からボルトロボを無数に発進。果たして宇宙空間にボルトロボ群とガクエンガーの激戦が展開されるが、しかしその戦闘の中、物質復元装置はガクエンガーに接続され、 復元光線発射のためのエネルギー充填が開始される。 エネルギー充填完了までのカウントダウンを進めながら、ボルトロボ軍団による攻撃を尽く回避して、機械化された月に、真正面から向かってくるガクエンガー。 そんなガクエンガーに対して、機械神は月からの熱線で応戦するが、それでもガクエンガーを仕留めることは叶わず、あまつさえその直後に物質復元装置のエネルギー充填は無事に完了してしまう。
果たして、ここに発射される物質復元装置。その復元光線の光芒が、ボルトロボ軍団を消滅させ、月面の機械神もろとも月を包み込んで元の姿へと戻すと、更に太陽系中に散った物質復元装置の光が、機械化された太陽系の惑星を、全て元通りにするのだった。
こうした後、機械神のコントロールから離れた月を元の軌道に戻し、打倒機械化帝国の任務を完了したと思うザウラーズ。 だが、次の瞬間、巨大な人型機械の姿となった機械神が、ザウラーズの油断を突く形で不意打ちをかけ、ガクエンガーの首部を掴むと、そのボディを持ち上げたのだった。
機械化帝国の不滅を唱える機械神の生存に驚きを隠せないザウラーズ。 そんなザウラーズに対して、心を持つ生物は欠点しか持っていないため、鋼鉄の秩序にとっては不要の存在だと言い切った機械神は、ガクエンガーの首部を攻撃し、その頭部にダメージを与えていく。
しかしガクエンガーはこの状態から脱出。更に拳一の反論と共に真っ向から立ち向かってきたため、機械神はこれを破壊するべく、両手をガトリングガン状に変形させると、確実にその銃撃を命中させていった。
それにも拘らず、ガクエンガーの勢いが衰えることはなく、また潰える様子もなかったため、機械神はとどめの一撃にと胸部から高出力の熱線を発射。 その結果、熱線の命中と同時に大爆発が起こり、それと共にガクエンガーが砕け散ったため、勝利は機械神のものかと思われた。
ところが、機械神がガクエンガーを粉砕した次の瞬間、大爆発の中から出てきたのは、なんと無傷のキングゴウザウラーであった。 機械神が破壊したのは、あくまでも外殻となっていたガクエンガーのボディパーツのみで、核となっていたキングゴウザウラーにダメージを与えることはできていなかったのだ。
驚愕する機械神にザウラーキングフィニッシュが炸裂。機械神は、愚かで不完全な人間に鋼鉄の秩序が打ち砕かれ、自分が敗北した事実を俄には信じ難いまま爆発四散する。 そして、教授の分析によって、間違いなく機械化帝国の反応が完全に消え去ったことを確認するザウラーズ。
斯くして、キングゴウザウラーは春風町へと凱旋帰還し、全宇宙の機械化を画策した機械化帝国はその支配者たる機械神の死と共に壊滅したのだった。

分析

機械神が目指したもの。それは、全宇宙から不完全な生命体を全て抹殺して、あらゆるものを機械化し、完全な機械だけで満たされた、鋼鉄の秩序が保たれた世界を作ることであった。
その理由も、自分を生み出した惑星の知的生命体が、「心」を持っていたが故に戦争を起こし、自らの文明社会を滅ぼしてしまうという愚行を目の当たりにしたためである。
自分が生まれた惑星で起こった悲劇、それと同じ過ちを、二度と繰り返してはならない。そう考えた機械神は機械化帝国を組織して、全宇宙から全生命体を抹殺し、全てを機械化することを実行に移したのだ。
ただ単なる殺戮を目的とした、侵略行為を起こしたのではない。不完全な生命体を完全な機械に置き換えることで、全宇宙から戦争を無くそうという大望を持って、機械神は行動していたのであり、 「全宇宙に鋼鉄の秩序を」とは、読んで字の如く、全宇宙を機械だけにすることで、争いや、それを生み出す変化や進化を生まない、秩序に包まれた世界を作り出すという、機械神の理想を集約した言葉であったわけだ。
こうした機械神の理想に真っ向から反論したのがザウラーズである。 機械神が、自分の思う理想的な世界を作らんとしたために、機械化帝国の侵略行為を受ける形となった地球人のザウラーズは、機械文明の社会に生まれ育ってきたこともあって、機械だけの世界を作ることに異を唱えた。 特に、科学者としても、発明家としても、成長を続けてきた教授は、「人間と機械は共存できるハズ」と反論しているが、それは機械が、人間を幸せにすることを知っているためであろう。
それでは逆に、機械が人間と交わることで幸せになることはできるのだろうか。また、自意識を持った機械が人間と共存することは可能なのだろうか。 これらの疑問には、エンジン王とギルターボが、ひとつの回答を出してくれている。
エンジン王とギルターボは、ザウラーズや中島先生と関わったことで心を理解するに至り、ギルターボは心の力で父と慕うエンジン王を機械神の攻撃から救うことができた。 そしてそのエンジン王は、息子ギルターボの仇討ちのため、キングゴウザウラーと共に機械神に立ち向かい、最終的には、心の力を知らず知らずのうちに使って、地球の生命を守る「守護神」と化し、「自分が神になる」という夢をも実現させている。
なお、エンジン王、ギルターボの両者とも、心の力を使った直後に命を落としているが、二人が心の力を使うまでに至った過程はともかく、「死」という結果自体は、断じて素晴らしいことではない。 しかしその最期が決して不幸なものではなかったというのも、また事実であり、やり方次第で人間と機械が相互理解することができ、機械が人間の影響を受けて幸せになれる可能性を、エンジン王とギルターボは、確かに明示したのである。
このように、エンジン王とギルターボは、機械化帝国の構成員も心を持っていること、機械人と人間が大差ない存在であること、機械人と人間が心の繋がりを持てることなどを証明したわけだが、 しかしそれは、機械神の考え方を否定するだけにとどまらず、機械化帝国の存在意義すらも揺るがしかねない行為であったと言える。 以上のことから、機械神にとってエンジン王とギルターボは、どこまでいっても厄介な「裏切り者」であったことが窺えよう。
そして、そんな「裏切り者」のエンジン王とギルターボが証明したように、心そのものを否定していた機械神も、やはり心を持っていた。
自分に忠実な歯車王に地球攻略を任せていた頃は、冷徹だった機械神が、戦士としての側面が強い電気王のプライドには嗤いを見せ、己への謀反を企む野心家のエンジン王には、憎しみを含んだ眼差しを向けることが多々あった。 更に、全く成果を上げることができない四天王には怒りを露にし、自らキングゴウザウラーとの決戦に出向いた際には禍々しい形相で相対し、最期の瞬間には驚愕の表情を見せた。 また、心を頑として拒み、心を持つ人間を不完全な存在と蔑視するなど、こうした機械神の表情や行動は、彼が明確に心を持っていた証と言えるものであった。
その機械神が敗北した最大の理由は、機械にされた地球人のザウラーズを想う心が、エルドランを顕現させ、これを介してガクエンガーを生み出したからに他ならない。 月面での最終決戦において、機械神はとどめの一撃にと高出力の熱線を発射したが、この攻撃で破壊できたのはガクエンガーのボディパーツのみで、核となっていたキングゴウザウラーは無傷だった。
もし仮に、ガクエンガーの誕生がなければ、機械神の攻撃を受けたキングゴウザウラーが無傷で済むということはなかったし、それより以前に、機械化された月を物質復元装置で元に戻すことすら叶わなかったハズだ。 皮肉なことに「心」を忌み嫌っていた機械神は、地球人の持つ「心の力」の前にその本懐を遂げることなく滅んでしまったのである。
最後に。機械神の考え方が極論であったことは確かではあるが、しかし機械だけの世界を作るというやり方が正しくはなくとも、戦争を無くそうとしたこと自体は間違ってもいなかったハズだ。
進化を生む可能性を潰して、安寧秩序の世の中を作った方が正しかったか、それとも発展進化を促して、不安定ながらも未来を創造していった方が正しかったか。 それは機械化帝国を打ち倒した地球人が、今後、どのような未来を作っていくかにかかっていると言えよう。 心を持つ生命体に失望した機械神のような存在を、地球人が新たに生み出してしまわないとも限らないのだから。

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